1070 山中君をドン臭いと思う理由
素直ちゃんから貰った3B-GUILDのライブチケット。
それを倉津君に渡そうとしたら、何故か逆に無名のライブに誘われる事に成ったのだが。
その際に、眞子が山中君の扱いを粗悪にしたものだから……
***
「そぉかなぁ?でも、それってさぁ。幾らなんでも長過ぎだと思わない?」
「なんでだよ?」
「だってさぁ。まずにして、中学生活が終わっちゃえば、スタジオで【無名】と【3B-GUILD】がブッキングでもしない限り、逢える機会すら少なくなるんだよ。これってドンドン自分の首を絞めてるだけじゃないの」
「まぁ、そうだろうけどよぉ。ヤッパ、アイツにとっちゃあ、タイミングが大事なんじゃねぇの」
ふぅ~~~……もぉこの子は。
勉強の休憩時間が終わってるって言うのに、困った子だなぁ。
そこじゃないんだってば。
もっと単純に考えれば良いのに……そこに最大の問題が有るんだからさぁ。
「そうかなぁ?あぁ因みになんだけど、私、この間【Nao with GREED-LUMP】のエディさんと【Fish-Queen】の美樹さんをくっ付けたんだけどね」
「えぇ!!ちょっと待ってくれよ!!美樹さんって【奈緒グリ】のエディと付き合ってるのか!!」
あぁ……そこは驚かなくて良いんだよ。
今の所、そこはどうでも良い話なんだから。
変に喰い付かなくて宜しい。
「うん、そうだよ。それでね。その時、思ったんだけど。恋愛スタートのタイミングなんて、それこそ一期一会なんじゃないかなぁって。真琴ちゃんと、奈緒ネェも、そうだったでしょ。だから、山中君が周りを固めてる内に、素直ちゃんが、他の誰かのモノになっちゃったら意味ないじゃん。そこが一番の問題だよ」
「あぁ、まぁ確かにな。素直が、人のモノに成っちまったら、なにをしてても意味はねぇわな」
「でしょ。だから、女々しいって結論に至る訳。……っで、私は女々しい男が嫌いだから、山中君に対して意地悪く物を言う。それだけの事」
面倒臭いのも有るけど……
まぁ、それを差し置いても、実際、山中君は良い奴なんだけどね。
非常にドン臭いです。
ドン臭過ぎます。
「じゃあなにか?オマエは、山中が嫌いな訳じゃなくて、心配してるって事か?」
「そりゃあそうだよ。お喋りで煩わしいとは言え。山中君は、決して悪い奴じゃないからね。出来れば、早く上手くいって欲しいって思ってるよ。それにね。今のままじゃ、山中君は、崇秀との差を気にし過ぎて、音楽を辞めるとか言い出しかねないからね。そこを避けたいって言うのが一番の本音かな」
「おぉ、なんだよ。優しいじゃんかよ」
「いや、別に優しい訳じゃないよ。私が一番気になってるのは、後者の方。音楽の話だし」
恋愛も大事だけど。
今の山中君の進歩の無さは、こう言う、困った問題に繋がりかねない。
だから、そっちの方が不安。
「って事は、崇秀との音楽の『差』の話か……確かに、この1年で大きく開いたみたいだな」
「開いたねぇ。……って言っても。まぁ崇秀は、元々酷い病気だから、あの進化のスピードはしょうがないとしても。現実問題としては、山中君の進歩の無さはの方が大問題だね。そこを早急に解決しないと『引退』も有り得るからね」
どうやら真琴ちゃんも、この差を認識してるようだね。
だったら尚更、山中君の性格からして、そんな事を考えてそうで心配。
崇秀じゃないけど、まだまだ『埋れさせる』には惜しい才能だからね。
「けどよぉ。素直との恋愛と、どう繋がるんだよ?」
「基本はやる気と、集中力の回復だね」
「はぁ?やる気と、集中力だと?アイツ等の恋愛と、それが、なんの関係が有るんだよ?」
わかんないですか?
一番解り易い男性心理なんだけどなぁ。
「わかんない?」
「あぁ、サッパリ解らん」
「そっか。……じゃあさぁ、そんな真琴ちゃんに1つ質問ね。真琴ちゃんってさぁ。奈緒ネェの前で良い格好したくない?」
「いや、そりゃあ、当然、出来るもんならしてぇよ。つぅか、男だったら、誰だって女の前で良い格好したいだろ」
「でしょ。だったら、その環境を、山中君に与えて上げれば良いんだよ。そうすれば、嫌でも必死になるんじゃないの?」
「いや、まぁ、そりゃあ理屈としてはそうだろうけどよぉ。近い内に芸能界を辞め様と考えてる奴が、そんなに急にヤル気になるか?」
ヤッパリだ。
今、真琴ちゃんは『近い内に芸能界を辞めよう』って言葉を使ったでしょ。
これを人に言うって事は、既に山中君の中では、大きな覚悟が目覚め始めている証拠。
この確証を得れたなら、説明が、更にしやすくなったね。
それに早急に、手を打たなきゃマズイ状態だね。
「なるよぉ。だって、方や有名人のままで、方や引退した一般人じゃ、男としては世間に格好が付かないじゃない。山中君は、特に、そう言う男性の見栄を気にするタイプでしょ。……って言うか。男の人だったら、絶対にこんな状況は嫌だよね。だから、やらざるを得ないんだよ」
「うわ……最悪だなオマエ。性格悪過ぎるぞ」
「そぉかなぁ?全部、良い事尽くめじゃない?山中君は、念願かなって素直ちゃんと付き合えるし、芸能界でも生き残ろうとする気持ちが蘇る。方や素直ちゃんは、いつまでも真琴ちゃんに片思いしてる訳には行かなくなる。一挙両得じゃん」
違うかい?
……って言うか。
友達なんだから、それぐらい考えてあげても良いんじゃないかなぁ。
普通そうでしょ。
「いや、眞子。……1つ質問」
「なに?」
「素直の気持ちは?」
「関係なし。……って言うかね。素直ちゃんも、正直言って、しつこいと思うんだよね。真琴ちゃんに対する気持ちが本気なのは解るけど。いつまで待っても、奈緒ネェと、真琴ちゃんの関係は崩れない。崩れる筈が無いのが解ってるんだから、もぉいい加減、真琴ちゃんへの想いを『卒業させてあげる時期』だと思うんだよね。このままじゃ、素直ちゃんが不幸になっちゃうからね」
そぉ……これが素直ちゃんから、私がチケット受け取った理由。
いつまでも『悲劇のヒロイン』を気取ってても。
真琴ちゃんが、決して自分のモノにならないと言う事を、そろそろ身をもって体験して貰おうと思ってたんだよね。
学校の卒業も近い事だし、この片想いも潮時なんじゃないかな?とも思う。
それになにより、奈緒ネェの恋愛の邪魔されちゃあ困るからね。
まぁ……奈緒ネェを散々泣かせた私が、こんな事を言うのも、滑稽な話なんだけどね。
「オイオイ、眞子。なにするつもりだよオマエ?」
「なにもしないよ。決断するのは真琴ちゃん。素直ちゃんや、山中君の事を本当に友達だと思うなら、もぉ本気で彼女を開放してあげなよ。それが、惚れられた者の責任だと思うよ」
「けどよぉ。今更、そう言うのって難しくないか?」
「さぁね。でも、山中君の件も然りなんだけど。そうやって先延ばしにする事が、必ずしも良い方向に行くとは限らないよ。いつかはキッチリと向き合わなきゃイケナイ問題なんだからさ。早目に対処した方が、お互いの傷口も浅く済むんじゃないかな」
「……まぁなぁ」
自分が出来なかった事だから、あんまり人の事を言えた義理じゃないんだけどね。
こういう、ぬるい関係って言うのは、いづれ、お互いに大きな溝を作る可能性が高い。
そうなってからじゃ、対処の仕方もドンドン難しくなると思うよ。
だから、早め早めにね。
「さて、話は終わり。……そんで、今日の勉強もお仕舞いね」
「へっ?いや、まだ一時間残ってるぞ」
「ふふっ。なに言ってんだかね。真琴ちゃんが、こんな心境で勉強なんか出来る訳ないじゃない。だから、今日はお仕舞いなの。……あぁ、それとね。来週の【無名】のライブに行く替わりに、今度の土曜日【3B-GUILD】のライブに付き合ってね。はい、これ、チケット」
「ちょオマ!!これって、その日になんとかしろって事か!!」
そんな動揺丸出しにして、慌てふためかなくても大丈夫だって。
流石に、そこまでは言わないよぉ。
「うぅん、違うよ。その件については、卒業までに、なんとかして欲しいってだけの話。今回は、偶々、素直ちゃんから頼まれたから、真琴ちゃんに渡しただけ。気にしなくて良いよ」
「いや……そうは言ってもよぉ」
「知らな~~~~い。自分が招いた事でしょ。自分でケリを付けなきゃね」
「オマエって意地悪いな。……それになんか、日に日に、崇秀化と、奈緒さん化が進んでるぞ」
「かもね。でも、自分でなんとかしてね」
進んでないよ。
だって私は、あの2人みたいに、ナンデモカンデモ完璧なまでにお節介しないもん。
基本、今みたいに投げっ放しなんで。
「……投げっ放しかよ」
正解です。
私に甘えるんじゃありません。
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【後書き】
はい、解決しなきゃいけな問題第一弾『素直ちゃんの倉津君の想い』と『山中君の恋愛観』
これは倉津君として解決し切れなかった眞子の課題でもあるのですが。
此処をキッチリ解決して置かないと、いつまで経っても素直ちゃんが倉津君への想いで雁字搦めに成ったままの状態に成りますので。
まずは、その問題定義をしてみました。
……っとまぁ、そんな風に倉津君に問題が定義された所で。
次回からはまた場面転換をして『上星川の実家』で起こったある出来事を書いて行きたいと思います。
果たして、此処ではなにが起こるのか?
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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