1074 思いも寄らなかった勧誘

 飯綱ちゃんと話をしていたら、突然の奈緒さん達の来訪。

その理由を聞いてみたら『ジムさんの温泉治療がメイン』だと言うが、それにイマイチ納得出来ない眞子は……


***


「あの、奈緒ネェ……」

「ふふっ、その様子だと、まだ私が、なにか隠してるって思ってるでしょ」

「うん。思ってますね」

「じゃあ、なんでしょう?」

「多分、私の話じゃないかなぁ。GUILDでメンバー募集をかけてる件で、心配しての早期来日じゃないかな?」

「はい、ご名答」

「そうなんだ。……あぁ、でも、それだったら、心配には及ばないですよ。バンドなんて、誰とやっても一緒ですからね」


うんうん、素直ちゃんナイス情報だったよ。

ニューヨークで起こってる署名運動の話を聞いてなかったら、この対応は出来なかったからね。


ホント、良い情報だよ。



「ははっ、そこは勘違い。別に眞子が誰と組んでも心配はしてないよ」

「えっ?じゃあ、なんでですかね?なんの心配ですか?」

「眞子の才能を、無駄に使われる心配」

「えっ?なんですか、それ?」


うん?なんのこっちゃ?


崇秀じゃないけど、才能なんて垂れ流せば良いじゃないですか?



「眞子の才能は、雑魚の為に垂れ流しになんかさせたくないの」

「いや、雑魚ったって……別に問題無いと思うんですけど」

「違うわよ。アンタはスポットライトを当たる為の存在。アンダーグラウンドなんかじゃ、本当の意味では光り輝かない。……だから眞子、コッチにおいで。私達の所で一緒にやろ」

「えっ?」


えぇ~~~っ。

まさか、奈緒ネェ直々に【Nao with GREED-LUMP】へのお誘いですか?


こんな有り難い話は無い。


……でもなぁ。



「勿論、今、即決しろとは言わないけど。どの道、私達【GREED-LUMP】が、本気で眞子を取りに来てる以上、他のバンドなんて目じゃない。なら早急に、ウチに決めても良いんじゃないの?」

「あぁ……うん」

「あれ?……なに、その微妙な反応?私達じゃ気に喰わないの?」

「とんでもないですよ。だから、そう言う訳じゃないんですよ。って言うか。寧ろ、有り難くて死んじゃいそうだよ」

「だったら……」

「……でもね。【Nao with GREED-LUMP】みたいな、完全に出来上がったバンドじゃダメなの。この申し出を受けちゃったら、私は、奈緒ネェには一生勝てなくなっちゃう。だから……ごめんなさい」


ホントに、ごめんなさい。

折角、誘って貰ってるのに……


でもね。

奈緒ネェも、そうなんだけど。

他にも知り合った人達の誰にも負けない様なバンドを、眞子も自分で作りたいんですよ。

勿論、最終目的とするのは、私を断った崇秀が一緒にやらなかった事を後悔する様なバンドを、自らの手で作りたい。


これは、崇秀にバンドを断られた時に自分で決めた事。


だからもぉ、完成されたバンドじゃダメなんだよ。


私が、自分の意思で選んだメンバーで、奈緒ネェとも崇秀とも真正面から戦いたい。


それだけに、この話はお受け出来ません。


ごめんなさい。



「敢えて、苦難の道を行くつもり?」

「うん。奈緒ネェが心配してバンドに入れ様って考えるんじゃなくてね。せめて、本気で私が使えるから一緒にやろって言って貰える日まで、自分で頑張りたい」

「へっ?あの……眞子」

「あぁ、はい。なんですか?」

「いや、あのね。今が、その時なんだけど」


どこが?


崇秀は全然足りないって、そうハッキリ言ってましたよ。

だから、奈緒ネェも崇秀と同じ様に、そう思ってる筈です。


姉弟説が流れる位よく似た感性を持っている2人なので、此処は間違い有りません。


嘘は良く無いです。



「また、そうやって私を甘やかそうとする。ダメですよ。そんな見え透いた嘘を付いちゃあ」

「えっ?いや、嘘なんか付いてないよ。本気だって本気」

「どこがですか?私なんて、まだまだ実力不足も良い所ですよ。もっと自分自身をガシガシ鍛え上げてからじゃないと【Nao with GREED-LUMP】には、ふさわしく有りません。だからダメなんです」

「眞子……アンタ、馬鹿なの?」

「なんでですか?そんなに馬鹿じゃないですよ」


そりゃあね。

奈緒ネェに比べたら馬鹿ですよ。


でもですね。

もぉ、そんなに強烈に馬鹿って訳じゃないです。



「いや、それ以前に、眞子って、私の事なんだと思ってるの?」

「えぇっと、世界一可愛くて、優しくて、綺麗なお姉ちゃん」


此処は完璧です。

まさにパーフェクトな回答です。

これを否定出来る人が、この世に存在しちゃいけないレベルで完璧な答えです



「あぁ、そう言う事じゃなくてね。……眞子って、ひょっとしてさぁ。私の事を仲居間さんみたいに見てるんじゃないかなぁって思ってさ」

「あぁ、そこは100%見てますよ。だって、奈緒ネェは至高の存在だもん。だから、少々私がなにか上手く行ったとしても、本来は、簡単には認めない筈です。でも、奈緒ネェは優しいから、こうやって妥協してくれてる。今回の件は、そう言う事じゃないんですか?」


要するにですね。

所詮、私なんか、奈緒ネェにとっては『庇護対象』でしかないって事ですよ。


でも、いつかは『ギャフン』ですよ。



「ハァ~~~ッ、もぉこの子だけは。良いわよ。そこまで言うなら、私が本気だって事を、眞子争奪戦で見せてあげる」

「えぇ~~~っ、私って、そこまで庇護対象なんですか?……そりゃあ、流石に凹みますよ」

「もぉ……ダメだ、この子」


自分でもダメな事ぐらいなら重々承知してますよ。


ポンコツちゃんですからね。


***


 ……っで、この後、鍋の準備が出来たから、みんなで食卓を囲む。


でも……なんで、本当に蟹な訳?

お陰で飯綱ちゃんに、またまた『お地蔵さん』って言われたし。


腹立つわぁ。


……っとまぁ、そんなこんなが有りながら、宴もタケナワになりまして。

食材が殆どなくなり。

みんなに合格お祝いして貰った飯綱ちゃんは満足気な顔で、同じく高校に合格した真上さんの家に遊びに行った。


但し、その満足は『合格』したのが満足なのか?

それとも『蟹を食べて』満足したのかは定かでは無い。

序に言えば、気を遣ったのか、今日は真上さん家に泊めて貰うから帰らないそうです。


……まぁまぁそんな感じで、飯綱ちゃんを、みんなで見送った後。

部屋で、少しゆっくりしている時に、ある話が始まる。


これがまた、余計な波乱を呼ぶ事になる。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


眞子は、奈緒さんの事を、崇秀同様の目で見ていると思っているみたいですね。

それ故に、自己肯定感が低くなり、トンデモナイ勘違いをしてしまっている様です(笑)


矢張りこの子もアホでしたね(笑)


さてさて、こうやって奈緒さんの勧誘は失敗に終わった訳なのですが。

眞子を奈緒グリに勧誘したいのは、なにも奈緒さんだけではない訳なので、当然この後も、こう言った勧誘関連で揉め事が起こりますです。


なので次回、どの様な揉め事が起こるのか?

その辺を書いて行きたいと思いますので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る