第33話 巨大蟻ダンジョン攻略④

「うぉおおおお!!突撃ィイイ!!」


 多脚戦車は瑞樹の制御のまま次々と大型アリを踏み潰しながら、自爆も何とか逃れてついにダンジョンの最下層のダンジョンコアが存在している階層へと何とか瑞樹たちは飛び込んで来た。

 そこはダンジョンコア特有のただっ広い地下空間だったが、以前のように中心部にダンジョンコアが設置されているのは同じであるが、以前と異なる部分があった。

 それはダンジョンコアと大型のアリ……女王アリが融合しているという異形の姿だった。その女王アリに対して他のアリたちが食物などを運んでいったり面倒を見ている。


「これでも食らえッ!!」


 瑞樹は指示を出すと、アイアンゴーレム……多脚戦車の下腹部から装甲が開いてとある物品がせり出される。

 それは陶器性の比較的大型の手榴弾だった。ダンジョン内ではアサルトライフルなどは使用することはできないが、それでも黒色火薬ぐらいは使用できる。

 黒色火薬にナフサ、松脂などを混ぜ込んだ所謂「ギリシャの火」もどきならば、ダンジョンでも十分運用が可能である。下腹部からせり出された手榴弾は前か後ろにしか撃ち出すことができない。今回は後ろの増援を来させないようにするために、多脚戦車は真後ろに手榴弾を射出する。


 それは入口の上部に突き刺さり、爆発を起こしながら松脂によって燃え広がる炎が下へと張り付いて燃え広がっていく。つまり、いわゆる簡単なナパーム弾である。

 アリはともかく、体の前面がライオンであり、野生の本能を持っているミルメコレオは当然燃え広がる火を恐れる。

 ナパーム弾のように燃え盛る場所に流石にアリたちも足を踏み入れるのを恐れているらしい。ダンジョンコアのある階層に入るのを躊躇している中、瑞樹たちはスピードを落とすことなく、その階層へとそのまま突撃していく。だが、当然ダンジョンコアと融合している女王アリの面倒を見ているアリたちは多数存在する。しかも、ここまでくれば最早仲間と思わせる分泌液も通用しない。

 ならばここで「切り札」を切るしかない。


「まずは先手必勝!!口からビーム!!」


 瑞樹が多足戦車に指示を出すと、蜘蛛の口を連想させる上顎が展開され、喉奥から魔導砲台がせり出してその標準を女王アリへと定め、収束された魔力をレーザーのように射出して女王アリに叩きつける。

 その魔力レーザーは女王アリの顔面に突き刺さり、女王アリの片目を吹き飛ばす。

 だが、下手に傷を負わせてしまったため、周囲のアリたちは怒り狂いながら瑞樹たちに向かって襲い掛かってくる。多勢に無勢でこのままだと体を食いちぎられてしまうと危機感を覚えた瑞樹は「切り札」を切ることを判断した。


「姫奈!伏せろ!多足戦車の下に逃げ込め!!」


 その瞬間、多足戦車の甲背の装甲が展開し、その下から数十もの魔導砲台がせり出し、周囲一面のアリの群れに対して狙いをつける。

 そして、瞳を焼かんばかりの数十の魔術レーザーが四方八方無差別に射出され、階層内にいた多数のアリたちを無差別に焼き尽くし、薙ぎ払う。そのレーザーの乱射で吹き飛ばされ、薙ぎ払われ大混乱に陥るアリたち。だが、魔力を使い切った多足戦車は、そのまま力尽きたように、ガシャン!と地面に倒れこむ。

 想定通りとはいえ、最大の戦力を失ってしまった以上、ここで決着をつけなくてはならない。瑞樹はさらに魔狼を召喚すると、魔狼と共に床を蹴ってダンジョンコアと融合している女王アリのもとに駆け付ける。ほかのアリたちも攻撃を仕掛けてくるが、

 その程度アダマントで構築された鎧の前では通用するはずもなく、手にしたアダマントの盾でシールドバッシュで殴り飛ばされてよろめいている間に、瑞樹たちはその間を走りぬける。ほかの攻撃を仕掛けてきたアリたちも魔狼が牽制し、瑞樹が盾で防御していく中何とかアリたちの攻撃を退けて走り抜ける。


「グァルルル……!!ガァアアッ!!」


 魔狼はそのまま牙をむき出しながら女王アリの首元に噛みついていく。だがそれだけでは倒しきれない……噛み切れないが、そこで瑞樹も予備兵器のナイフを取り出して、魔狼の食いついている首に対して、アダマント製のナイフを突き立てる。


「このぉおおお!!」


 アダマント製のナイフの鋭さは、あっさりと女王アリの外皮を切り裂き、深々とめり込んでいき、体液をまき散らす。だがそれに怯む事無く、瑞樹と魔狼は協力してそのまま女王アリの首を何とか切り落とす。首を切り落とされていても床に落ちた首はギギギ……としばらくは動いていたが、やがて力つきてぴくりとも動かなくなる。

 女王アリが死亡したのに連動し、ほかの巨大アリたちも一斉にその動きを止めていった。


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