第82話 伽藍の悪魔 6
あとがきの文面を見て私は、「そういうことか!」と叫ぶ。この
そう、これが答えなのだ。空っぽの私たちの作者が
なぜなら私の書いた文章中で、
「変わらないじゃないかよぉ……」と、私の口から力無く言葉が漏れ、項垂れる。そんな項垂れて視線を落とした私の目に、
この後で私は苦痛の中、解体され、また同じように理不尽な推理ゲームをさせられ──
あはァ?
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」と私は叫んで、階下へ続く階段へ向かって駆け出した。今回は一度目とは違う。
そんなのは無理だ。狂ってしまう。例え死んで戻ったとしても、心が死んで元になど戻れる気がしない。捕まったら心が死ぬ。もう推理どころではなくなってしまう──と、無我夢中で駆け出した私は、予定調和の如く階段を転げ落ちた。そのまま踊り場の壁に激突し、もうどこが痛いのかも分からない程に体が痛んで、くぐもった嗚咽を漏らす。
逃げるために上体を起こそうにも、四肢を動かそうとすると全身に激痛が走る。これは詰んだな──と階上に視線をやると、
なんで……
なんでぇェぇぇ……
なんでェぇええぇぇエェ! 落としたァぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!! のぉぉおォォぉぉオぉぉオぉぉぉおォォおぉぉォォォぉぉおぉぉぉォオぉぉぉおォォおぉぉォォォぉぉおぉぉぉォオッ!!
凄まじい
やはり今の
「……かはっ……はっ……はぁ……」と、私は全身を襲う痛みに耐えながら立ち上がり、「それだけじゃ足りないってことなんだよな……」と、踊り場から階下へ向けて歩き出す。
死ぬ。
私は壁に凭れ掛かりながらずるずると階段を下り、「不自然だ不自然……
それでは違うのだ。
そもそもなぜ、従姉は母の「きょうか」という名前をペンネームにしたのか。空っぽの私たちのあとがきには「私の
そのまま私は「名前……名前……ペンネーム……
とりあえずノートパソコンを開き、これまで私が書いてきた、書かされてきた文章に目を通す。そうして「名前……名前……」と呟きながら目を通すことで、不自然とまではいかないが、よくよく考えて不自然な事柄が目に留まる。それは人物名のルビ振りについてだ。
私はこれに気付いた瞬間、ルビの語源が示すとおり、人物名に振られた文字が
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