佐々木を論破
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残念な心霊現象考察研究会の占い師。
もとい、女子の制服をみにまとっているが男装の麗人のように美しい二組の佐々木さんは、私の第一志望の大学入試の問題の予言はしてくれなかった。
まあ、インチキなのだから当然できないのだろう。
もし、予言してくれて当たっていれば私にとってはラッキーだし、その予言が正しかったことが証明されるころには私たちは晴れて学校を卒業する身。
万が一、部活にいれられても活動する暇なんてないだろう。
そう高を括っていたのだが、現実とはそんなに甘くない。
「そんなこと言うなら、私の予言が偽物だということを証明してください」
「無理ですね」
私はきっぱり言った。
こんな挑発にのって、結果的に心霊現象考察研究会の活動をさせる気だろう。そして、なし崩してきに、私の真宵と仲良くなろうとしている魂胆がみえみえである。
小学生女子並みに分かりやすい。
「じゃあ、私の予言が本物だと認めるんですね?」
「あのですね。そんな挑発しても無駄ですよ。そういう挑発というのは周りに人がいてみられているときとかの方が効果的なんです。今ここには、私とあなた。そして真宵しかいません。私はわざわざ挑発にのる必要なんてないんです。恰好をつける相手や周囲への面目なんてないのだから、少しでも楽なほうがいいに決まってます。変な人やモノにはかかわらないのが一番」
私がそう言い放つと、麗人佐々木は白目になり、その背景に花びらが散っていくのが見える気がした。
昔の少女まんがのショックを受けたイケメン風といったらいいだろうか。ミシェルとかミハエルとかいって、なんか男のくせに胸元が開きすぎたシャツとかフリルのブラウスを着ていそうな雰囲気。
まあ、実際目の前にいる佐々木は清く正しく、校則通りの制服を着ているだけなのだが。
「そんないいかた可哀想だよ。佐々木さんがせっかく仲良くしたいと思ってくれたのに……」
真宵はそんな優等生なことを言う。
でも、自分の立場を考えてほしい。佐々木の指摘通り、今までだった真宵は奇妙な現象に巻き込まれているのだ。
そして、そのおかげで私は真宵の親友の座にありつけているわけだが、小学生のころ転校してきたときあの町に意地悪さえされなければ、真宵はいまでもクラスの一軍で私となんか仲良くする必要なんてなかったのに。
そして、心霊現象考察研究会なんて怪しげな名前の部活に自称「予言」をする麗人佐々木。
どう考えてもトラブルの気配しかしない。
私は真宵のことを気に入っている。というか真宵に執着している。子供の頃は、美しい少女をすぐそばで自分の思う通りのお友達ごっこに付き合わせられるというのを気に入っていたが、今では真宵なしでは生きられない。
真宵を危険な目に合わせるわけにはいかないのだ。
「だめ」
「えー、なんで。私が別に友達作っちゃだめってこと?」
真宵は唇を尖らせて拗ねて見せる。
そんな顔で「じゃあもう友達やめちゃおっかな」なんて言われたら、私はたちなおることができない。
「友達作っちゃだめとは言ってない。だけど、友達は選ばなきゃ……」
「なに? マルフォイ?」
人がやっとのことで、言ったことを真宵は茶化す。
きっと、私のこの重い気持ちになんて気づいていないのだろう。
苛立ちながらも安心して私は真宵の頭に手をポンと置いて、前髪をくしゃくしゃにしながら撫でた。
「きゃー、やめてよ」
嫌がりながらも、子猫のようにじゃれつく真宵はいつも通り可愛らしかった。
「いい? とにかく、危ないことには関わらないこと」
「佐々木さんは危ない人?」
私は改めて、佐々木さんを見る。
整った顔立ちにすらりと長い手足。
ダサい制服を正しく着ていることにより、本来彼女のもって生まれた美しさがより際立つ。
やっぱり綺麗な人だ。
私は彼女をみてほほ笑んだ。そして、
「うん、危ない人」
ときっぱりと答えた。
危ない人に決まっている。
自分からオカルト研究会みたいなのに入る変り者なんて。
何かに巻き込まれる体質じゃなけりゃ、退屈して何かを起こすに決まっている。
人がやらないような部活にわざわざ所属するというのはそういう自己プロデュースなのだから。
いまどき、いくらでも普通を知り、普通に寄せることが可能なのに。
わざわざ自分を漫画でしか存在しないような変り者ポジションの人間とレッテル貼りをする人間が、のほほんと高校三年間を過ごすわけがない。
私がそのことを指摘すると、
「確かにねえ」
と真宵は納得してくれた。
「ちょっと、人の目の前でそんなひどいこと言わないでください」
佐々木さんが、間に入ってくるけど、
「陰口よりマシですよね」
真宵はあっさり、そう言い捨てた。
さあ、これで帰れる。
今まで通りの平和な日常が取り戻せる。
大学の入試問題の予言なんかに頼らずに大人しく学生の本分である勉学に励もうじゃないか。
そして、翌日事件が起きた。
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