第28話  ドワーフ族の装備提供

「というか!!貴様らのその皮鎧は何じゃい!!ワシらからみたらまるで紙みたいじゃないか!!貴様らに死なれたらワシらが困るんじゃ!!というわけで鎧を作るがいいな!!」


 瑞樹たちの革鎧を見て怒り狂ったドワーフ族を見て、思わず彼らはアッハイ、と素直に頷く。全く魔力のこもっていない単なる皮で出来た鎧など、彼らからしたらまさしく紙切れ程度の防御力しかないらしい。それを見て職人肌のドワーフ族は到底我慢できなかったらしい。鎧から何まで全部作ってくれるらしい。


「で、でもこちらは金はそんなになくて……。」


「貴様らの紙切れなんていらんわ!!とにかく我慢できないから作らせろ!!おいアダマント鉱石山ほどもってこい!!ワシらの力を見せてやるわい!!」


 それからあれよあれよという間に瞬時に体のサイズを測られ瑞樹たちの鎧が作られていく。革鎧とは比べ物にならないほどの超金属、アダマントで構築された鎧を彼らは鍛冶用の炉を使用し、いともたやすく加工して鎧……ブリガンタインを作り上げたのだ。しかもそれだけではなく、アダマントで構築された小盾……バックラーや武器もアダマント製のナイフ、そして姫奈用のメイスも作られた。


「す、凄い……。こんなガチガチの魔力の籠った鎧なんて……。こんなの下級スライムが触っただけで消滅するクラスじゃない……。」


 通常の冒険者たちは大体LV10程度の敵を何とかするのが精々。それ以上になるとそれだけで上級冒険者扱いされる。LV30になれればトップクラスの冒険者でそれ以上になると完全に人間をやめている怪物扱いになる。ドワーフ族が作ったこれらの武具はそれらの冒険者が身に着けている武具すら遥かに上回る神秘を秘めた彼らからしたら神具ともいえるほどの代物だった。


「で、でもこんなの着て冒険者学校に戻ったら絶対皆から色々言われるでしょ?」


「うるせぇ黙れ!!テメェの身分を隠すのと自分の命どっちが大事なんだ!?そういうのは生き残ってから考えれやボケ!!」


 ぐうの音も出ない長老の正論に対して、姫奈は思わず黙るしかなかった。そうでなくともいざとなったらこれらの鎧をしまい込んで隠して冒険校に戻ればいいだけの話なので、彼らの言うことは正しく異論の挟む余地がなかった。


「というか何じゃいこの紙切れみたいな鎧は。舐めてるのか。こんなのが外界のメインなどでは程度が知れるな……。ワシらが少し頑張って神秘を込めた鎧や武具などを作って売ってみるか……」


 現代の鎧や剣などはほとんど神秘が込められていない既存品、量産品である。職人であるドワーフ族からすれば、そんな武装でダンジョンに挑むなどまさに無謀であるというしかない状況だ。(現代に突然ダンジョンが出現したのを何とかするためだから仕方ないことではあるが)

 そんな数打ち量産品に神秘など籠るはずもない、だが事ドワーフ族ならば別である。

 神々の神具すら作り上げるドワーフ族の品は神話を見れば無数に存在する。

 彼らが「鍛え上げる」「作り上げる」だけでこの世界の武具とは比べ物にならない神秘の込められた武装・鎧へと変貌するのだ。それを外の世界に出すだけで、冒険者は泣いて喜ぶはずである。これも外界における大きなアドバンテージといえる。


(これほどの武具、人類最強の冒険者すら手にしてない物品だ……。これだけでも冒険校や冒険省に持っていくだけでも皆腰を抜かすだろうな……)


 これほどの高い神秘を持った武器や防具ならば、十分外界との交渉にできるはずである。これもしっかり覚えておいて交渉材料に使わないとな……と彼は心の中でつぶやいた。



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