第18話 ダンジョン攻略終了

「まったくも~。オタクくん後先考えなさすぎだよ。そのせいで私が苦労するじゃん。まあ、バジリスクの猛毒が武器を通って持ち主まで毒に侵すなんてのじゃなくて良かったよ。はい《解毒》。」


 そう言いながら姫奈は床に飛び散ったバジリスクの血に対して解毒をかけて毒を解除していく。さらに瑞樹も協力してストーンゴーレムに水筒の水をかけたり解毒を行う事により、ストーンゴーレムに浴びせられた蟻酸やバジリスクの血を洗い流し、中和していく。バジリスクの血がついたストーンゴーレムの一撃は強力だが、その血が自分たちにかかったらとんでもないことになる諸刃の剣だ。

 制御できないのなら、今のうちから流し落とすしかない。

 姫奈の解毒の神聖魔術で床のバジリスクの血を解毒しながら、彼らはついに最下層へと辿り着く。そこにはダダ広い空間に無数のケーブルが取り付けられている球状の物体が王座にも似た場所に存在していた。

 これこそが「ダンジョンコア」このダンジョンの心臓部にして頭脳体である。

 絶体絶命のダンジョンコアは、自分と同じダンジョンコア因子を持つ瑞樹を警戒しているのか光り輝いているが、それも無駄な事である。瑞樹がそのダンジョンコアを手にして接続解除すると、ダンジョン自身がまるで電源を落とされたように、がくんと機能が停止したのが感じられる。これでもうこのダンジョンは完全に機能停止に陥ったのだ。


「よし、これで任務完了。帰ろうか。」


 ダンジョンコアを手にして自分の指輪へとしまいこむ瑞樹。それを見て、姫奈はイェイッ!とギャルピースをして瑞樹に対して笑顔を向ける。


「了解!オタクくん初めてのダンジョン攻略にしてはやるじゃん!あの私の胸しか見てこないキモ戦士とか悪口と嫌味しか言わない尻軽魔術師より数億倍マシだよ!!これからもよろしくね!!」


 今ままで誰にも認められていなかった瑞樹は、彼女の明るい笑顔と自分自身を受けいられてくれた事によって、思わずどきり、となる。

 そして、姫奈は機能停止したダンジョン内できょろきょろと見渡しながら、声を抑えてさらに瑞樹へと話しかける。ここはDのダンジョンではない他のダンジョンであるため、Dに聞こえないと判断した彼女はここならばDに聞かれない秘密の話ができる、と判断したのだ。


「うーん、今ならちょうどいいか……。あのさぁオタクくん。Dちゃんの事なんだけどやっぱりきちんと冒険者学校の先生に報告した方がいいと思うよ。人類社会とDちゃんが正面衝突したら絶対にろくでもない事になるよ。今のうちから軟着陸させる方向性で考えた方が絶対いいよ~。」


 それに対して、瑞樹は腕を組んでうーん、と目を閉じて考え込む。確かにそれは避けては通れない道である。いずれは必ずDは人類社会にぶつかり合うだろう。それ以前に人間社会との折衝役が必要となるのだ。


「うーん、つまりDと人類社会との折衝役が俺たちになるの……?でも大丈夫かなぁ。それやったらDが「裏切られた!」とか言われて暴走しかねない?あの子めっちゃチョロい性格だけど、その分裏切られたら反動で凄い事になりそうだけど……?」


 それに対して、姫奈も頬に指を当てて小首を傾げて考えながら言葉を返す。


「そこは……まあ、Dちゃんを説得するしかないよね……。Dちゃん私たち以外の人間を本気で虫けら程度にしか思ってないもん。幸い、人類社会……というか文明には興味あるみたいだし、その方面でどうにか……。私たち二人のいうことは聞いてくれるだろうし、その方面でどうにか……。」


「多分だけどね、上層部も世界がやばいのは気づいていると思う。このままだと人類の生存権は大幅に狭まる……というか日本という国体すら保てなくなる可能性は高い。それを必死でどうにかしようとはしてると思うから、そこらへんにDの力をアピールすれば何とか……行けるとは思う。多分。」


ともあれ、彼らもまだ成人していないので政治的な問題はきちんと把握しているわけではない。誰か信用できる大人がいればなぁ……と思わず瑞樹は愚痴を口にしてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る