第2話大きな依頼

 東京都から森永探偵事務所へと送られてきた郵便物。その書類には、あるテロリスト集団が計画している『東京都内の施設の破壊工作』を未然に防いでほしいという、正式な依頼が書かれていた。


「テロリストの破壊工作だって!」


「破壊工作って何よ」


「まぁ、文面通りに解釈するとすれば爆破だろうな。爆弾を仕掛けてドカーン!」


と、両方の掌を広げて爆発表現するシチローに、子豚が疑問を投げかける。


「でもそんな危険な仕事、東京都はどうして警察じゃなくウチなんかに依頼して来たのかしら」


「それはだね!」


シチローはまるで、 のようにドヤ顔でその疑問に答えた。


「今の日本における探偵の概念は浮気調査に人探し、あるいは恐喝や詐欺まがいの犯罪ぎりぎりの行為など……とても自信を持って公共に示せる仕事内容ではない。けれど、この森永探偵事務所は違う。法律を遵守し、公共の福祉に則って正しく依頼を遂行する。


我々の行動の模範となるものは、あの正統派のミステリー小説にも登場するシャーロックホームズや金田一耕助そして明智小五郎といったレジェンド達なんだよ! だからウチに依頼が来るのは、まぁ当然の結果だと言えるね」


「明智小五郎だって……」


「明智小五郎というよりは『どケチ小五郎』だけどね、シチローの場合」


「あたし達の時給もそろそろ上げて欲しいんですけど」


「うぅ……」


 とんだヤブヘビである。どうして依頼がここに来るのかという話がいつの間にかエージェントたちの給料の話にすり替わり、シチローは目を泳がせて聞こえないふりをした。


「え~、話を元に戻そう。東京都から来たこの書類によると、東京都知事宛にあるテロリストから『数日中に六本木ヒルズのビルに爆弾を仕掛け爆発させる』という犯行声明が送られて来たそうなんだ」


「テロリストっていうと、【イスラム国】とか?」


「イスラム国って中東のテロリストでしょ? なんで六本木ヒルズが狙われる訳?」


「いや、そのテロリストっていうのはイスラム国ではない。この資料によると日本の【尊南そんなんアルカイナ】というテロリストらしい」


ダジャレかよ……


「尊南アルカイナなんて、聞いたことがないわよ」


子豚が言うように、尊南アルカイナなどという名前は初めて聞く名前だった。だいいちこの平和な日本にテロリストが存在する事が、シチローにはいまいちピンとこなかった。


「ティダ、そこにあるPCで【尊南アルカイナ】をググってみてくれない?」

わからない事は、とらえずググってみる。いい時代になったものである。


てぃーだがPCの検索エンジンで検索を始めると、すぐにテロリスト集団【尊南アルカイナ】のホームページに辿り着いた。



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国内テロリスト集団

ようこそ尊南アルカイナへ

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「こんなのよく総務省が黙ってるわね」


「まぁ、テロリストにも表現の自由はあるからね」


 そのホームページには、よくある会社概要のホームページのように尊南アルカイナの概要、目的、規模、そしてそのメンバー構成(写真)までもが載っていた。そして、その代表者の顔写真を見たシチローが、驚いたように素っ頓狂な声を上げた!


「うそっ! マジかよ、これっ!」


「どうしたの、シチロー」


「ティダ、ちょっとこれ見てよ!」


「これって……あ、」


そこには、忘れもしないあのが掲載されていた。

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