第41話 ミスリルの剣の贈与。

 とりあえずDのダンジョンのみを見て回った詩音だが、いかに強い彼女でもこの圧倒的なDのダンジョンの生産拠点としての物量に圧倒される事しきりだった。

 迷宮都市などは、ガチガチの結界と物理的防壁に守られているような物で、さらにどんどん広がっており、一つの大都市へと変貌しつつある。

 そして、それらを支える農業階層、漁業改装も作成され、どんどん大きくなりつつある。農業階層も人間社会からの水耕技術の培養液を魔術的に再現し、様々な作物を作成している。また漁業階層も水源にするためにタダっ広い階層に膨大な水を注ぎ、疑似的な湖にしてみたのだが、そこに自然発生した様々な魚や魚系の怪物なども食べられるものは全て食糧へと変えている。

 大都市の人数を賄えるほどの巨大地下基地と変貌しているDのダンジョンを青銅馬の馬車に乗ってみて回ったが、その巨大な力には流石の詩音も手のひらの汗を隠せなかった。


(というか……やはりこんな強大な存在が表に出てきたら日本内乱になりかねんな……やはり彼女たちは何とかこちらに取り込んでいくべきだろうな……。変な干渉をしてくる政治家や官僚などから守護して、きちんと日本のために働いてもらわねば……。)


 とはいうものの、彼女には日本のために働く気などさらさら存在しない。Dにとっては日本などどうでもいいというのが本音なのだ。やはり、Dとコンタクトを取って色々支援などを引き出せるのは、彼女が相棒と呼ぶ瑞樹しかいない。

 生徒を利用してDの日本のための首輪にするなど、先生としては不本意極まりないが仕方ない、と彼女はその理不尽さを飲み込んでいた。


「ふふん!これが私の力だよ!!これからどんどん大きくなるから見てなさい!!

 まあ、相棒の先生?とやらだし……粗末にしたら相棒怒るし……話ぐらいは聞いてあげてもいいかな。聞くかどうかは別だけど。あと物をもらったらお返し?しなくちゃいけないんだっけ?じゃあドワーフに鍛えてもらったこれを上げちゃおう!!カモン、シュオール!!」


 そう言いながらパチン、と指を鳴らすと同時に、シュオールは詩音の元へと近づいてきて、ドワーフが鍛えた一振りの剣を差し出して詩音に手渡す。

 そして、その剣のあまりの軽さに思わず詩音は驚きに目を見張る。さらに試しに鞘から抜いて刀身を見てみると、その特有の金属の輝きに詩音は思わず驚きに目をむく。


「こ、これは……まさかミスリルの剣!?こ、こんなものが……!!」


 魔術自体は存在するが、ドワーフたちと異なり、この現代社会では強大な神秘を込めた強力な武器を生み出すことはできない。

 強力な武器はダンジョンを潜ってドロップ品として探し出すしかなく、非常に効率は悪い。それをポンポン作り出すだけで冒険者のほとんどはころりと彼女たちの味方になるだろう。こんな文字通りの怪物など例え人類最強である詩音であろうと倒す事は不可能である。


(私でもこんな陣営を倒すことが不可能だとするならば……。やはり政府には懐柔する方向で言ってもらうしかない。さて、説得が大変そうだが……。日本が滅茶苦茶になるよりマシだろう。我慢してもらわないとな)

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