2024年04月15日(誘導業者との戦い)

 Instagramで無神論者の次にフォローしてきたのは、誘導業者だった。他のアプリに誘導し、商品を売りつけるのが目的の者たちだ。


■1人目、帰国子女


「こんにちは、あなたの投稿は素晴らしいです! 一つ質問してもいいですか?」

「ご質問は何でしょうか?」

「投稿中のカモメはどこで撮ったのですか? 環境が美しい」

 この時点で、相手は日本人では無いんだろうなと思っていた。

「森県八戸市の蕪島神社で撮影しました。良い所ですよ」

「教えてくれてありがとう。あなたが人生をとても愛している人だとわかりますね?

お互いに交流して友達になれたら、素晴らしいです」

 ふむふむ、人生を愛していると分かってくれるのか、この人なら救世主になれるかもしれないな、もしくは既に救世主かもしれない。そう思った。

「確かに私は人生をとても愛しています。そうですね。価値観が合えば、友達になる事は素晴らしいですね」

「お互いに紹介しましょう。お互いのイメージを増やしましょう。私は○○と申します。子供の頃日本人で、母とアメリカに行って生活した後、私の国籍はアメリカに移り、今はアメリカ国籍です。私が1歳の時、母は私をアメリカに連れて行って、今日本に帰って、名古屋市に住んでいます。どの都市で暮らしていますか?」

 素晴らしい、熱田神宮がある名古屋市に住んでいるとは、きっと霊格が高いのだろう。やはり、救世主かもしれない。

「絶華望と申します。日本生まれの日本育ち、今は青森県の八戸市に住んでいます。年齢は45歳、職業は巫女です。天照様を崇拝しています」

「なるほど、青森県は私の旅行計画の中にいるから知っています。残念ながら私は行ったことがありませんが、青森県はどんなところですか?よかったら教えてください。ありがとうございます」

 私が巫女だと名乗っても反応なし、良い傾向だ。青森の事を知りたいのなら教えてあげよう。

「青森県は、自然豊かな場所です。八戸市は港町で、魚介類が美味しいですよ。写真を撮った蕪島神社は小さな砂浜もあって観光名所です。十和田市は行くまで時間がかかりますが、奥入瀬渓流という川と森が楽しめる場所があります。温泉も多くあるので、温泉が好きならお勧めの場所は書き切れないほどあります」

「すみません、lineはありますか?インスタグラムは私が使う時間が少ないし、仕事のせいでインスタグラムでのコミュニケーションは不便だからです。できれば、ラインでもっとお互いを知ることができますよ。今度青森县に行ったら、お互いに見知らぬことで気まずい思いをすることもないですよ。どう思いますか?」

 さっきから、言動におかしなところがある。ちょくちょく会える事を匂わせている。みょうだな、私は別に会いたくないのだ。理由は単純だ。すでにお腹に神様の子を宿している。もうお嫁には行けないのだ。女性にうつつを抜かしている場合ではない。真の救世主、神様の子、天子様を産み、育てなければならないのだ。

「LINE登録するには理解が浅いと思います。返信はこちらも遅いですし、私もインスタグラムを常に監視していません。理解が深まるまで、1日1回のやり取りでも良いと考えています。1年後に友達になれるような感覚で良いと思っています。あなたには急ぐ理由がありますか?」

「■■やってますか」

 華麗にスルーされたので、以後彼女に連絡はしていない。業者と遊んでいる暇などない。




■2人目、アメリカ人


「こんにちは ここではじめまして 友達リクエストを承認してくれてありがとう 私はあなたの返事を楽しみにしています」

「こんにちは、私は日本人です。英語は苦手です。よろしくお願いします」

「ありがとう、分かりました。私の名前は○○です、あなたの名前は何ですか?」

「絶華・望(たりばな・のぞむ)です。救世主のススメを書いています。私は救世主です。あなたもなりませんか?救世主になる方法は『救世主のススメ』に書いています。『救世主のススメ』へのリンク」

「うわー、あなたは素敵で甘い名前を持っています。 私はアメリカから来ました。あなたはどこから来ましたか?」

 救世主の件についてはスルーされてしまった。この時点で、友達になる気は0だと理解した。これ以降、私のテンションは0事務的にやり取りする事にした。

「日本の青森県八戸市です」

「日本からの私の唯一の友人としてあなたをここに迎えることができて、とても嬉しく思います。他にアメリカ人の友達はいますか?」

 知り合いにアメリカ人が居た場合、何か困る事があるのだろう。

「いいえ、居ません」

「ああ、それなら運命が私たちを結びつけたに違いありません!おー、それはよかったです! 日本からの新しい友達に会えてとてもうれしいです」

 どうやら不安要素が無くなって安心したようだ。

「ありがとうございます。私も嬉しいです」

 私は、心にもない事を言った。お世辞である。

「あなたは男性ですか、女性ですか?何歳ですか?」

「私は男性です。45歳です」

「私は今××歳です。私は独身女性で、米国政府と協力しています。私は軍の看護師です。私は現在シリアに配備されています。あちらで起こっているいくつかの最近の暴動のために、私たちは応急処置と緊急事態のためにここシリアに送られます。あなたの仕事は何ですか?」

「システムエンジニアをしています。軍の看護師とは立派なお仕事ですね。尊敬します」

「どういたしまして親愛なるありがとう。随時ご連絡させていただきたいのですが、仕事の関係でいつもInstagramをご覧になれません。 携帯電話用の他のプラットフォームにはどのようなものがありますか?」

 1人目の別アカウントなのだろうか?さっき失敗したから、ちゃんとした職業ですよとアピールしているようにしか見えない。

「Xならあります。他は利用していません」

 嘘である。

「○○がありますか?」

「○○はありません。機械音痴でインストールできません」

 嘘である。

「××をお持ちですか?」

「××もありません。私は、メッセージツールが好きではありません。InstgramもXも神様に言われて仕方なく使っています」

 これは本当だ。私はSNSの類に時間を使う事を無駄だと思っている。

「わかりました、理解しました」

 以後、彼女からの連絡は途絶えた。


 この事から得られた教訓は、性欲が無ければ変な者には引っかからない。子供を授けてくれてありがとう神様。

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