第34話 ダンジョン攻略終了

「はあ……、何とか上手く行ったか。アリたちも機能停止してよかった。」


 女王アリが死亡し、ダンジョン自体が機能停止すると同時に巨大アリたちも次々と床に倒れて機能停止していく。

 女王アリがやられてしまった以上、もはや彼らの存在意義もないし、ダンジョン自体の機能が停止したためエネルギーも遮断されてしまったからなのだろう。

 ともあれ、この逃げ場所のない最下層で多数のアリに追い詰められてしまっては、女王アリを仕留めた瑞樹たちは無数のアリによってバラバラにされてしまうのは間違いない。ともあれ、ナイフで女王アリの胴体部からダンジョンコアを取り出すと、ダンジョン自体の機能も停止してしまうので、これで安全に地上に帰れるだろう、と瑞樹たちは思わずほっとした。


「ふぇえ……もうこんなダンジョンにいるのは嫌だよぅ。さっさと帰ろう!!」


 何とか蟻酸を浴びるのを防いでいた姫奈だったが、彼女からすれば嫌いな蟻と散々戦ってさらに蟻酸まで食らったので踏んだり蹴ったりといった惨状である。

 ダンジョンコアを確保した彼らはさっさとこのダンジョンから脱出してDのダンジョンへと避難していった。

 以前もそうだったが、ダンジョン攻略だけでダンジョン内部の宝物など探索する暇などは彼らには存在しなかった。


「お帰り相棒に姫ちゃん~。……うーん大分派手にやられたみたいだね。とりあえず無事に帰ってきて何より。相棒のLVも姫ちゃんのLVも上がってホクホクだね!!……あ、とりあえず姫ちゃんには《清掃》ッ!!」


 瑞樹たちを出迎えたDは姫奈に《清掃》の魔術をかけて服や革鎧の汚れを綺麗にする。魔術で体が綺麗になるが、それでも姫奈は不満だったのか、お風呂入りたい!シャワーを浴びたい!とダダをこねだす。

 まあ散々嫌な昆虫と戦ってきて体液を巻き散らかされてしまってはこうもなるだろう。


「お風呂?いいよ~!迷宮都市に色々家は作ってるから好きなのを使ってよ!!水はいくらでも出るようになってるし、水を温める魔術具もドワーフ族に作ってもらってるしね!!」


「ふふん、その通りじゃ!迷宮都市は新鮮な水が湧き出す上下水道完備じゃし、トイレの水を浄化する機能も完備じゃ!!住んでいるのは今はドワーフ族の数百人程度じゃがその気になれば数千人……やがては数万人程度は完璧に保護できる都市にする予定じゃ!!妾自慢の都市にしばらく住んでいてもいいのじゃぞ!!」


 そのシュオールの言葉通り、今や迷宮都市は数千人の人々が軽く住めるような都市規模へと大型化しつつある。空間拡張を使ってどんどんダンジョンを大きくすればそれにつられて迷宮都市もさらに広くなり数万人もの人々を保護できる地下都市へと変貌するだろう。

 実際に覗いてみるとドワーフ族やネットの知識でどんどん改造を行っており、薪などで温めるのではなく、ダンジョン内に溢れる魔力を原動力にして、ガスなどがなくても水を温め、お湯が出るようになっており、遥かに快適な住居へと変貌していた。

 喜んだ姫奈はお湯を沸かして風呂に入って体を綺麗にした後、バロメッツの羊毛で作ったバスローブもどきを着て、タオルもどきで体を拭きながら皆の前に姿を現す。


「……オタクくん目がエロい。Hだよ~。」


 顔を赤くしている姫奈に対して、解せぬ、という顔になる瑞樹だが、それにも関わらずついでと言わんばかりにドワーフ族やシュオール、Dを交えた会議は始まる。


「とりあえず『岩塩』を生み出せたのはワシらにとってはありがたいな。これで味のない食事を取らなくてもよくなったわい……。最悪羊の血を調味料にした血のソーセージなどで何とかする案も出ていたからな……。」


 そう言いながら、ドワーフ族の長老は羊肉と血のソーセージのスープとパンを瑞樹と姫奈に差し出す。岩塩を生み出す事によってようやく味のある食事を得たというのは、シュオールたちも全く予想していなかったらしい。

 Dも甘味は美味い!という感覚は覚えていたが、塩味……?という感じだったのでドワーフ族の突っ込みによってようやくそれに気づいたらしい。

 Dの力で岩塩を生み出せたのは幸運といってもいいだろう。ともあれ、羊肉と血のソーセージで作られたスープや小麦で作られたパンは単純な料理ではあるが、瑞樹も姫奈も二人とも夢中になってむさぼり食らう。


「ウールもなぁ……。ワシらが羊肉を食べておるからウールは山ほどあるが、きちんと紡績を行って毛糸を作って布を作るとなるとなぁ……。紡錘機や糸車は作るのは簡単だが、純粋な労働力が必要になるからなぁ。ワシらもそこまで暇ではないから、純粋な人手不足になっておるからなぁ。」


 そこで、ふとタオルもどきで濡れた髪を拭っていた姫奈は気になることがある。それはこのタオルもどきやバスローブもどきに込められている魔力である。

 これは自分たちの皮鎧などより遥かに強い魔力や防御力を秘めているという事である。ダンジョン内の魔力で作り上げられたバロメッツの羊毛。それによって作られた物品は、外界で作られた鎧よりも遥かに防御力があったのだ。

 今は単にまだ道具がないからもどきになっただけであるが、これで衣服などを作成すれば外界ではその辺の鎧よりも遥かに強靭な防具になる。


(これもきちんと加工して外界に売れば十分に売り物になるだろうけど……まあ、それは後回しにするか)


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