第31話 巨大蟻ダンジョン攻略②
『グァアアアアアア!!』
二体のミルメコレオは息の合ったコンビで多脚戦車へと襲い掛かってきた。だが、ストーンゴーレムからアイアンゴーレム、そして多脚戦車にパワーアップにした……つまり強靭な鋼鉄に変化した装甲にミルメコレオの鋭い牙や爪は通用しない。
金属の装甲に対して、ミルメコレオの牙や爪は弾き返され、火花が飛び散る。
瑞樹の基本戦略としては多脚戦車を前面に押し出して自分の盾兼武器として相手を叩き潰す。これは変わらない戦術である。
さらに以前の戦いでミルメコレオが下半身のアリの腹から蟻酸を吐き出すことがすでに理解している。そのため、ドワーフ族に注文して機体表面に酸を防ぐ特殊なコーティングを行っている。このまま行けば完封できる……はずであるが、世の中はそうは甘くはない。
『ゴァアアア!!』
ミルメコレオが唸り声を上げると、その声に反応して今まで混乱状態にあった巨大アリたちがぴたり、と動きを止めて一斉にこちらに向かって襲い掛かってくる。ミルメコレオは半分アリであり、当然いわゆる同種のアリともある程度の意思疎通を行うことができる。その咆哮に応じて、生き残った巨大アリたちは一斉にこちらに向かってきているのだ。
「うわぁあああ!!オタクくぅううん!!アリが!!アリがこっちに向かってくるぅうう!!」
ただでさえ昆虫が苦手な女性が多数のアリに迫られて冷静でいられるはずもない。姫奈は瑞樹のクロスボウを引っ掴むとハンドルを巻き上げて矢を装填して発射態勢に入る。
「アリならノーカン!!アリならノーカン!!食らえ!!後ついでに《聖弾》ッ!!」
プリーストである彼女はむやみやたらな殺傷は避けるべきだとされているが、この苦手な敵が接近している時にそんな事を言っていられるほど冷静さを保てるほど彼女の精神は成熟していない。クロスボウの矢を放つと同時に神聖魔術の《聖弾》を放ち、それらは先頭のアリへと突き刺さる。だがクロスボウの矢が突き刺さっても聖弾を食らっても痛みを感じないアリは平然とこちらへと接近してくる。
「うわーっ!こっちに来るぅうう!!このままだと挟み撃ちの形になるよ!?どうするのオタクくん!?」
「ええいもうこうするしかない!!多脚戦車に掴まれ!!」
魔狼を護衛として出して迎撃する作戦もあったが、大人しく挟み撃ちされるのを迎撃されるよりも、勢いで突破した方がいいと判断した瑞樹は、多脚戦車の強靭な装甲を破城槌代わり……というか戦車代わりにしてミルメコレオを突破しようという考えである。
必死で蜘蛛型アイアンゴーレムにしがみつく瑞樹と姫奈。そして多脚戦車はその六本脚を素早く動かして凄まじい速さでガシャガシャと足音を立てながら前進し、ミルメコレオを体当たりで吹き飛ばす。
「しっかりと掴まれー!!振り落とされたらどうなるか分からないぞ!!」
「うあああああ!!アリの餌は!!アリの餌は嫌ぁあああ!!」
女性とは思えない叫び声を上げながら、姫奈も瑞樹も必死になって多脚戦車にしがみついて振り落とされないようにするだけで精一杯である。多脚戦車は六本脚でガシャガシャと上手く動かしながら高速でさらに地下階層へと入り込んでいく。さらに前方に存在する巨大アリたちを次々と跳ね飛ばして踏みつぶしながら一心不乱に突き進んでいくが、いかに大混乱に陥っているといってもアリたちもただで黙っているわけではない。
吹き飛ばれたミルメコレオはそれにも屈せず、蜘蛛型アイアンゴーレムにしがみついている瑞樹たちを敵と判断し、必死で後を追いかけてくる。当然その後ろには生き残りの大型アリたちもついてくる。こうなってしまっては、もはや強行突破するしかない、というのが瑞樹の判断である。
「このまま一気に突撃するぞ!!しっかり掴まれ!!」
「うわぁあああ!!もう金輪際アリなんか関わりたくなーい!!」
姫奈の悲鳴と共に、六本脚で高速で前進を行う蜘蛛型アイアンゴーレムはただひたすらにダンジョンの奥へと突撃していった。
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