第3話 笑いは難しい+確殺のイシオカ流
■A
笑いというやつは難しい。
難しいのに、ないと困る。ライトノベルの長編をやっていると、どうしても必要な瞬間が来る気がしている(文学・文芸ではそうはならないのかもしれないけれど……)。
その結果、“自分がギャグを書く時のノリ”というものが個別に定まってくる。読んだことがある笑いの中から、「これみたいな感じで……」という空気が定着してくる。それは文体が安定しだす過程に似ているんじゃないかと思う。
文体と同じだから、人それぞれでありつつも特徴がある。
オーソドックスな(ライトノベルの)文体が「軽くて読みやすい」点を共通項として持つように、作者さんごとの笑いにも共通項があるように感じる。
例えば、自分が思う共通項のひとつは「弾数に限度がある」こと。
恋愛もののシチュエーションを無限に素敵に繰り出せることが一つの特技であるように、毎話毎話読者の腹筋をえぐりに来る弾を撃てるのは間違いなく一つの才能だと思う。
そして笑いの才能は特別だ。
笑いは即効性があって、キャラクターや世界観への愛着がなくてもキく。
ツカミにおける万能の特効薬だ。
お話を書く多くの人にとって、それは欲しくて仕方がないシロモノであると思う。
■B
前フリが長くなったけれど、
のっけから惜しみなく繰り出される軽快なボケ&ツッコミは途絶えることを知らず、一人称での語り部の独白はもちろん、会話劇に入って本領を発揮しだした後のテンポは暴走機関車並みにライナーして時間を忘れさせてくれる。
ネット小説はどこでも読める反面、途中で読むのを中断せざるを得ないこともままあるけれど、続きから読む時再没入までの速度が速いのも、石岡先輩の作品の特徴だ。
そしてそうこうしている内にイシオカ流の奥義はきまる。
お話の中身――キャラクターや筋書き、設定の良さ――が笑いの影にひそんで滲み出てきて、気付いたら愛着が湧かされている。
(この中身がいいのも語れるところだけれど、それは読んで確かめてみてほしい)
この暗殺拳のようなプロセス、四コママンガのキャラに異様な馴染みを持ってしまう時の感触によく似ている。
使い手というか作者を選ぶので真似は出来ないけれど、この戦い方出来たら書くの結構楽しいだろうなあと前から思っている。人の腹筋を壊し、心臓を握るのは楽しいかい、イシオカパイセン……。
■レビュー
そんな石岡先輩にまつわってレビューを書いた。
「ただただ元気になれる、光の溺愛ものは好きですか?」
https://kakuyomu.jp/works/16817330661531504428/reviews/16817330669605823112
(『動物を愛する底辺令嬢は、気が付いたら婚姻届に署名していました』へのレビュー)
ジャンルに主成分の一つとして含まれる「元気になる」成分が笑いと相乗効果を発揮している、いい一本だなあと思う。
「「嫁入りからのセカンドライフ」中編コンテスト」中間選考突破もしている。さもありなんとなった伊草でありました。
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