第9話 彌子の話

彦徳には妹がいる。


名前は「彌子」(みこ)。


彌子はいわゆる「視える側の人間」で、

何があっても一切物怖じしない、気の強い性格だ。


「彦兄、入るよ」


コンコンとドアを叩く音がした。

普通逆じゃないのか、と思いつつ彦徳は、


「なんか用?入れよ」


ドアが開き、彌子が何かを持って立っていた。


彦徳が座っていた椅子からドアまで4m位あるので、

一瞬何を持っているのか分からなかったが、数秒して

ゾッとした。


首のない人形だった。

服装が着物の様に見えるが、日本人形だったものか?


「この子が彦兄の部屋で寝たいって」


彌子はそう言って、ベッドの枕元にその人形を座らせ、

部屋を出て行った。


彦徳は啞然としていたが、彌子の行動の中では普通の部類に入るので、

ただただ見ていることしかできなかった。


静まり返った部屋で人形が微かに動いた様な気がした。

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