第26話 ドワーフ族長老とのコミュ

「ふむふむ……。上下水道施設不要の水循環システムか……。ウチュウとかいう極限状況まで進出するとはここの人類は凄いな……。

 確かにこの水浄化システムは閉鎖環境である迷宮都市には魅力的だが、そこまで極限状態ではないからな。」


 この閉鎖環境……迷宮都市で地上で最も近いものといえば、それは宇宙ステーションだろう。宇宙ステーションの閉鎖環境は迷宮都市と近いものがあると考えて、瑞樹はスマホでドワーフたちに宇宙ステーションの簡単な構造・仕組みなどを教えていた。

 その中でも彼らが注目したのは、水循環システムである。

 宇宙ステーションでの水循環システムは、尿やシャワーなどの汚れた水を浄化して飲料水などに再利用するというシステムであり、それはこの迷宮都市でも利用できると考えたのだ。

 だが、そこまでなくとも、水を浄化して肥料を作り出すという独自のシステムは作り出せないか、と考えていたのだ。

 トイレの下水の水を一集めにする事によってそこに特殊な水浄化の魔術をかけるシステムや魔導具を作成することによって、排泄物から肥料を作り出し、それを農業作成階層に持っていくシステムを作り出さればいい。


「水はこの迷宮都市内部なら水はいくらでも生み出せるからな……。問題はやっぱり下水処理なんだよな。」


「まあそれはそれとして……。ストーンゴーレムを今度はアイアンゴーレムというか金属素材のゴーレムにしてほしいんだけど……。あとAIというか魔術的人工知能とか搭載したいんだけどできるかな?」


「まあ、ストーンゴーレムではなく、アイアンゴーレムを作ることはできるが、流石に魔術的な人工知能?は分野違いだなぁ。それは他の奴に頼んでくれ。……とはいうものの分かった……が流石に俺たちもこんな蜘蛛型ストーンゴーレムを作るのは初めてだからなぁ……。どうなるかは分からんぞ。」


「後は……こういうゴーレムとか作成できるかな?外見だけでもいいんだけど。」


 そういいながら瑞樹が見せてきたのは、いわゆる車、車両の映像である。この世界の修正力はそもそもこの世界に似ている物に対しては機能しずらい。

 ドローン型ゴーレムが長時間外界で移動できるのもそのためであり、逆にストーンゴーレムはダンジョン内部ならともかく、外界ではすぐに停止してしまう。そのため、こういった車型のアイアンゴーレムならば外界でも修正力が通用しないだろうというのが瑞樹の目的である。


「うーむ、何やら妙ちくりんな車?の形じゃのう……。いや形は確かに同じようにはできるが……。修正力は誤魔化せても内部が魔術機関ならばそもそも動かないのではないか?何?その辺も確かめたい実験だから別にいい?うーむ、分かった。とりあえず蜘蛛型アイアンゴーレムと車両型アイアンゴーレムの製造は引き受けよう。それに……。ドローン型ゴーレムの改造版としての無人航空機型アイアンゴーレムじゃと?まあ、同じように外見だけは作ることはできるがな……。」


 全く仕事が多いわい、とため息をつきながらドワーフ族の長老はため息をついた。

 そうは言いつつも、この世界から与えられる目新しい情報は閉鎖的なドワーフ族にも大いに刺激を与えており、彼らも様々な物品を作るための作業に一心不乱に取り組んでいた。彼らドワーフ族は資源採掘階層の上に鍛冶階層を作って様々な金属という加工作業などを行っていた。鍛冶を行う以上当然ながら炉を必要とし、精錬炉や反射炉などから大量の煙などが出る。そして、地下の閉鎖空間でそれだけの大量の煙と猛烈な熱を発生させるとなると、いかに屈強なドワーフ族でも大変なため、大量の炉を作ると同時に強力な空気浄化呪文や熱を押さえる地下階層の構造を改造したりしているのだ。もっとも、まずは炉を作り出すための耐火煉瓦などを作り出して炉の試作などを行いながら、魔術による空気浄化システムや冷却システムなどの研究などを現在行っているところだ。どんなドワーフ族が忙しく仕事をしている中、瑞樹はドワーフの長老に話を聞くためにやってきたのだ。


「うーむ、それだけではダンジョン防衛用としてはアレじゃからタロス系統の巨人型ゴーレムとかも必要か……?いや、外界ならともかく、ダンジョン内で巨大ゴーレムはなぁ……。巨大ゴーレムじゃと外界では修正力が強そうじゃしなぁ……。」


 だが、それを聞いて瑞樹の瞳はキラキラと思わず輝きだす。巨大ロボなどどこからどう見ても男の子の願望そのものである。実際、現代日本でも完全に人型とは言わないまでも下半身が四つ足の車輪付きで上半身が人型というロボも完成しつつある。そのようなロボットが防衛用として出てくれば威圧的にも脅威だと言える。

(もちろん実戦では戦車や戦闘機などの方が遥かに上、デカブツなため攻撃が戦車などより遥かに当たりやすい、というのは承知の上である。)


「うーん、それならこういうのはどうかな?アイアンゴーレムとリビングアーマーを組み合わせて魔術的パワードスーツとかは制作できないかな?

 人間でも着れて怪物たちに対抗できる魔術パワードスーツがあればめっちゃ便利になると思うし。これから人類も味方にしないといけないと思うし……。」


「とりあえず、アイアンゴーレムとリビングアーマーと組み合わせることはできると思うぞ?まあお主の思う物が完成するかは分らんが……。しかし、それよりも最も大事なのは制御装置ではないか?パワードスーツ?とやらの魔術的な制御装置はワシらの範囲外だからそれこそ魔術師にでも頼む事じゃな。

 ……まあそれと忠告はしておくが……お主は人間じゃから人間を優先するのは分かる。じゃが露骨に肩入れすると他の種族から白い目で見られかねんぞ?特にお主は「あのお方」に直接意見を言えるほどの影響力を持っておるのじゃからな。これから先色々な種族が凍結開放されればなおさらじゃ。それは心に止めておいたほうがいい。」


 なるほど……とそのドワーフの長老に瑞樹は頷いた。今まで人類しかいない状況で、ごく自然に彼は当然に人類中心としての思考になっていた。

 これからは異種族であるドワーフ族や他の種族に対して考えなければならない。そういう指摘に瑞樹は確かに道理だな……と心の中で頷いた。

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