夢か現か

 ひとつ、面白い話をしよう。


 ある夜、僕はいつものように眠りについた。程なくして目を覚ました。病室のベッドで眠っていたはずなのに、なぜか実家のベッドの上にいた。風呂上がりの母に、


 「帰ってきたん?」


と声をかけられ、ここが現実だと知る。僕は好きなバンドの曲を聴いたり、飼い猫をなでたりと久しぶりの実家暮らしを満喫した。


 しばらく実家で過ごしていると、病室のベッドの上で目を覚ます。そうか、あれは夢だったのか。重い身体をなんとか起こし、部屋を見回す。すると、何かがおかしいということに気づく。病室のドアは二つもなかったし、物干し台には男物の洋服類が干されていた。

 これは夢だ。いや、現実だ。ナースコールを押すと、僕ではない誰かの名前が呼ばれた。


 そこでまた目を覚ます。また病室のベッドの上にいた。身体を起こし、辺りを見回す。今度は僕のよく知るいつもの病室だった。


 ……果たして、これは現実なのだろうか。

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