第27話 ストーンゴーレム改造
「よーし、それじゃこのアイアンゴーレムの改造を行わないといけないよな。表面にアリどもの分泌液は塗ったが、それでも蟻酸対策とかしていかないとなぁ……。」
瑞樹の注文通り、元はゴリラのようなあまりスマートではなかったストーンゴーレムだったが、ドワーフ族の手によって生み出されたアイアンゴーレムにコアを植え込み、今までの戦闘記憶なども移植したが、魔術師がいない以上高度な魔導人工知能などは開発するのは難しい。
しかし、コアを埋め込んだのなら多数の戦闘経験さえ積めば独自の戦闘用人工知能として目覚めてくれるはずである。
蜘蛛状の頭胸部と大きな腹部、そして六対の対になっている足の先には鋭い爪がついており、これで敵を引き裂く協力な武器になっている上にさらに頭部には八つの目のセンサーと鋭い牙を持った口も存在している。
「だが、これだけじゃまだ戦力的に不満だよなぁ……。いろいろ改造してみるか。とりあえず「切り札」をつけていった方がお前らの戦力にもなるだろ?」
それを聞いて、瑞樹もおもわずうんうん!と強く頷く。とっておきの「切り札」だのロボ好きの彼にとってはまさにたまらない物だったのだ。もっと現代社会とドワーフ族の交流があればアイアンゴーレム内部にミサイルなどを組み込むことなどもできるだろうが、外界でダンジョンから生み出された物……特にこの世界に存在しないものは修正力を食らってすぐに消滅していってしまう。
逆に、ダンジョン内部では高度な現代社会の武具……ミサイルやアサルトライフルなどは動かないことが多い。そのため、冒険者たちは原始的な手持ち武器で対抗しているのだ。
「じゃあ、まずは魔導砲台をアイアンゴーレム……多脚戦車の口部に仕込んでおくのはどうだ?魔導砲台ならD様も運用しているし、他のダンジョン内部でも運用できるだろう。」
だが、どこにも例外は存在する。それは魔力を収束して射出する魔導砲台である。
火薬などを使用するのではなく、魔力を使用して撃ち出すという神秘側の技術であるため、こちらはダンジョンでも使用できる魔術である。しかもこれはクロスボウや聖弾程度しか遠距離攻撃がない瑞樹たちにとっては極めて頼りになる切り札になる。
「さらに「切り札」として腹……というか腹部の背甲部の装甲を展開させて魔導砲台を数十体展開させるようにしておくか。敵陣に突っ込ませて敵の真ん中で数十もの魔導砲台を発射させて無数の敵を薙ぎ払う。まさにロマンの切り札って奴だろ?」
にやりとそう笑っていうゴーレムの長老に、思わず瑞樹は親指を立ててガッツポーズを送る。単騎で無数の敵を薙ぎ払う切り札というのはまさにロマンそのものである。
だが、これにも当然デメリットはある。数十もの魔導砲台を発射するのには膨大な魔力が必要になる。発射すればエネルギー不足で機体自体が停止してしまう可能性があるのだ。敵のど真ん中で機体が停止しまっては、生き残りがいた場合ひどい目にあってしまう。
(機体は最悪指輪にしまってどうにでもできるが、大きな戦力を失うことになるしなぁ。まさに諸刃の剣といったところか……)
「それと、他のダンジョン階層で黒い臭い水……「石油」だったかな?それも沸いたので今色々処置でてんやわんやしているらしい。何だかこの黒い水は臭いし爆発するしで厄介だが、こちらにとっては色々使えるからな。
こいつと黒色火薬や松脂などを混ぜ込む事で「ギリシャの火」もどきの手榴弾がダンジョンでも運用可能になるのは大きいぜ。」
まさか石油まで生み出すことができるとは……。日本でも石油は出る場所は存在しているが、到底採算が取れるほどではない。
もしも採算が取れるほどの石油が大量生産できるのならば、石油日本のエネルギー事情が根こそぎひっくり返ってしまう事になる。中東などから輸入している石油が日本で自給自足で賄えるとなれば、日本政府だけではなく各国も黙ってはいないだろう。
しかし、そこまで大きい事態になってしまっては、もはや彼らがどうにかできる問題ではない。
現段階ではあまり役に立たない石油よりも、今は目の前のダンジョン攻略である、と瑞樹は気を引き締めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます