第29話 巨大蟻ダンジョン攻略準備。

「よ~し!!どんどんこの近辺のダンジョン攻略していこう!!この樹海全土のダンジョンを支配下に納めれば富士山の地脈はほぼ手中に収めればもっとドンドンダンジョンを巨大化できるし、何でも生み出すことはできるよ!!ごーごーだよ!!」


 Dはそう言いながら、他のダンジョン攻略を瑞樹に対して促す。

 ここ富士樹海にはさらに複数のダンジョンが存在しており、それらを攻略すればDの支配領域はさらに大きくなるし、やれる事できる事も大きくなる。

 現状富士山の地脈から生み出される地脈エネルギーは複数のダンジョンに分散されている。それらを全て支配下に収めて地脈エネルギーも全て手中に収めれば複数のダンジョンを併合してさらに巨大なダンジョンへと変貌させることもできるはずだ。


「とりあえず、相棒のストーンゴーレムは蜘蛛型アイアンゴーレムに変貌させたけど、問題は人工知能なんだよねぇ~。私も魔術師という訳じゃないし魔術師の専門家も……まあいるにはいるけど、正直扱いがいるからまだ解凍したくないというか……だから人工知能なんて高度な魔術式をくみ上げるのはちょっとねぇ……。だから、この蜘蛛型アイアンゴーレムにダンジョンコアの断片を埋め込もうか。これなら相棒との相性もいいし制御もしやすい……はず。」


「次の目標は……ここ!ここを相棒にお願いしたいんだよ!ここから沸いてくるクソアリどもが歩き回るのが目障りで仕方ないんだよ!!目の前をウロチョロするとうざったくて仕方ない!とはいえ魔術砲台で吹き飛ばすような真似はできないしぃ!!あーもう!!……とはいえ、相棒をアリの巣に突っ込ませるのはどうかと私も思うし……。」


「ふふん、簡単だよDちゃん。人間には「知恵」って凄い武器があるからね!!私にお任せ!!ちょっとした小細工してみよっか!!」


 そして、その後瑞樹と姫奈はホームセンターに出かけ、とある物体を大量に買い込んでくる。それは『ホウ酸』と『重曹』である。さらに業務用スーパーで業務用の砂糖を大量に購入。通常ならば大量の物資をダンジョンに運び込むとどうしても目立ち、そこからダンジョンの場所が探知されかねないが、瑞樹はサマナー用のモンスターを入れることのできる、Dが開発した「指輪」に物品を収納できる事を発見。それを利用して大量の荷物を人目につかずにダンジョン内に運び込むことに成功したのだ。

(大量の物資を購入する時に不審な目で見られるのは仕方ないが)


 ともあれ、ダンジョン内に運び込まれたホウ酸と重曹、そして砂糖を混ぜ合わせる事によって、姫奈は対アリ用の『毒餌』を作り出そうというのである。

 1mほどの巨大なアリたちの通る道に毒餌をばらまき、アリの巣を弱らせた所で突撃する。下手をすれば無数の巨大アリが潜んでいるダンジョンに突撃すれば、そのまま大量のアリによって飽和攻撃でやられかねない。だが、毒餌で弱らせれば攻略するのも簡単になる、という作戦である。


 瑞樹と姫奈は協力して、どんどんホウ酸と砂糖や重曹や砂糖を混ぜた手製の『毒餌』をまるでおにぎりのようにぽんぽんと丸めて大量に作り上げていく。

 巨大アリに普通のアリの倒し方が通用するかは不明だが、無数の巨大アリの中に突っ込んでいくより遥かにマシである。そしてそれら作り上げた大量の毒餌団子を、こっそりと巨大蟻ダンジョン近くの蟻の通り道においておく。

 蟻は道しるべフェロモンによって、従って歩いていくため、その道に大量の餌があれば少しでも知性があれば警戒するのは当然だ。だが、知性のない蟻は警戒せずに砂糖の匂いを嗅ぎづけてどんどんと毒餌に群がっていくのが、隠れていた瑞樹や姫奈たちはドローン型ゴーレムを飛ばして上空から確認された。


(よし、毒餌をもって帰ったのは確認した。こちらも一旦帰還しよう。)


 そんな中、その毒餌を食べた巨大蟻の一匹がふらふらと道しるべフェロモンの道から離れていく。それをドローン型ゴーレムを確認した瑞樹はこっそりとそれを追尾していく。そして、ふらふらとついにその辺の地面に倒れた巨大蟻に対して、瑞樹は近づき、自らの指輪に死にかけた巨大蟻を収めてそのままDのダンジョンへと帰還していった。


「おかえり~。どうだった?おお、どんどん運び込んでたと。よしよし。それじゃそれまで少し待とうか。ついでにまた蟻酸用にアイアンゴーレムの表面にちょっとした防御加工でもしとこうか?まあその辺はドワーフに任せるけどさ……。

 えっ?蟻を生け捕りにしてきた?うーんそれ利用できるかも。ちょっと出してくれる?」


 指輪から出された巨大蟻を見て、姫奈は思わずうぇ~と遠ざかるが、Dは逆にふんふん、と巨大蟻をぺたぺたと触りながら色々解析を行う。

 蟻はお互いの種族識別を行うために独自の手段を行っている。それはお互いの体表ワックスである。この体表ワックスが触覚に触れる事により、違う個体を判断し、それに対して攻撃を仕掛ける。これは体表ワックスの体表炭化水素組成によって同じ巣穴か違う巣穴かを判断し、同じ種族でも違う巣穴の個体なら侵入したら攻撃を仕掛ける判断ができるのだ。


「だからこの蟻と同じ体表ワックスの物体を生成して、相棒やプリちゃんの鎧に塗りたくればかなりの確率で仲間と思い込んでくれる……はず。多分。まあ、鎧がちょっとベタベタするのは勘弁してね~。」


そういいながら、Dは巨大アリから抽出した物体をぺたぺたと瑞樹たちのブリガンタインの表面へと塗り付けていく。せっかくドワーフ族からもらった新品のピカピカの鎧が……と思わなくもないが、これも自分自身の生存のためなら仕方ない、と彼らは大人しく受け入れていった。






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