第37話 現在のダンジョンの状況

「うぉおおおお!!食料!!武器!!鉱石採掘!!何でもいいからどんどんやれぇえええ!!今の私は無敵だぞぉおおお!!相棒や姫ちゃんが快適に住める居住環境を整えるんだ!!相棒たちは絶対に私が守護る!!」


 二つのダンジョンを攻略し、より多くの地脈の流れを獲得したDはさらに様々な事業の大規模拡大に乗り出した。快適な居住環境と完璧な防御施設を両立させたダンジョン&迷宮都市を作り上げるために、Dは今までより遥かに得た地脈エネルギーを温存することなく、ガンガン使用することに選択したのだ。

 元巨大アリダンジョンも、ストーンゴーレムを送り込んで巨大アリの残骸を処分して、ダンジョン自体をさらに再利用するために準備を行っている所だ。


「ふふん!相棒見てよ見てよ~!!相棒のお陰で私のダンジョンもめっちゃ大きくなれたよ!二つのダンジョン取り込めたし地脈もその分も取り込めたから私もどんどん大きくなれたよ!!もっともっとどんどん大きくなってこの周辺も統治しちゃうもんね~!!」


 Dはまるで子犬のようにぐるぐる瑞樹の周りを楽しそうに回りながら、ふんすふんすと鼻息を荒くして瑞樹へと懐いていく。もしも尻尾があったら全力でぶんぶんと振り回しているであろう彼女は、(褒めて褒めて!)と目をキラキラさせながら瑞樹を見上げる。まるで懐いてきている犬みたいだなぁ、と彼は苦笑いしながらDの頭を撫でたり、顎の下を撫でてやったりする。

 普通の女性ならば頭を撫でられるのは嫌がったりする事が多いのだが、Dは気にすることなく、髪の毛や顎の下を撫でられてゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす。

 まるで犬のように、ゴロゴロと喉を鳴らしているDは、そこではっ!と我に返って顔を赤くしながら瑞樹と向き合う。


「はっ!!こ、このままだと私の威厳が!!権威が!!……ごほん。とにかく、今までのダンジョン構造について説明するね!!」


 そう言いながらDは幻影魔術の応用で壁にダンジョン構造の幻影を投影しながら解説を行う。まず1階は外部迎撃用階層であり、いざとなったら隠してある無数の魔術砲台が外部に対して展開。空や地上など外部からの攻撃に対して徹底的に砲撃を叩き込むシステムになっている。さらに一階には不審者が入ってきてもアイアンゴーレムを改造した無数の多脚戦車たちが襲い掛かってくる状態だし、その下の十階まではまさに文字通りのデスゾーンになっており、入ってきた者たちを殲滅するための多種多様の殺傷能力の高い罠が仕掛けられており、宝物の一欠片も存在しない。

 これは侵入してきた冒険者たちを排除するシステムであり、同時に甘い宝物など存在しないとはっきりと冒険者に分からせるためである。

 そして、その徹底的に侵入者を排除するキルゾーンである階層を潜り抜けた後に、迷宮都市が存在している。今や迷宮都市は現実世界でいえば、軽く豊島区程度の広さまで広がっている。さらに下の農業階層も同程度には広がっており、さらにどんどん空間拡張によって広げていく予定である。これらも全て瑞樹の活躍によって構築されたも同じであり、D自身からすれば家など帰らず、もうずっと迷宮都市内部で済み続けてほしいというのが本音だ。


「まあ相棒も無茶苦茶頑張ってるんだし、ご褒美は必要だよね~。相棒のおかげで大きくなれたんだしこれでも感謝してるし!!……姫ちゃんには内緒で、おっぱいぐらい揉んでも私はいいんだよ?にひひ~。」


小声で瑞樹に対して耳打ちをして、Dはぐいぐいと柔らかい胸を瑞樹に押し付けてくる。

D的には「雌雄体の雄は雌の胸を好むらしい」的な大まかな知識で瑞樹に対してこうしているようである。

彼女的には別に胸ぐらいいくらでも貸していい、それで相棒が喜ぶのならご褒美にちょうどいいよね!的な考えだったのだが、どんどん姫奈の目つきがつり上がっていくのを見て、ちぇ~とDは瑞樹から離れていった。


「でもね~。人間どももこんなに溢れかえっているなら、数百や数千ぐらいは実験材料にしても文句言われないと思うんだよねぇ~。

 それだけの素体がいるのなら絶対!私なら骨の髄まで『有効活用』してみせるのになぁ~。そこらへんで死ぬなんて命がもったいないよ。私が骨の髄まで有効活用してあげた方が幸せだよ~。せめて数体ぐらいなら……ダメかな相棒♡」


 きゃるるん、と可愛らしく上目使いで極めて物騒な事を言うD。彼女には人間らしい良心や人間らしい感性など存在しない。瑞樹たちが特別であって、他の人間などに欠片も敬意を見せていないのだ。数体ぐらい実験材料にしてもええやろ、の精神である。だがこれがばれたら人間社会と接触した際に多大な悪影響がある。

下手したら「敵」と判断されて殲滅されかねないのだ。もちろんその答えは「ダメです♡」の一言で却下されることになった。

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