第3話東京爆破テロ

「あっ! こいつは、さっきのハゲオヤジじゃねーか!」


そのホームページによると、その男の名前は『羽毛田尊南はげたそんなん』といった。

「【はげた】って、なんてぴったりな名前なんだ」


「まるで、生まれた時から既にハゲる事が決まっていた様な名前ね」


「そうか、あいつテロリストだったのか……どうりでしてると思ったよ。よし、そうと分かれば徹底的に潰してやる!」


シチローはよっぽど羽毛田に恨みがあるのか、この依頼に特別気合が入っていた。


「でもシチロー、この人が爆弾仕掛けるってわかっているならさっさと捕まえちゃえばいいんじゃないの?」


そんなひろきの素朴な疑問もある意味的を得たものだったが、シチローはその疑問にこう答えた。


「仮に今、警察がやつらを捕らえたとしてもまだ奴らはビルを爆破していない。やはり逮捕するには現場を押さえて動かぬ証拠を突きつけなければならないんだ」


「そうなんだ~。じゃあ、爆弾を仕掛けた時に捕まえなきゃだね」


「でも、犯行の日時なんてどうやって調べるの?」


「さすがにそこまではホームページに書いてないしね」


確かに犯行の日時をホームページに載せれば、どうぞ捕まえて下さいと言っている様なものである。尊南アルカイナがそんなヘマをする訳がない。


「う~ん、何か犯行の日時を調べる方法はないかな……」


ホームページには勿論そんな事は載っていない。シチローは、無駄とは思いながらも東京都から来た書類を端から目を皿のようにして眺め始めた。


「ん、これは何だ?」


それは、今回のテロ騒ぎとはあまり関係は無いと思われる新宿都庁近辺の防犯情報だった。


「何々、歌舞伎町キャバクラ”ラビット”にて怪しい三人組が度々目撃されている……服装は迷彩柄の上下にサングラスか……」


確かに怪しい。迷彩柄の上下にサングラスなんてまるで軍人、そうでなければテロリスト……テロリスト?


確信とまでは言わないがこれしか情報が無い以上調べてみる価値はある。


シチローの探偵としての勘が、そう告げていた。


「よし、お三方! 仕事だ。これからキャバクラ”ラビット”へ潜入捜査に行ってもらうから!」


「潜入捜査?」



♢♢♢



 新宿歌舞伎町のとある雑居ビルの中にあるキャバクラ【ラビット】


てぃーだと子豚そしてひろきの三人はアルカイナのメンバーらしき男達が目撃されたというこの店に『新人キャバ嬢』として潜入していた。


「君達が今日入った三人だね。僕が店長の山田といいます。ここは気楽な店だから、あまり緊張しないで楽しくやってよ」


三人共今日からの出勤ということで店長から、この店の決まり事について一通りレクチャーを受けていた。


その中で、三人はこの店ならではの特別なを店長から聞かされる。


「ここでは、過去に退職した女の子のを新しい女の子が引き継ぐ決まりになっているんだ。この中から好きな名前を選んで今日から名乗ってよ」


そう言って店長は名前の書かれたノートをてぃーだに手渡した。


店長の山田から渡されたそのノートをてぃーだが開くと、両隣の子豚とひろきは顔を寄せてそこに書かれている名前に目を集めた。


「好きなの選んでって、三つしかないじゃない……」


「私、ここだけは絶対譲れないわ!」


「あたしだって、ゆずれないもん!」


三つのを巡って、各々はどうしても譲れない訳があるらしい。


「それじゃあ、公平にじゃんけんで決めましょうか」



♢♢♢



「さあ、名前が決まったら、早速お客さんについてくれないかな」


最初のテーブルにはてぃーだが付いた。


「初めまして、アタシ紫織しおりって言います♪」


次のテーブルにはひろき。


「アタシは彩香あやかっていうの。ヨロシクね♪」


その様子を見ていた三つ目のテーブルの客が、感心したように呟いた。


「へえ、この店の女の子はかわいい娘ばかりだなぁ。名前もかわいいし……」


「それで、君の名前はなんていうの?」


客の一人が三番目についた子豚に向かって尋ねた。







「私は……って言いますだ」


「よね・・・・・・」


そのやり取りを聞いていた店長が、腕組みをしながら辛辣な表情で呟いた。


「あの娘、じゃんけんに負けたな……」




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