1075 骸カスタムの楽器
今や全米№1の人気と名高い奈緒グリからのオファーを断った眞子。
その理由は『完成したメジャーバンドのは入りたくない』っと言うのと『自身の実力が奈緒グリに見合う程のモノじゃない』と言う理由だったのだが……本当にそうなのか?
***
「それはそうと眞子。先生から新しいベースを買ったそうだが、それは、どんなベースを買ったんだ?」
「へぇ~~~っ、鞍馬も、骸でベースを新調したんだ」
「あぁっと、実は、そうなんですよね」
……っとまぁこんな感じで、例の『スタファちゃん』の話が始まったんだけど。
エリアスさんのベースも『骸カスタム』なんだね……
まぁ恐らくは、ホランドさんがエリアスさんを、ジムさんに紹介して手に入れたんだろうけど、お揃いですね♪
「どんな奴?」
「あぁ、見ますか、見ますか?凄く良い感じなんですよ」
ハイハイ、良いですよ。
崇秀に買って貰った『スタファちゃん』を一杯自慢したいから、急いで持って来て取り出す。
「あぁ見せて、見せて」
「どうぞ、どうぞ」
でも、大事に扱って下さいね。
崇秀から貰った大切な物ですからね。
絶対に粗悪に扱っちゃダメですよ。
まぁ……同じベーシストのエリアスさんが、そんな事する訳ないんだけどね。
「あぁ、シリアルナンバーから言って『67 GUILD STAR-FIRE4』かぁ。これは良いねぇ。……鞍馬、ちょっと弾いみても良い?」
「勿論、良いですよ」
そこはベースを大切に扱ってくれるエリアスさんなら100%OKです。
ベーシストなら、他の人間のベースが、どんなベースなのか見極めたいものですもんね。
その気持ち良く解りますし。
なのに、そのベースのビルダーであるジムさんは……
「ヘヘッ。ヤメときなエリアスちゃん。そのベースは、鞍馬ちゃん以外には、誰も弾けねぇよ。他の奴が弾いたら、誰が弾いても弾き難い設定にしてあるからな。下手に弾いたら、自分の腕の無さを痛感する事になるぞ」
「えっ?なんでですか?」
「なぁにね。オイラの売る楽器は、その人専用にカスタム仕上げてあるから、他の奴が弾いても絶対にシックリ来ない。……あぁ、因みにだが、エリアスちゃんのベースを、鞍馬ちゃんが弾いても同じ現象が起こって、嫌な違和感を感じるだけ。爽快感は無いぞ」
あぁ……そういえばそうでしたね。
骸さんのカスタムベースって、全商品、そう言う演奏者に合わせた細かい設定が施されてるから、他人の楽器を弾いても変な違和感しか残らないんでしたね。
「流石、先生ですね。完璧です」
あらら。
ホランドさん、あの後も『師弟関係』は、未だに継続してるんですね。
そしてホランドさんは、相変わらず、ジムさんを盲信してると……
「えぇっと、ジムさん。それって、全員が全員そうなんですか?」
「いや、それがそうでもないんだ。1人だけ、そうじゃない馬鹿が居る。アイツだけは規格外の特注品だ」
いや……
あの、まさか……
それって……
「それって、もしかして」
「あぁ、その通りだ。言わずと知れたヒデ坊のバカタレだ。アイツだけは、どのギターを弾こうが、いつも気持ち良さそうに弾きやがる。ありゃもぉ異常だ」
「そうなんですか?けど、なんで仲居間さんだけは平気なんですか?」
「根本的なラインでの感性の幅の違いなんだろうな」
「感性の幅……ですか」
「そう。あの馬鹿は、ギターに触れただけで、その意思が伝わるとか抜かしてきやがったからな。それで、いつも他人の感性を飲み込んで、それを綺麗に演奏に繋げやがる。自身の汎用性の高さを物語ってるとしか言い様が無いんじゃないか」
あぁ……それって、バッチリ有り得る話だ。
崇秀は普段から、他人の音楽性を吸収する事を好んでやっている。
だからこそ、人の感性を感じる事が出来る、と言う解釈も出来なくは無い。
まぁ、この辺は『言うに易し、やるに難し』なんだろうけどね。
「あぁ、じゃあ、崇秀の持っている骸さんのカスタム品は、全ギター、設定違いのまま使ってるって事なんですか?」
「そうだね。最初に持ち込んだUV-7以外は、アイツは敢えて、設定変更を注文して来ないからなぁ。そのまま使ってるんだろうね」
「しかし、先生。そこまで弾き難いものなんですか?」
「このバカタレ。オイラのギターは、そいつ専用に事細かに設定してあるって、さっきから言ってるだろ。弾き難いなんてもんじゃねぇわ」
「すっ、すみません。出過ぎた真似を」
ホランドさんは謝ったけど、これって難しい問題だよね。
なんて言ったって、今まで骸さんのギターや、ベースを、崇秀以外の人が弾いた所を殆ど見た事ないもんね。
敢えて言うなら、ホランドさんが弾いてる姿を見たぐらい。
口で説明されても、簡単には解り難い物なのかも知れない。
あっ、でもそう言えば崇秀が『作曲の際には曲に合ったギターを選んで使ってる』って言ってた事があったんだけど。
その意味って、これの事を指して言ってたのかもしれないね。
「いやまぁ、これバッカリは体感しないと解らないもんだからな。……ホランド。オマエ、試しに一回弾いてみるか?」
「えっ?それは仲居間さんに納品する商品を試し弾きさせて頂いても良いって事ですか?」
「あぁ、オイラの休養前の最新作『Gibson S-1』を弾いてみろ。あぁ序に、エリアスちゃんも、鞍馬ちゃんから『Music-man 1979 Sting-ray bass』か『67 GUILD STAR-FIRE4』かのどっちかを借りて、ホランドと一緒に演奏してみな。今オイラが言った事が身に沁みて解る筈だぜ」
意外な提案だけど。
これは、最も解り易く、バッチリと理に適った話だね。
ジムさんの言う通り、理屈を通すよりも『体感』するのが一番解りやすいもんね。
まさに百聞は一見にしかずかぁ。
……にしてもジムさん。
今、ホランドさんに新作って言いましたけど、仕事しても大丈夫なんですか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
なんの揉め事が起こるのかと思えば、そんな揉め事と言う様な話でもなかったみたいですね(笑)
ですが次回、ジムのさんの言っていた酷い違和感の正体を身を持って体験して行く事に成るのですが。
果たして、ホランドさんとエリアスさんの演奏は、どの様な結果になるのか?
その辺を書いて行きたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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