第32話 巨大蟻ダンジョン攻略③

 ただひたすらダンジョンの奥へと突撃していく多脚戦車と、それを追いかけてくるミルメコレオたちと巨大アリたち。

 だが、当然それだけでなく、ただ前進を行う瑞樹たちを食い止めようとする巨大アリたちも存在するが、それらは高速移動をしているゴーレムを止めることができず、吹き飛ばされたり、踏みつぶされてしまう。当然、巨大アリたちもただでやられている訳ではない。

 アリたちは自らの下腹部をさらに大きく膨らませて多脚戦車を待ち受ける。


「まずい!!オタクくんガードして!!《聖盾》ッ!!」


 次の瞬間、そのアリたちは自爆してその内部にある蟻酸を周囲にまき散らす無差別攻撃を行う。アリの一部には蟻酸の溜まった腹部を『自爆』させる事によって毒液を外敵にまき散らすアリも存在する。恐らく、そのアリの行動をまねたのだろう。

 無差別にばらまかれた毒液……蟻酸はアイアンゴーレムだけでなく、瑞樹や姫奈にも降りかかろうとする……がそれは姫奈の作り上げた《聖盾》や彼女が手にした小型盾、バックラーによって防御される。

 とはいうものの、完全に防ぎきれずに二人のブリガンタインに蟻酸が多少降りかかり、ブリガンタインの表面がジュウウという音がするが、そんな酸ごときではアダマントを溶かすことなど到底できる訳がない。

 同時に多脚戦車の装甲にも降りかかるが、ドワーフ族の特殊コーティングにより装甲が解け落ちるのは防がれている……だが、それも何度も降りかかれば当然コーティングも解け落ちるだろう。


「アリの自爆の体液なんて浴びたくなーい!!嫌ー!!」


「行くしかない!!このまま一気に突っ込むぞ!!」


 その残骸や他のアリたちを踏みつぶしながらさらに先へと進む彼ら。それに対して、アリたちも平気で自分の身を犠牲にした自爆攻撃で蟻酸を次々に振りかけていく。


「《聖盾》《聖盾》《聖盾》ッ!!うわーっ!!精神力が尽きるぅうう!!」


 必死になって姫奈はしがみつきながら聖盾の連発を行いながら、さらに盾でその蟻酸を防いでいく。瑞樹も多脚戦車を操作しながら盾で体を防御して蟻酸を防いでいく。鎧と同じくアダマントで作られた盾は蟻酸ごときでは溶けるはずもない。だが、多脚戦車の装甲の表面が蟻酸で溶けていく感覚は、魔物使役者である瑞樹にダイレクトに伝わってきた。

 多脚戦車は痛覚が存在しないため、痛みなどは存在しないが自分の表面が溶けていく感覚は、瑞樹に幻視ならぬ幻感覚を引き起こして、彼の感覚を乱していく。そして、それは当然彼の操縦にも影響を及ぼす。操縦しながらその機体にしがみつき、蟻酸を防ぐと中々にアクロバットな事をしているのだ。

ともあれ、アイアンゴーレムはそれら自爆するアリや迎撃してくるアリに対して、足を止めずに只管ただ前進を行う。足を止めた瞬間、挟み撃ちにあって物量で押しつぶされているのは目に見えているからだ。


(『切り札』を切るのはここじゃない……。相手の喉元に食いついて発動させて喉を食いちぎらないと意味がない!このまま突っ込む!!)

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