第4話 マンガ雑誌の一隅をきっと占めるあの枠と秋島先輩

■A

全体をデザインする作業と、個別コンテンツを作成する作業。

言うまでもなく後者が性にあってる伊草だけれど、それでもちょっとは全体のことも考える(ときがある)。


今回思い浮かべたのは週刊のマンガ雑誌。

ラインナップ、大事ですよね。あれは一個で大きな役割を担ってて、レーベルのカラーを示す見本としての機能はその一つ。

コース料理というよりもビュッフェのご用意品一覧みたいなもんだと捉えてて。

だからお店のスタンダードが沢山並ぶと同時に、口直しとか意外性の意味で変化球ならぬ魔球が混じってたりもする。

笛を吹くャガーさんとか小さい頃好きでしたが、今あの枠って何が入ってるんだろう……ともあれ。


あの枠大事ですよね。イメージとしては影です。本体の目立ち具合と比較して面積が少ないけどその分濃い色合いって感じの、ギュってなってる影。

多いと印象変わりすぎるから少しだけしか要らないんだけど、あるとないとではその誌全体の読書体験が大きく変わる。

自分ちの棚のその枠に何をチョイスするかでその人らしさも見える気がします。何巻分刺さってるかとかも。


で、最初に書いた通り仕切りより下請けの方が性に合ってるので、考えるわけなんです。


「この枠を作る……何なら自作代表作がほぼ全部この枠であるような“枠100%作者”ってどんな風なんだろう?」


って。



■B

秋島あきしま歪理わいり先輩は見る限り普通の(=良識的な)人だ。

用意したキャラをかぶってるだけなのかもしれないけど、それでも至極まともな方なんだろう、と思える。


なにせ『うるせぇ! 全く読まれないんなら俺が読む!』みたいな企画を立てて127本も集まったのに「できらぁ!」してしまった人である。

ごめん、ちょっとまともじゃない気もしてきた。

どう見ても読んでるんですよね、127本。だってそういう感想書いてるんだもん。参加した当事者の僕が言うんだから間違いない。で、事故の一つも起こさず皆から喜ばれている。どっかで馬脚ポロリするよ127本も感想書いたら。

「条件揃ったからやれただけダヨー」みたいなこと仰ってたけど、感想書いたことあるカクヨム民なら全休日がごそっとあったところで相当キツい試練なのはわかるはず。

ともあれそういう逸話が僕の中であるくらい、秋島先輩は真っ当なのである。


なのに、というと何だけれど、秋島先輩の名刺と代表作はどう見ても“そういう枠”である。


掌編気まぐれサラダ炒めつまりネタ帳のごった煮

https://kakuyomu.jp/works/16817139554872290763


これが名刺代わりとある“ネタ帳”。

ちょっと覗いてくればカラーはすぐわかる。

ね、“そういう感じ”でしょう?


ネタ帳という性質から見ても、(バリエーションというのはあるにせよ)秋島先輩の素に近い創作スタイルが魔球寄りなのは大体間違いない。


そして“素がそれ”なのはもちろん武器だ。

前回のタマキパイセンの時も書いたけれど、「大体の人にとって有限であるようなオプション装備をメイン弾数無限装備で持ってる」というのは才能だ。


最近読んだnoteの記事にも似たようなことが書いてあった。

いわく「創作者は好きなことを一生擦っていくのが一番いい」。

人間を人間が発掘するのにはどうしても時間がかかる。

だから、得意だけど大して好きじゃないところを意識するより「これなら一生擦ってられる」というところを得意に仕立てつつ作ってる方がいい。継続は発掘以外の面でも力になるから。と。

してみると、素で息を吸うように擦れるものが読者から“いいとこ”と面白がられるとは、一つ理想的な状態ではあるまいか。



■レビュー

そんなことをしみじみ思いながら、魅力が伝わるよう意識して秋島セパーイの代表作にレビューを書いた。


「フォロー欄に一つは確保しときたいタイプのアレ」

https://kakuyomu.jp/works/16817330653908530825/reviews/16818023213925521670

(『ころしてやりたい(副題略)』へのレビュー)


連想する漫画家先生が何人かいらっしゃるんですけど、こう、ジャンル的なのもあって列挙はしづらいんですよこう。

読んだら知ってる方には伝わると思います。伝われ……いや、やっぱ伝わらなくてもいい。いいってば!

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