第81話 伽藍の悪魔 5
この痛みは幻覚の類だと分かってはいるが──目と小指、そして今しがた千切り取られた耳の痛みに、私は悶絶する。口からは「ふぐぅ」と情けない声が漏れ、心が折れる。
そんな私を嘲るように
おそらくこの幻覚は私が死ぬ事で、私が
執拗で、陰湿で、徹底的な悪意。人が苦しむ姿を眺め、にたにたと笑う悪魔。このまま二度目の拷問を受けたら狂ってしまう──と、私は病室内に残されたノートパソコンに向かって駆け出し、その手の内に拾い上げた。その際ノートパソコンの隣に落ちていた「空っぽの私たち」が目に入り、それも拾う。拾いながらそういえば──と思い出す。
「この中にヒントか答えがあ──あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!!」
本を手に持ちながら思案していると、
とりあえずこの場から離れなければ──と、先程開け放った病室の扉へと駆け出し、そのまま廊下へと転がり出る。廊下に出てみれば、人が一人もいない。廊下に面した窓の外も、黒一色で染め上げられている。やはりこれは
私は喉元から湧き上がる悲鳴を必死に堪えて突き当たりを左に折れ、無我夢中で走る。ただ、ここが
とにかく早く──と、ぱらぱらと頁を捲った私は衝撃を受ける。しっかり目を通しているわけではないのだが、この小説が
おそらくこれは
「これで何が分かるっていうんだよ
私はまたも失禁した。怖いのも痛いのももう嫌だ。体がぶるぶると震える。そんな中、空っぽの私たちの結末の先──あとがきの頁の文面が目に留まった。
私という存在を初めて頼ってくれたあなたと共に──
私の
そう──
あなたの中で狂おしい程に強く香りたいという思いを込め、作品と共にあなたへ捧ぐ──
という文面が。
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