第5話 中学校・高校 時代

小学校を卒業した私。

同じメンバーがそのまま中学に上がると言う事もあり不安が大きかった。

いじめはこれからどうなっていくのだろうか。


しかし、私の大きな不安とは裏腹に何故だろうか。

いじめはぱったり落ち着いた。

やはり環境が変わるのは大きかったのだろうか。


そして気がつけば私の性格も色々な家族関係もあったせいか、性格がガラリと変わっていた。我儘で女王様のような独りよがりから、人の顔色を読み、嫌われない様に周りを見る様になっていた。


人から嫌われる事に恐怖を覚える様になっていったのだ。


でもいじめのなくなった学校生活は幸せそのものだった。

私のそばにいてくれた友人とはクラスが違ってしまい絶望感を感じていたが、田舎の学校ならではだろうか、中学に、上がる際に一つの町の小学校と合同になった。

私の事を全く知らない人たちがクラスのメンバーとなったのだ。


そしてその1人の女の子が私と凄く仲良くしてくれた。

アニメが大好きで、絵が上手で、優しくて。

私はその友人(仮称:花梨)と打ち解けあい、後の親友となった。

花梨のアニメ好きは本当に凄くて、色々な事を教えて貰った。

当時私たちのブームはNARUTO、アイシールド21、鋼の錬金術師、BLEACH……、この辺りだったと思う。


絵が上手な花梨に好きなキャラを沢山描いて貰った。

花梨の絵が私は大好きだ。

白い紙、何もないそこに生まれるひとつの命。

花梨曰く、書き続ければ誰だって描ける様になる!みたいだけど、私にはそんな風には思えなかった。


そして中学2年生に上がる頃には、同じ部活の友人(仮称:里帆)とも仲良くなった。

元々父親同士が同級生で顔見知りではあったものの、昔の私の性格を知っていた里帆は私を避けていたらしい。

でも同じ部活で、里帆がのけ者にされそうになっていたところを私は止めた。

止めたと言うよりのけ者にしなかった。

『アイツと喋るな』そんなニュアンスでのけ者にしようとしていた子が同じ部活に居たが、私は断固拒否した。

元々、同じ部活で話す様になっていた私たちの距離はこの出来事をきっかけに凄く近くなったと思う。


花梨と私、そして里帆。

3人はいつもいつも一緒にいた。

私たち3人のうちの1人が休むと、周りのクラスメイトが私に理由を求めてくるくらいに一緒に居た。

恐らく学年1モテた可愛い里帆と、アニオタで絵が1番上手な花梨。そして2人に囲まれて幸せな私。


本当に楽しかった。

そしてこの頃から私は花梨と里帆と小説を書く様になった。

所謂ケータイ小説。〝夢小説〟と言われる類のものだ。

アニメにハマり、授業中にノートにいろんな話を書き殴っては見せ合った。

勉強も出来た里帆は文章も綺麗だったし、花梨は漫画も描けるから見るのが楽しくて仕方がなかった。

私も拙いながらにこの趣味だけは続けていて、今こうやってあの日の出来事を何かに残したい。

そう思った時の手段として出てきたくらいだった。


そして里帆と同じだった部活(ソフトテニス)にも打ち込んだ。

とにかく負けず嫌いだった私。

特段運動神経に恵まれてはいなかったが、負ける事が悔しくて、毎日素振りをして練習に励んだ。

試合に勝てるのが嬉しくて、楽しくて、貴重な3年間だったと思う。

部活での送迎や、試合の観戦はいつも父親がやってくれた。

里美は一度も来たことはない。顔を見せたことも無かった気がする。

ただお弁当だけは用意してくれた。

義妹が小さかったのもあるかもしれないが、それでも興味があれば観に来るだろう。


来ないということは、そういう事なのだ。

私も母親になった今、強くそれを感じている。


でもそんな事どうだって良いくらい、部活が友人との時間が楽しくて仕方がなかった。

だからだろうか、私の記憶の殆どはこの中学時代で固められている。


何かで聞いた事があるが、人間は嫌な記憶を忘れようとする様に脳味噌が働くらしい。

卒業までの3年間は本当にあっという間だった。

生徒会長、部活の部長、あらゆる業務にも携わった私の人生において本当に貴重な3年間だった。


そして高校入学。

私は声優の夢を叶えるため、演技の勉強がしたくて〝演劇部〟の強い高校へと進学を決めた。

〝声優〟になりたい。

中学時代にアニメに芽生え、アニメが好きになった事も理由の一つだが、あの地獄の小学校時代に見た【名探偵コナン】が忘れられなかったからと言うのも、私がこの夢を目指した大きな理由だった。


アニメの世界は苦しい人の心を癒す。そんな力がある。

それは凄いことだと思ったから。


そして、もうひとつ。

アニメの終わりに流れるエンディング曲。

そこに流れるテロップに自分の名前を刻みたかった。

本当の母親に私はここで頑張ってますって、何処に行ってしまったかわからない母親に画面越しに伝えたかった。

だから私は声優になりたいと強く思う様になったのだ。


そして入学した高校。

私の入学する前に市大会を優勝したと言う演劇部。

ドキドキしながらその扉を叩いたが、入ってみて驚いた。

3年生はたった2人。2年生が5人。とても小さい演劇部だったから。

その後1年生が男子1人、女子は私含め5人が入部した。


またもうひとつ。この時私に初めて彼氏が出来た。

席順で座っていた、斜め後ろに座っていた男の子。

初め見た時からカッコいいなとは思っていたものの、男好きというレッテルを貼られるのが嫌で、無視をした。


なのに当時の担任はやたらと席順の席のまま、後ろの席とのグループを作って行動させる事が多く、いやでも私は隣と後計4人のチームで行動を余儀なくされた。

しかもなんの席順の呪いか、私の周りは男子ばかり……

女子は私だけのおかしなグループだったが、その中で、交流が多くなった私はその子に告白を受けることになった。


ただ出鼻を挫かれる様な形で、女子と交流ができなかった私は、クラスの女子とはなかなか馴染めなかった。

彼氏は出来たものの、この時に出来た女友達とはもう交流がないくらいの仲だったのだ。


『なんであんな子と付き合ってるの?』


当時彼氏がよく言われた言葉。

私は所謂〝陰〟と言われる部類の人間で、彼氏は完全な〝陽〟

そしてバスケットボール部だった彼氏。

運動神経抜群で1年生にしてレギュラー、エース格の彼。

周りからしたら、そんな彼が私を選んだ理由が分からなかったらしい。


私だって分からなかったくらいだから。

怖くて聞いたことは無かったけれど、今思えば少し聞いてみても良かったのかも知れない。


しかし正直別れる危機が無かったか、と言えば嘘になる。

付き合い始めて3ヶ月くらいで、別れたいと彼から口にされた。

その時ばかりは私も泣いたし、でも泣いていても何も変わらないと、私の気持ちだけ伝えて、あとは彼の気持ちを待った。

人間って不思議なものだが、離れていくと追いかけたくなるというのは本当なのだろう。


彼は『俺もやっぱり別れたくない』そう言った。

なんで別れたくなったのか、その理由を私は覚えていない。

ただ急に別れたいと告げられて、意味がわからなくて、別れたくないとだけ彼に告げた。

当時、LINEなんてそんなものはなかったからメールでそんなやりとりをした気がする。

追いメールなんてできるはずもなく、それから自分から連絡もしなかったのだ。


そんなこんなもあったが、私はその彼と高校の3年間ずっと付き合っていた。

当時の担任が揶揄するくらい有名なカップルで、仲が良かったと思う。


女友達はあまり出来なかったが、彼氏と殆どの時間を過ごしていた私。

寂しさを感じることもないまま高校を卒業することになった。

進路を選ぶ上で、里美と父親と口論をすることになったが、それは次の話で話そうと思う。


そして私は中学、高校と、それなりに充実した6年間を過ごし、高校卒業を迎えたのだった。

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