永遠に覚めない町の夢

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 私はある日、まったく知らない場所に迷い込む。

 こんな場所あるわけがない。

 そう思っていたら、ここは夢の中らしい。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 目覚めると私の家とは違う場所にいた。

 いや、目覚めるという表現はまちがっている。

 私が私として意識をもった瞬間にいた場所は家ではなく、学校だっった。

 大切な家族もそこにはいない。

 ただ、良く知っている場所だった。

 そこは毎日通っている学校だ。

 いくつもの机に、無数の階段、広い敷地には同じ形の教室が行儀よく並んでいる。

 よくよく考えると奇妙な空間だ。

 同じくらいの年齢の子供を集めて同じように生活させようというのだから。

 一人一人の個性を大切になんていいながら、個性を許さない環境で生活させる。

 凄き奇妙な行動だ。


 私はなぜだか自分がこの学校で暮らしていた。

 保健室のベッドで眠り、家庭科室で当然のように朝ごはんをつくり、さすがに外のプールでシャワーを浴びるのは寒いので宿直室のシャワーを浴びた。

 学校は暮らすために建てられた建物じゃないのに、意外と生活できるのだ。

 でも、なんで私は学校で生活しているのだろうか。

 分からない。


 学校なんてきらいなのに。


 無数の足音。

 色んな人間の声。

 様々なにおい。

 それだけじゃない、この学校という場所には色んな人間の思いが混ざり合て苦しくなる。


 私は学校に住んでいる。

 当然のようにそこで生活している。


 なんで学校で生活しているのだろう。

 別に家を追い出されたわけでも、世界が滅亡して残ったのがこの学校という施設だったとかそんな明確な理由はない。


 ただ、なぜだかここを出て行ってはいけない。

 出ていったら大切な何かを失うことになるのだろう。


「ここを出ていこうと思う」


 夢の中で一緒に暮らしている誰かに私は言った。


「そう、もう終わりにしてもいいの?」


 私は彼女の寂し気な表情に後ろ髪惹かれながら頷いた。


「行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 そんな会話を交わしたあと私は学校を去った。


 そして、再び目が覚めるとそこは保健室のベッドの中だった。

 私はずっと同じ夢を繰り返しているのか。

 それともここは誰かの夢のなかなのか、分からない。


 けれど、きっと今日も私は決断を求められるだろう。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る