遺物の守護者
おにぎりサン
第1話
ルーカスは一人酒場で飲んでいた。その様子からは人生の行き場を失った流浪者に見えるだろう。だがその実、ルーカスの父親はイェシュシア教国の第一書記官であり、母親は隣国であるクルダン王国の侯爵家から嫁いできている。本来ならルーカスは酒場で飲んだくれていていいような存在ではない。
なぜこのようになってしまったのかというと、自分の跡を継がせようと厳しく教育する父と異国の地で唯一の肉親である我が子を大切にすべく甘やかしてきた母との板挟みが大きいであろう。ルーカスの教育方針を巡って両親が対立することでルーカスは幼い頃から家では形容しがたい居づらさを覚えていた。成長するにつれ居心地の悪い家から出ようと街へ遊びに行き、悪友たちとつるみ、その責任を両親が互いに押し付け合うことでさらにルーカスは家での居心地の悪さに苦しんだ。徐々に家ではなく外で夜を明かすようになった。そして家へ帰らなくなり、持っていた金が尽きた途端今までつるんでいた悪友たちはルーカスから離れた。
それ以降のルーカスは散々であった。生きるために金を手に入れようにもまともな職にありつけず、かといって家に行って無心をすることもルーカスはしたくなかった。そしてルーカスは悩んだ末に盗みをすることにした。初めの頃は盗んだことがすぐにバレて殴る蹴るは当たり前にされた。逆に持ち物全て取られてしまうことも少なくはなかった。だが一ヶ月も経たないうちに慣れてきたのか盗みがバレることはほとんどなくなった。しかしルーカスは盗みで得た物のほとんどを賭けに出して負けてしまい最終的に取り分はほとんどなかった。
金がないから盗み、盗んだ物で賭けをし、負けて金がなくなるからまた盗むをずっと繰り返していくうちに家を出る前はそれなりについていた肉も落ちてきて痩せこけてしまっている。
ルーカスは酒場で酒を飲みながらぼんやりと考える。自分はどうしてこんなにも恵まれないのであろうか。周りの人間が全員で手を組んで自分を貶めようとしているのではないか。そのようなことを考えているうちに支配者層に対する怒りへと変わっていった。ルーカス自身の出自はその支配者層であったのにも関わらずである。そして一つの考えへと至る。
大聖堂から何か盗み出そう
遺物の守護者 おにぎりサン @onigiri070412
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。遺物の守護者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます