2019年05月某日(櫛引八幡宮)
私は、櫛引八幡宮に来ていた。理由は、単純にお参りだった。就職を失敗し、やりたい事も出来ずに、ブラック企業を渡り歩き、人生に絶望していた。
絵の才能が無い私が40歳から、金持ちに成るためには小説か宝くじで、一発当てるしかなかった。
2000年1月1日に、目にした月と雪の世界に魅入られ、その感動を物語にしたいと思っていた。だから、月読様を主人公にした小説を書こうと思っていた。ちなみに、小説自体は既に何度も書いていたし、コンテストにも応募していた。だが、認められることは無かった。
ちなみに、東日本大震災の時の神様との会話は完全に忘れ去っていた。
そして、櫛引八幡宮に行った時、天照大御神の社がある事を現地で知った。これも何かの縁、神様の名前を使った小説を書くのだから、断りを入れるべきだろうと思い。お参りをした。
(八百万の神様、貴方様方の名前を使った小説を書こうと思っております。どうかお許しください)
私は、そう願った。その時、私は天照様が私の願いを聞いたら、こう答えるのではないかと返答を妄想した。
「許可を出そうとも出さなくてもお主は勝手に書くのだろう?それに、許可をしたとして妾になんのメリットがある?」
私は、妄想した天照様の問いに心の中で答える。
「知らないんですか?神様。今は、ジャパニメーションと言って、日本のアニメが海外で人気なんですよ」
「そんな事は知っておる。お主以外にも妾たちの名前を使った漫画やアニメは世界に伝わっておる。お主が今更、妾たちを題材にしたとして、何か出来るとでも?」
「私がこれから書く小説は今の時代に合わせた物語です。これまでの作品よりも多くの人たちの目に触れることになるでしょう。そうなれば、日本国内であれば誰でも知っている天照様ですが、海外での認知度はまだ低いでしょう?私の作品でもっと多くの人たちに天照様の事を知らせることが出来ます」
「ふ~ん。それだけか?」
「これでは足りないと……。では、約束しましょう。私の作品が売れて億万長者になったら、その金でフランスのパリに神宮を建てます」
「フランスだけか?」
「それだけではありません。全世界、『全ての国に神宮を建てます』」
「まだまだ足りんぞ」
「では、人々が忘れてしまった八百万の神様全てを復活させましょう。今風の話に置き換えて小説にします」
「小説にするだけか?」
「小説が売れたら、そのお金で全国の神社を回り、全ての神様に感謝を伝えます」
「ふむ、そこまですると言うのであれば許可しよう。まあ、面白かったら応援してやる。まずは書いてみよ」
「ありがとうございます。ですが、私がこれから書こうとする作品は月読様が主人公なのですが、大丈夫ですか?」
「おい!なんじゃそれは!妾が主人公の作品を書け」
「ですが、私が書きたいのは月読様が主人公の作品なので……」
「そんな作品、妾は応援せぬぞ!」
「仕方ないですね。自力で売れてみせますよ」
「このバカ者!妾の力なくして成功なぞするものか!」
「成功して見せます。本来、成功とは自分で掴み取るものですから、それに月読様は応援してくださいますよね?」
「ぐぬぬ、後で、後悔しても知らんからな……」
「そうですね。もし、月読様を主人公にした作品が失敗したら次は天照様が主人公の作品を書きますよ」
「まあ、その時は応援してやる」
「あ、だからと言って売れないように妨害するのは無しですよ」
「ああ、もちろんじゃ、邪魔はせんが、お主、3.11で思い出すことは無いのか?」
「東日本大震災ですよね?それを題材にすればいいのですか?」
「いや、思い出せんのならいい」
この日のやり取りを、私は自分の妄想だと思っていた。だが、おかしいとも感じていた。なんで3.11という単語が出てきたのか?私の妄想なら出てくるはずのない単語だった。
この時、私は3.11にした神様との妄想の会話と小説のアイデアを完全に忘れていたのだ。そして、思い出すことも出来なかった。
思い出すのは2024年の能登半島地震の後だった。
そして、この日を境に私の視界に謎の光が時々映るようになっていた。最初は天使だと思っていた。だが、違っていた。天照様が付いてきていたのだ。その光は、目を開けていても瞑っていても見える時には見えるものだった。視界の端っこに、世界を見るのに邪魔にならないように、移動して消えるのだ。
実に、天照様らしい気遣いのある。優しい姿の見せ方だった。まるで大和撫子の様な慎み深さだった。
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