第15話 ゴブリンとの戦い
「キ……。キキキ!!」
その時、ゴブリンたちは浮足立っていた。自分たちが住んでいるダンジョンから発せられている危機感に満ちた雰囲気は、このダンジョンから生まれた彼らも感づいていたのだ。
恐らくは何者かが入り込んできてそれがこの元凶である、と彼らは考えておりそれらを排除すべく、彼らはダンジョンの入り口へと迫っていった。
「キィ?」
そして、彼らは通路を塞ぐようにしている巨大な石の塊に気がつく。おかしい、この前までこんなものはなかったはず、と思いながら、人状の大きな岩である事も気づかずにゴブリンたちはそれを左右に分かれて迂回して通り過ぎようとする。
『今だ!!やれ!!』
それと同時に、その岩の顔……目辺りに光が灯り、ぎぎぎと軋む音を立てながら四足歩行のストーンゴーレムが動き出し、ぎろりとゴブリンたちを睨みつける。
慌てたゴブリンは、手持ちの武器で攻撃を仕掛けようとするがそれより早くストーンゴーレムの足がゴブリンをサッカーボールのように蹴り飛ばし、壁に叩きつけて体液を吹き出す肉塊へと変え、もう片方の足でゴブリンを踏みつぶし、文字通りの肉塊へと変える。瑞樹の指示により、暴れまわるストーンゴーレムは次々とゴブリンたちを叩き潰し、吹き飛ばしていく。ゴブリンの武器程度ではストーンゴーレムの表面に傷をつけることすらできず、弾き返されているだけである。
(ともあれ、ストーンゴーレムも無敵じゃない。額にemeth(真理)を削りとられれば動かなくなってしまう……それだけは気を付けないと)
ゴーレムを操りながら瑞樹は援護のために背中に背負ったクロスボウを取ると援護のために射かけようとするが、それに対して姫奈は小声で声をかけてくる。
「ダメだよオタクくん。クロスボウは矢数に制限があるんだからここは温存しておこう。そういうのはいざという時に使わないと。あとしっかりとワンコくんは私たちの護衛につけておいてね。」
プリーストとはいえ、実際に姫奈は冒険者として戦った実戦経験がある。そんな彼女の忠告を聞かないほど彼も頭は固くない。
こういったサマナー系列に対しては、使役獣を無視して術者を直接叩くのがセオリーだと言える。この場合、ストーンゴーレムをすり抜けて瑞樹に対して攻撃を仕掛けてくるのがセオリーだが、事実上いきなり奇襲をかけられたゴブリンたちはそんな事を考える余裕もなく叩き潰されていく。
念のため、瑞樹たちの護衛として魔狼を傍においていたのだが、そこまでたどり着けるはずもなく、およそ十匹のゴブリンたちは、たちまちゴーレムの手にとって殲滅させていった。
「……うわぁ。自分でやったことながら……アレだなぁ。」
ストーンゴーレムが暴れまわった後、ただぐちゃぐちゃになった肉塊の断片と壁一面のゴブリンの体液を見ながら、自分でやった事ながら瑞樹は気分が悪くなる。荷物持ちである彼はこういった場面は何度か見てはいるが、実際に自分自身の手(ゴーレムを通してではあるが)を行った事となれば話は別である。
だが、これも自分自身が行った事である。これから冒険者を行うというのならこういった場面は慣れなければならない。
「オタクくん。これが君がやったことだよ。これから冒険者稼業やっていくんならこれは避けて通れないことだし、乗り越えていかなくちゃいけないことだからね。」
その静かな姫奈の言葉に、瑞樹は静かにこくり、と頷いた。
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