有明の在り方Ⅱ

きうり

第1話

   1

 秋が来た。敷島瑠璃は、なぜか頻繁に近衛有明の家を尋ねるようになった。

「あんたも懲りないねえ、瑠璃ちゃん。よりによってアタシからテクニックを盗もうだなんて」

 瑠璃は、伝説の殺し屋として名高い近衛から、殺し屋としてのさまざまなテクニックを学びに来ているのだった。

「いいんです。私の愛用の銃を壊されたんですから、テクニックのひとつくらい盗まないと気が済みません」

「埋め合わせってわけか。ま、いいけどさ。畑仕事を手伝ってくれる分には助かる」

 近衛の殺し屋としての技術は、特殊技術【農法】を基礎としている。瑠璃は、近衛の家庭菜園を手伝うことでそれを学び取るつもりだった。

「【農法】を学ぶなら、そりゃアンタ、農法を身につけるのが一番さ」

 近衛はそう言ったが、瑠璃はネギの土寄せをしながら、いいように畑仕事の手伝いをさせられているような気がしないでもなかった。

「会社の方はどうしたんだい」

「長期休暇を取りました。とにかく今は武器がないからどうしようもないってことで。近衛さんのところに弟子入りするならヨシ! って、牟田口さんにも了承を得てます」

「なるほどね。……って瑠璃ちゃん、アンタ、アタシの弟子なの?」

 近衛は珍しく目を丸くしていた。瑠璃はしてやったりという気分で微笑んだ。

「そういうことで、ダメですか」

「いや、別にいいんだけど」

「けど?」

「なんか照れ臭いもんだね」

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