第36話 神秘と科学の融合は難しい。

 何だかんだで車代わりの青銅ゴーレム馬車が作り上げられて、瑞樹もほっと一息する。車という概念から逃れられなかった瑞樹に対して、彼らの技術でアレンジして作り上げたのは見事だと言えるだろう。

 これならばどんどん巨大化しつつあるダンジョン内部の『足』としても活用できるし、いいことずくめである。


「それとアイアンゴーレムとリビングアーマーを組み合わせた魔術的パワードスーツじゃが……一応できたが高レベルの冒険者でもない限り着たらその動きに体がついていけずにバラバラになるなこれ……。」


 oh……。と髭を撫でながら困った顔でそう話すドワーフに対して、瑞樹も思わず腕を組んで考えこんでしまう。瑞樹が作ってほしかったのは、「レベルがない素人でも着れるだけで冒険者と同等の戦闘能力を持つパワードスーツ」であって、そんな高レベルな冒険者だけが着れるようなパワードスーツではない。

 おまけに勝手な自意識を持って勝手に動くのではなく、あくまで装備者の動きをフォローしてLVのない未覚醒者でも着れば戦えるようなパワードスーツを目指しているのだ。


「確かになぁ……。お主の言いたいことはよく分かる。ワシらも技術的な問題で失敗とは苛立しい限りじゃわい。着てくれる人間がいればいいかもしれんが、未覚醒者ならば間違いなく五体バラバラになるだろうしなぁ……。」


 その言葉と共にドワーフは深くため息をつく。彼らは瑞樹のいうことに納得して、それに沿って注文通り作ろうとしているが、それでも注文通りの品を作れないのは彼らの職人気質にとっては我慢できないものらしい。

 とはいえ、まだまだ技術的な問題があるため、これを人間に着せて実験させるわけにはいかない。まだまだ要改造だな、と深くため息をついた。

 彼らの理想は「未覚醒者でも着るだけで歴戦の冒険者と同じぐらいの戦闘力を発揮できる強化外骨格」である。これから先の時代は大混乱が予想されるため、一人でも多くの戦力が必要になる。例えば自衛隊や警察などといった人々もすぐさま戦力として登用するためにこういった武装は必ず必要になってくる、と彼らは考えているのである。


「まあ……できないものは仕方ない。こちらは粘り強くいくしかなかろう。それと、神秘の籠った黒色火薬の試作は完了したぞ。後は対怪物用の銀の弾丸も開発・実験中じゃ。これならば、自衛隊?が使うアサルトライフル?何かより遥かに怪物たちに対して効果的にダメージを与えられるはずじゃ。……まあ、ワシらも火縄銃の知識ぐらいならあるが、流石にこの世界のアサルトライフルとやらの知識はないからのぅ……。この辺は外世界の専門家たちと協力して作成しなければ流石にムリじゃ。」


 例えば、現代の弾丸の実包は弾丸(弾頭部)、薬莢、発射薬、銃用雷管からなる。

 このうち、弾丸と発射薬をドワーフの作り出した銀の弾頭と神秘の籠った黒色火薬を発射薬に転用すれば、それだけで今までとケタ違いのダメージを怪物たちに与えることができる。

 ダンジョン内部は、現代の銃火器は使用できないのは判明しているが、ダンジョン外でも怪物が徘徊する環境になったら、これら魔術強化外骨格や神秘黒色火薬なども人々を守るための大きな力になってくれるはず……ではあるが、これは彼らの力だけではどうしようもない。外界の自衛隊や軍需企業などと協力しなければならないのは確かではあるが、今のこの地点では手の出しようがない。とりあえず一旦置いておくしかないかぁ……とうーむと瑞樹は腕を組みながら、中々難しいなぁと考えこんでいた。





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