第17話 ミルメコレオとの戦い
相性的には有利だとは言えど、やはり蛇でありすばしっこいバジリスクは、にょろにょろとストーンゴーレムの攻撃を次々に回避していく。
ストーンゴーレムの踏みつけや拳の一撃だが、それらは全て避けられて石壁や床に命中し、凄まじい音と共に破片が飛び散っていく。
とはいうものの、ストーンゴーレムにはバジリスクお得意の猛毒も石化の視線も通用しない。おまけにバジリスクの柔らかい肉体では、ストーンゴーレムの打撃を食らえば一撃で叩き潰されるだろう。倒されるのは時間の問題だ、と瑞樹たちが思っている中、瑞樹たちの護衛についている魔狼がグルル……。と牙を剥きだして警戒を行う。
その石同士がぶつかり合う轟音に引かれてきたのか、グルル……という唸り声が聞こえてきたと同時に、壁の一部がスライドして、そこから上半身がライオンであり下半身がアリという異形の怪物が瑞樹たちの後方から現れて、ギラギラと餓えた目で瑞樹たちを睨みつける。
「アレは……ミルメコレオ!?まっず……!!これじゃ挟み撃ちになるじゃん!!」
姫奈はそう叫ぶと瑞樹が背負っているクロスボウを受け取ると、巻き上げ機を使って弦を張って矢を装填する。
彼女は司祭であり、血を流すのを嫌うため普段はメイスを使用して相手に攻撃を仕掛けているが、こんな時にそんな事を言っていられる場合でもない。
さらに彼女は小型の盾とメイスを構えて、後方からこちらに迫りくるミルメコレオに対して牙をむき出している魔狼と共に威嚇を開始する。
(ええい何でこんな時に……!ゴーレムに自律機能があればこんな状況でもある程度何とかなるのに……!!)
ゴーレムを操作しながらクロスボウの狙いをつけて弓を射るなんてそんなマルチタスクをそうそうできるはずがない。
それに対して、姫奈は装填したクロスボウを瑞樹の片手に持たせてそのまま腕を持ちながら迫りくるミルメコレオに対して狙いをつける。
ここまでやるのなら、姫奈が直接クロスボウを撃てばいいのではあるが、彼女はプリーストであり血を流す武器などは好まない性質もある。それは矢であっても例外ではないのだろう。
「私が撃つのはちょっと……戒律がアレだから……オタクくんよろしく!!」
きちんと姫奈はミルメコレオに対して狙いをつけてくれて、後は引き金を引くだけなら、今の瑞樹でも行える。引き金を引き、矢が射出されミルメコレオの肩部に突き刺さる。見事に命中したが、ライオン部分に矢が突き刺さったミルメコレオはその痛みで暴れまわり、ぎろり、と睨みながら口から涎をまき散らしながらこちらに向かって疾走してくる。
「このぉ!!《聖弾》ッ!!」
迷宮の床を蹴って疾走しながら迫りくるミルメコレオに対して、姫奈は自らの神聖魔術である『聖弾』を叩きつける。その聖弾を鼻先のまともに叩き込まれ、ミルメコレオは思わず目を閉じてさらに吠える。
そして、それに対して魔狼も牙を剥き出しにしながら迎撃に向かう。知性のないゴーレムと異なり、魔狼は自意識が存在する。魔狼は瑞樹に操られているのではなく、自らの意思でミルメコレオに立ち向かっているのだ。
魔狼はその俊敏性で跳ね回りながら、ミルメコレオの鼻先に噛みついて離そうとしない。
「グォオオオオオ!!」
鼻先に聖弾を食らって、さらに魔狼について噛みつかれたミルメコレオは痛みに急ブレーキをかけながら頭を振り回して魔狼を引きはがそうとするが、魔狼はしっかりと噛みついてそれを離そうとしない。
だが、これだけでは倒しきれるだけの打撃力は出せないだろう。魔狼が引きはがされれば次は無防備な瑞樹たちに襲い掛かってくるだろう。
「ち、ちょっと待ってて!これで……こうだ!!死ねぇ!!」
その間に何とか瑞樹の操作しているストーンゴーレムはバジリスクの頭部を叩き潰すことに成功する。いかなバジリスクでも頭部を叩き潰されれば死ぬしかない。そして、瑞樹の操作するストーンゴーレムは頭部が叩き潰されたバジリスクの胴体を持ち、それを引きずりながら瑞樹自身の所に向かうように指示を出す。
ずるずると猛毒の血を垂れ流しながらこちらに迫ってくるストーンゴーレムを見て姫奈は慌てて廊下の片隅に瑞樹と一緒に体を押し込めて防御魔術を使う。
「わーっ!!《聖盾》!!《解毒》ぅうう!!」
万が一でもバジリスクの血がこちらに飛び散らないように、姫奈は自らの前に神聖魔術で盾を作り出し、同時に解毒魔術をかけていく。
そして、その動きを判断したのか、魔狼も口を話すと、壁を足場にしながらこちらへと駆け寄ってきながら神聖魔術の壁に自分も体を押し込める。そして、手にしたバジリスクの肉体を鞭のようにしながらそれをミルメコレオに叩きつける。
そして、そのバジリスクの猛毒の血がミルメコレオへとたっぷりと降りかかり、ミルメコレオは思わず悲鳴を上げる。さらに、ストーンゴーレムはバジリスクの肉体ごとミルメコレオに対して一撃を叩き込んでいく。その一撃によって、バジリスクの猛毒は血液ごとミルメコレオへと叩き込まれていった。その猛毒を受けてさすがのミルメコレオもどんどん弱まっていった。
「ギォオオオ!!」
ミルメコレオは、アリの下半身から蟻酸を噴出してストーンゴーレムへと浴びせかける。石の表面をジュウウウと溶かすほどの酸ではあるが、ストーンゴーレムを完全に溶かしきるほどの威力はない。そのまま連続で攻撃を叩き込まれていく過程でミルメコレオは力つきていった。
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