file 3 我が身常に人間無骨と共に

天正十二年。織田信長の志を継いだ両者が小牧にて大戦を繰り広げていた。


一方は羽柴秀吉。信長の仇である明智光秀を討ち、織田家筆頭柴田勝家をも打ち倒した,今最も天下人に近い人物である。


そしてもう一方は徳川家康。信長の同盟者で中部に一大勢力権を有していた。


そんな中織田旧臣の森長可は舅、池田恒興に従い,豊臣方として,この戦に参加していた。



仰々しい雰囲気の中,総大将の秀吉は告げる


「それでは三河中入り作戦についての軍議を始める。我が甥、羽柴秀次を大将に、森武蔵(長可)、池田勝三郎(恒興)、堀久太郎(秀政)。徳川の化けの皮を剥がしてやれ!」



その一言のもと,夜半小牧から一軍が離脱した。それが家康の罠とは知らずに。


「おやっさん!家康中入りの際は手綱を頼む!俺はやり始めると周り見えなくなるからの」

「あったりまえだわ!お主を放置してると碌なことにゃなりゃせん」

「ん?火縄の匂い?おやっさん!敵だ!」


その長可の声が出る前に銃声が鳴り響く。


その元にいた武将は兜に剣の前立てを立てている。徳川四天王の1人、榊原康政だった。


「チッ…狸が。見抜かれておったか。全軍展開せよ!」

「長可隊!我が旗の元に集まれ!」


軍の展開は早くつながるも,援軍は来ない。


そうなってしまったのには訳があった。


総大将、羽柴秀次はもっぱらの文化人。銃声と共に戦場から逃げていた。また、堀秀政も、戦況が不利だと見るや否や,この場を放置し,逃亡していたのだ。


「恒興様、討ち死に!」

「マージーか。辛いわ。これ。父上や兄貴、弟と同じ道を辿るとはな。ただ、このクビはタダでは取らせないぞ」


パァン


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