第5話 常連さん
彦徳はバイト中。
コンビニで早朝の2時間だけ働いている。
これが終われば登校し、朝練だ。
夜勤の三浦さんと軽く引き継ぎを行い、
ホットスナック等を作ったり、レジ対応を
したりする。
「24番、2つ頂戴」
背が高く茶髪で作業着を着た、常連さんだ。
この時間はトラックドライバーの方が多く、
タバコやおにぎり、菓子パン等がよく売れる。
「お2つで980円です」
ポケットから千円札を取り出し、レジに置いた。
「今日雨降るから、入り口にマット出しておいた方がいいよ」
おつりの20円を渡す際に、常連さんが言った。
「今日降るんですか、有難うございます」
「結構降りそうだから気をつけて」
おつりとタバコ2箱をポケットに入れながら、
常連さんはそう言って帰っていった。
ほぼ毎日来てくれるこの常連さんは、天気を教えてくれるのだが、100%的中する。
例え天気予報で降水確率が0%でも。
30分程した頃、そこそこ強めに雨が降り出した。
マットは既に出してあるのだが、なぜこんなに的中できるのか、彦徳は不思議だった。
バイトを終えて着替えていると、店長が防犯カメラを見ながら、
「◯◯くん、マット出してくれたみたいだけど、
なんで?」
「いや雨降ってきたんで」
店長はふふっと笑いながら、
「こんな晴れてるのに?」
防犯カメラには雨が降ってる様子も、降っていた様子もない。地面も乾いている。
「すみません、寝ぼけてたかもです」
彦徳は着替えを一旦止めて、マットをしまい、
タイムカードを切り、学校へ向かった。
次の日以降、その常連さんは一切来なくなった。
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