1077 眞子の汎用性

 ジムさんがカスタムした楽器は個人カスタム故に、他人が弾くと違和感を感じる。

それを踏まえた上で、今度は眞子がエリアスさんのベースでチャレンジしてみたのだが……


***


「うん?……鞍馬ちゃん。今、そのベースを平然と弾かなかったかい?」

「あぁ、いや、別に平然に弾いてたって訳じゃないですけど。弾き易いベースではありましたね」

「なっ!!先生の製作された他人仕様のカスタム・ベースが弾き易いだって?眞子、それは、本気で言ってるのか?」

「へっ?あぁ、いや、だから、本気って言いますか。あの、私ですね。元々、人の真似が得意なんですよ。だから、あんまり違和感を感じなかったんじゃないですかね?……解んないですけど」


あぁでも。

もし、これが正解なら。

崇秀の普段から言ってる事は、ヤッパリ、正しい事が証明された事になる。


人を感性を己の中に取り込み。

それによって、多種多様な対応が出来る様になるんだから、ジムさんの言ってた理屈的にも合ってるって話だもんね。


けど、誰に言われる事なく、そんな事を自分で思い付くなんて……ヤッパ崇秀は凄いね♪



「鞍馬。……幾ら真似が得意って言っても、ある程度の限界はあるんじゃないの?」

「あぁ、勿論有りますよ。でもですね。さっきも言いましたけど。私、元々人の弾き方の真似バッカリしてベースの弾き方を憶えたもんですから。私の演奏って、実は、人の癖だらけなんですよ。だから多分、今回は、そこが功を奏したって処じゃないですかね?……解んないですけど」

「他人の癖の塊って……信じられない」


いや、そう言われましても……


現実そうなんで……



「しかしまぁ驚いたなぁ。こんな東洋のちっぽけな島国に、2人も、オイラの楽器を使いこなす人間が居るとはなぁ。これは、少々驚愕の事実だ」

「あぁ、いやいや、使いこなせてなんかないですよ。個人的にエリアスさんの演奏が好きだから、真似してただけですって」

「そうかい、そうかい。……あぁ、因みにだが鞍馬ちゃん。ホランドがベースを弾いたら、こんな感じって言うのは出来るかい?」

「ホランドさんがベースですか?……あぁ、じゃあ、例えばですけど。こんな感じでどうですか?」


ホランドさんと言えば、一番最初に思い付くのは『優しい音』だよね。


だったら単純に、バラード系を弾けば楽なんだけど、それじゃあ、あまりにも安易過ぎる。

なんてったって、安易にバラードを選択したら、ホランドさんの強烈な汎用性の高さを表せないからね。

なら、敢えて此処は、真逆のPUNKっぽく弾いてみよっかな。


その方が面白そうだし。


でも、曲は弾き慣れた『Serious stress』


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪-----♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪……



大体こんな感じかな?


***



 ……って、曲を弾き終えたんだけど。


なんで、みんな黙ってるの?

そんなに、私の演奏は的を外してましたか?



「そっ……そんな馬鹿な」

「えっ?えっ?なにが馬鹿なんですか?あの、ひょっとして、イメージと違い過ぎて気分を害しちゃいましたか?」

「いや、そうじゃないんだよ、鞍馬ちゃん。ホランドの奴は、イメージ通り過ぎて、本人が気持ち悪く思ってるんじゃないか?」

「えっ?気持ち悪いって……でもでも、ジムさんが、ホランドさん風に弾けって言ったんじゃないですか。酷いですよ」

「そうなんだけどなぁ……」


なんで、そんなに顔を顰めるんですか?


そんな理不尽な話ないですよ。

ホランドさん風に弾けって言うから、必至で弾いたのに、気持ち悪がられるって……それは、あんまりなんじゃないですか?



「こりゃあ。思った以上に、手の付けられない化物になってるね」

「えっ?化物?……あの、私、化物じゃないですよ。そんな言い方って、酷いですよ」

「酷いのはドッチよ。……それ、私のベースのまま弾いてるんだけど」

「あっ……」


あり?


あぁ……そう言えば、なんとな~~~く弾き易かったから、そのまま弾いちゃったね。

それに、曲調をPUNKにしたから、エリアスさんの感性が混じちゃってたのかなぁ?


でも……それはそれとしても、化け物は、あまりにも酷くないですか?



……ってか、奈緒ネェ、なんで、コッチをジィ~~~と見てるの?



「うん……眞子。此処で、話をぶり返す様で悪いんだけど。ヤッパリ、私達と一緒にバンドやろうよ。私は、今ので確信した。眞子は、ウチのバンドに、絶対入るべきだよ」

「えっ?えっ?なんですか急に?そっ、それに、そう言われましても……」

「眞子。私からも正式にお願いしよう。私達と一緒にやって貰えないか」

「えっ?えぇっと……」

「うんうん。一緒にやろうよ。鞍馬のベースと、私のベースで、バンドの音を、もっと深めようよ。絶対、楽しいからさぁ。私達とやろ」

「えぇっと……困りましたね」


これは困ったなぁ。


こうやって誘って貰えるのは、非常に嬉しいんだけど。

私自身の腕前が【奈緒グリ】の演奏レベルに達してないし、他のメンバーの人の意見も聞かないと……


それにですね。

こんな事ぐらいで、重要なバンドのメンバーを決めちゃダメだと思うんですよ。



「困る?……あぁそっか、そっか。眞子は、自分を高く売ろうって寸法だね」

「ちょっと、違いますよ。私、そんな事は考えてないです」

「じゃあ、なにが、そんなに気に入らないのよ」

「気に入らないなんて滅相もない。でも、さっきも言いましたけど。私も自分でバンドを作ってみたいです。奈緒ネェと、崇秀をギャフンって言わせたいですから」

「そっか。ヤッパ、ダメかぁ。じゃあ、眞子、最終確認するけど。それ……本気なんだよね?」


……本気です。



「ごめんなさい。……生意気言ってますけど。私なりに本気です」

「……そっか。じゃあ、もぉなにも言わないし、誘わない」

「待て2人共。【GREED-LUMP】は、元々眞子が結成したものだ。その話自体に問題は無い筈だぞ」

「あぁ……そうかも知れませんね。でも、そうじゃないんです」

「何故だ?」

「いや、仮にですね。作ったのが私だとしても、もぉ【GREED-LUMP】は、今のメンバーだからこそ【GREED-LUMP】なんですよ。だから、今の私に入る隙なんてありません」

「そんな事は無い筈だ。こうやって、みんな、君の参入を熱望してるんだからな」


皆さんが、そこまで言ってくれてるなら、ひょっとしたら、そうなのかも知れませんね。


でも、私は、もぉ出来上がった誰かの力で勝つのは嫌なんです。

それになにより【GREED-LUMP】は目標にすべき存在であって、手を取って貰う存在ではありません。


だから、なんと言われても、私の【GREED-LUMP】の参入はありません。



「気持ちは嬉しいですけど……ダメです。皆さんは、私と真正面から戦って下さい」

「……眞子」

「そうだね。翌々考えたら、私と、鞍馬は、お互いをライバル宣言をした仲。違うバンドで同じステージに立つ事はあっても、共闘なんて有り得ないよね。……此処は1つ。参入を断った事を、後悔させてあげるのが筋ってもんよね」

「あぁ、はい!!でも、後悔はしない様に頑張ります!!だから、私が駆け上がるまでズッと頂点に君臨し続けて下さいね」

「うん。そこで待っててあげるから、全力で駆け上がっておいで」

「あぁ、はい!!宜しくお願いします!!」


エリアスさんは解ってくれた。


お互いを高めあうなら、味方であるより、敵である方が遥かに相手を意識をする。

それは、今の私には、とても重要な事。


だから、エリアスさんの、この心遣いには感謝の念が尽きない。



「まぁ、そう言う訳だから、奈緒。私は『鞍馬争奪戦』は降りた。……いや、企画自体を潰す方向に持って行きたいんだけど……そぉ言うの、どぉ?」

「ふふっ、それ、良いね。眞子には、世間の厳しさを身に沁みさせるのには、今回、良い機会だと思うしね。『眞子を得れる権利』を得た上で、参入を断ってやる」


そうですよ。


それで良いんです。



「少し待て2人共!!そんな事をして、なんの意味がある!!……オマエ達2人が、一番、眞子の参入を望んでいたんじゃないのか?」


あっ……ホランドさん。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


眞子の汎用性を目の当たりにした奈緒さんが、再び勧誘をしたみたいなのですが。

その眞子の答えは変わらずに「NO」


矢張り、眞子個人として手は、奈緒グリを越える様なバンドを作りたいみたいです。


そしてその「NO」っと言う答えに対して、奈緒さんとエリアスさんは納得したようなのですが。

どうやらホランドさんは納得がいかない様子。


なら、この意見の分裂は何処へ向かって行くのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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