第27話 怖い女の子
翔「今日英玲奈達と帰るからごめん」
柚葉「アタシも早瀬達と帰ることになったから翔から言ってくれて嬉しい、ありがと」
翔「なるべく早く帰ってこいよ」
柚葉「そっちもね」
翔「じゃあ、家で」
柚葉「オッケー(犬のスタンプ)」
柚葉「あ、そうだ。
アタシ達が一つ屋根の下なのはホントの友達を除いて、秘密にしといてね、めんどくさいからさ」
翔「オッケー(猫のスタンプ)」
柚葉「今度こそ、家で」
翔「今度こそな笑」
こうやって、ただの幼馴染ではなく、恋人として、ラインしながら心を許した友人達以外は知らない秘密を抱えるのはこの上ない幸せだな。
「誰とラインしてんの?」
「柚葉」
覗き込んで来るのは英玲奈。
「見して」
「いいけど、変なこと送るなよ?」
「そんな野暮な女じゃないってば」
「どうだか」
スマホを渡すとニヤニヤし出す英玲奈。
一応警告しておこう。
「信用してないと送っちゃうぞ〜?」
「何を?」
「翔の秘密、耳貸して」
「英玲奈様のことは常に信用してます、なので許してください」
英玲奈が耳打ちした内容は柚葉にバレたら即死ねる内容だった。
俺は顔を真っ赤にしながら最敬礼する。
これだけはバレてはいけない。
「よろしい、はい」
「あざっす」
「私に勝てると思うなよ?」
「だから、おんぶしろと?」
「左様だ、行けしょーちん!」
「パンツ見えますがよろしいので?」
「スパッツを履いているから大丈夫なのだ!」
「準備がよろしいようで」
ニヤつく英玲奈はスマホを渡すと最敬礼したままの俺の背中に飛び乗り、元気よく前を指差し、高笑いする。
当然、周りからは好奇の目で見られるが英玲奈ならあとでテキトー言えば誤魔化せるだろう。
今は耐えるしかない。
「相良、お前何してんの?」
「姫さんの要望に応えてるんだ、気にすんな」
輝はドン引きながらもほんの少しだけ羨ましそうだ。
俺は苦笑いを向ける。
「変わってくれ」
ほら。
「なんか言った?」
「言ってません」
英玲奈のドスの利いた聞いたこともない低い声。
思わず俺まで身体を震わせてしまった。
「英玲奈、軽いだろ」
「あぁ、多分夏葉くらいだと思う」
「何キロ?」
「教えるわけないでしょ」
夏葉は多分60ないくらいだが英玲奈はもっと軽く感じる。
おそらく55とか。
「身長いくつだっけ?」
「150ぴった」
「毎日牛乳飲めよ」
「胸に行っちゃうんだよね〜、翔、10センチくらい分けてよ」
確かに制服越しだが英玲奈は中学の頃より大きくなった気がする。
「どうやってだよ」
「女子高生としては最高だろ」
「バスケ選手として最高が良いんです〜」
ギュッと抱きしめ体重をかけ、冗談だと言うように語尾を伸ばすがこれは本音だろう。
中1の時はギリ140でもっと小さかったが中3の時に150になった時は飛び上がって喜んでたしな。
「英玲奈ちゃんももしかしたらまだ来るかもよ?
私、今回3cm伸びてたし」
絵里は157だったはずだから160になったわけか。
「マジ!?」
英玲奈ももしかしたら卒業時は160超えてるかもな。
有名なバレー選手は高校でもかなり伸びたらしいし。
「アタシは止まってた」
「アンタはもういらないでしょ」
「高い方がカッコいいから欲しいんだよ」
海の私服はボーイッシュ傾向が強い。
俺の見た限りになるがスカートは制服でしか履いてないまである。
「英玲奈〜、そろそろ降りろ〜」
「楓アンタどこ触ってんの!」
後ろにバランスを崩し、声を張り上げる英玲奈。
おそらくスパッツを触られたのだろう。
「英玲奈ちゃんの大事なところ」
そこは女子でも触っちゃダメだろう。
「楓〜」
「ごめん、ごめんてば」
「許すか〜!!」
英玲奈は俺から飛び降り、楓に飛びかかった。
楓は押し倒され、頬をつねられ、足をバタつかせる。
ーー楓見えてんぞ
「怪我すんぞ」
「楓、見えてる」
「見せパンだから大丈夫」
「そうか」
海が英玲奈を、俺が楓を担当し、離れさせる。
ったく、楓のはしたなさは中学の頃から変わってねぇな。
「あれ?浅野くんと輝くん、なんで顔赤いの?」
「なんか、場違い感すごくてな」
「見せパンでも見ちゃったし」
2人は高校からだからしょうがないか。
「これがウチのグループだ、名を相良翔と愉快な美少女たちと言う」
勿論テキトーだ。
「私、えりちと結婚する未来の旦那さんが親友達と仲良すぎる件について」
昨今のラノベタイトルか?
「英玲奈社長とその部下達」
なんの会社だよ、あとお前の部下は死んでも嫌だ。
「カイと舎弟達」
急なヤンキー展開やめろ。
「楓のおもちゃ達」
なんかエロいな!
「よし、解散!」
絵里「センスないもんね、翔くん以外」
英玲奈「いやいや1番センスないのえりちだから」
楓「えー、海でしょ」
海「英玲奈はやばいだろ」
俺が言うと全員が微笑む。
ちなみに俺は英玲奈が1番やばいと思う。
「楓が1番ましかな」
「うん」
「ありがと、浅野、テル」
楓は浅野と輝にウインク。
こういうところで男子の好感度を爆上げするのが楓の得意技だがこれは99%罠だ。
中学の頃から何人もの純粋な男子達がこの罠に引っかかって悲惨な末路を辿っている。
中でも酷いのは今から上げる二人。
仮にA君、B君としよう。
A君は楓に告白し、見事に玉砕するとその影響なのか精神が崩壊し、中2から不登校になってしまった。
高校は別の高校だ。
B君は勘違いして告ってとんでもなく罵倒されてメンタルが逝って、暴飲暴食の末、超巨漢のデブになった。
元はイケメンで都内でも有名なサッカー選手だったのに。
だがしかし、このA君、B君は勿論。
他の玉砕した男子達も誰一人として楓を恨まず、むしろ楓信者となっているから怖い。
「俺、ひかる」
「あ・だ・名♡」
「可愛い」
輝はかなりチョロいようだ。
「キモ」
「浮気はダメだよ」
「それな」
英玲奈、絵里、海は白い目を向ける。
「一途な子のが好きだぞ、楓ちゃんは♡」
「一途になります」
まーた、楓信者(被害者)が増えた気がするが気のせいだろう。
気のせいだと思うことにしよう。
「ダメだ、こいつ」
「輝くん嫌い〜」
「そんな、一之瀬〜」
「ふんだ」
英玲奈には嫌われても良いのか、輝。
楓より英玲奈のが安全だぞ。
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