file2 伏見の業火
伏見城。関白・秀吉が築いた一大拠点。
そんな城も今,落城を迎えようとしていた。
城を守るのは鳥居元忠。
徳川16神将にも選ばれた徳川屈指の名将である。
「クソッ!どうしてこの城は落ちないんだ!」
そう言うのは石田三成。徳川家康との決戦が間近に迫る今,一刻も早く伏見を落とさなければならなかったのだ。
「かくなる上は…」
慶長五年8月10日。徳川麾下の甲賀衆の寝返り。それと共に西軍諸将の突撃により,ついに十日も四万の大軍を相手に僅か1,800の兵で大太刀周りを見せた元忠にも最後の時が訪れようとしていた。
「松平又八(家忠)様二の丸にて討ち死に!」
「安藤次右衛門(定次)様,宇喜多勢の射撃により討ち死になさりました!」
「内藤金一郎(家長)様、お討ち死に!」
「そうか……」
徳川の将が次々と打ち取られ,ついに敵軍の魔の手は本丸に迫っていた。
「鳥居隊、出るぞ」
「あと少しで本丸だ!皆の者ふんば」
「若造が,家康様に任された役目,そうそう終わるわけにはいかぬのよ」
登ってきた敵兵を弓矢にて迎え撃つ。
足の悪い元忠にしては近接は不得意であり,部下の後方からの射撃を常に行なっていた。しかし
「ふんぬ!」
命を捨てた現場。死を覚悟したからだろうか,火事場の馬鹿力がでた。元忠は槍を手に相手に突撃する。もちろん家臣たちは付き従い,鳥居の紋を旗に擦った一軍は一丸となり,相手へと向かう。数分もすると辺り一面血の池ができ,お互いの姿さえ視認できなくなっていた。
「ふぅ,ふぅ、はぁ、」
「場にはすでに誰もおらずか。見事な戦ぶりであった。鳥居左衛門尉殿。そなたに敬意を表そう」
「そなたは?」
「鈴木孫三郎重友」
「かの雑賀孫一に討ち取られるとは名誉なことやな。だが、腹わかるまでの少しの間,そこで待ってくれないか?」
「もちろんだ」
家康様,あとは頼みますぞ
この日,伏見城は落城した。
鳥居麾下1800の兵全員が死亡したとも伝わる。
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