銀堂家五代目当主に成った漢

 ここからは生き証人達から聞いた話が多くなる。無論、自分も含めて、


 常和の次ときたら平陽へいようの時代。その三年に『五代目』を決める家督戦争が行われた。当時は四目も含めた日穂淀ニホルディン全体が「まだまだイケるイケる」とバブルに身を任せ、若者がディスコで踊り狂っていた時期だ。


 その時代の空気感のせいか、皆やる事が型が外れていた。


 歴史から見ればバブル経済後期とはいえ、当事者からすれば終わらない好景気。四代目である東雲慎吾は、再びの体裁を返すため銀堂家の一族の中から四人候補を挙げて、「この中で最も皆を納得させる方法で家の門を開けた者に当主の座を明け渡す」と約束し、家督争いを盛り上げる遊戯を提示した。


 はしゃいだ三名の候補者は、己の贅と力を尽くし、ある者は大砲を持ってきて派手に門をぶち破る西洋かぶれもいれば、特注で男性の象徴を模した貫きで門を破壊する時のコント舞台のような方法を取る者もいた。そんな手間をしなくていいと、梯子を使って塀を登り、閂を外して門を開ける合理主義もつまらないなりにも存在した。


 そんな中、次の当主と成る『茂也しげや』は妻を娶るため数十億の結納金を携え、そこに追加して彼女の両親との手切れ金も支払い、無一文になった足で家督戦争が行われている本家に向かっていた。


 このままでは間に合わないと、お金を運ぶのを手伝っていたのちの郎党二人は焦っていたが、その妻が賭けてくれた金額で頭のネジが吹っ飛んでしまったのか、停車していたバスの中に入って乗客を降ろし、運転手を恫喝。彼女の対応に慣れている夫はその発想に便乗して「責任は俺が取るから」と郎党と妻、運転手を乗せた大型車両はその条件である門を突き破り、敷地内に侵入。


 大砲を持ってきていた人間が当主に成りかけたが、五代目となる親父こと銀堂茂也が「鉄道会社からの賠償金とこの女の責任のケツを拭けるのは誰かな?」と澄ました顔をして、莫大な借金ぶら下げて登場するものだから一族全員から「お前しかいないだろうがこの大莫迦者おおばかものが!」と頭抱えられながら満場一致の指名された結果、当主の座に就いた茂也は『銀堂家五代目当主、銀堂茂也』と成った。


 このあとの出来事は人を紹介するたびに話していこうと思うから一部割愛して、自分と親父の関係性について触れてゆく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る