第11話 これは最悪の出逢いだった

『いらっしゃいませ、ご主人様』


私の働くことになったメイド喫茶のコンセプトは、本当に極々一般的なものだった。

獣人だとか、妹系だとか、耳かきだとか……

なんだか色々あると思うが、本当に一般的なものだった。

挨拶も自分の思っていた様なもので、


『おかえりなさいませ、ご主人様』


これがご主人様(以後:お客様)が入られた時の挨拶。

ここからも想像してほしいが普通のメイド喫茶だった。


ふわふわの青色を基調としたスカートに、短いエプロンの制服に身を包み、接客する。


カウンターの中で私たちは帰ってきた(来店してくれた)お客様と話をしながらドリンクを提供したり、チェキ(写真)をとったり、お話ししたりをした。

元々話すのは嫌いじゃ無いし、ましてや自分の大好きなアニメや漫画の話をしたってみんな分かってくれる環境だ。


仕事自体は楽しかった。


確かに、なかなか口下手なお客様も居たり、会話が成り立たない時はどうしようかな。なんて思いながら弾丸で話してしまうこともあったし、お客様が増えた時には退屈そうにしてるお客様が居ないか、クルクル回りながら気を使って話に行ったり…

気疲れだっていっぱいして、大変なことも多かったけど、でもお客様同士が仲良くなるような形で質問したり、会話を取り持つことで、繋がりが出来ていく様子を見るのは凄く楽しかった。


『NANAは元気で、かわいいね』


なんて、みんなメイドさんには声が掛けやすいみたいでお世辞でも口にしてくれるのも嬉しくて、私は一生懸命に働いた。

それこそ女の世界だと、不安に思っていた人間関係も、凄く良好で、私は特に古株(長く働いていた)白さん(仮称)に凄くお世話になった。


白さんは絵が上手で、しっかりもの、お家の環境が私と似て大変そうなのに、人一倍優しくて…

本当に良い人だった。

だけど私はこの白さんとも絶縁してしまうのだ。


後悔してるのか。

と言われれば答えは『はい』だ。

正直、もし今白さんに会うことが出来るのなら、あの時のことを謝りたいと思う。

きっと許してはくれないと思うし、それくらい馬鹿なことをしたと思う。


当時、白さんもお店を辞める羽目になったのだが、時間が経ち、当時のメイド喫茶を調べたらまた白さんが働いてることが分かったので、それは少しだけ嬉しかった。

あの時の出来事が傷になってはいないのかなと少しだけでも思えたから。


私はこれからこんな重大事件が起きる(起こしてしまう)なんて梅雨知らず、メイドさんとして働いていた。

もう一つのバイト先と上手く調整しながら、それでも比重で言えば当時はメイド喫茶7:掛け持ちのバイト3くらいの比重だった気がする。


彼氏にも理解してもらいながら、楽しく仕事をしていた。

そして、順調に仕事も慣れてきたそんな時だったと思う。


彼に会ったのは…


私はラビットさんという一人の男性に出会った。

これが忘れられない出逢いになるなんてこの時の私は1ミリだって予想してなかった。

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