世界にケンカを売った日
「一体何をしてくれているんじゃ!!国際問題じゃぞ!」と老貴族がブチギレる声。
盗人猛々しいとはこの事かと思いながらその事態を止めた漢は相手を見た。
そいつは当時上流貴族としてその国の貿易を支えるトップで、敵に回せば世界的企業でさえ潰せる権力を持つ者。ただの地元の金貸しと比べたら、裁縫針とロングソードくらい規模も格も違う。
その者に対し銀堂家当主は「一体何が起きたと思います?」と逆に質問。
老貴族は「わしの可愛い子供たちに暴力を振るった!」と否定しようがない台詞を吐かれたが「違うでしょ。あんたんちの大の大人がうちの小さな家内に手をだして、無様に投げ飛ばされたんだろうが」と先方の母国語で反論。
トップはその発言に色々と指摘したそうだが、親父が「では、うちの家内が地元で暴走機関やら歩く火薬庫なんて呼ばれていることはご存知で?」と質問。
「それが何だっていうんだ!」と次の怒りのマグマを煮詰めながらものを言う。
それを見て二人の人間がため息をつきながらその貴族に向けて指摘する。
「おいおい、そんなことも知らずに彼女に手を出したの?結構有名だぜ」
「それに、この場の人間の何人かにもそのことが伝わっているはずですが」と他の諸国の人間に質問し、言質を取った。
親父はその二人の行動を見て「天音、御剣、何考えているんだ」と問うたところ。
「あの娘には億の投資をしているんだ。こんなところでチャラにできるかよ」と天音氏は勝利を確信してニヤつきながらエールを送り。
御剣氏も「その件もあるが、あの上流貴族にお灸をすえてやろうと思ってな」と相手に物怖じもしない態度を見せ付けた。
何故この二人が助け入ってきたか。それもそのはず、彼等は叭袈牢の人間であると同時に世界各地にも拠点を置く自国の名家。銀堂家をこの場に来れたのも彼らとの親交があってのおかげだ。
トップの老貴族はその状況を見て、何か罠に嵌められかけているのかと察し、思い返した時にその罠に気付いたらしくギクッと身体を震わせ、押し黙った。背後で何故トップは反論しないとシビレを切らしたのかナンバー2が代わりに「貴様らが暴力を振るったことには変わらないだろ」と怒り出す。
「よせ!」とトップは止めに入ったが「腰抜けが」とその制止を一蹴し、我々は被害者だと弁明する。
銀堂家側および自国側は、折角逃げるチャンスを与えたのに掛かってしまったその上流貴族たちを憐れみながら刑を執行する直前。
「いい加減にしてください!!」と老貴族と同じ母国語で怒りを露わにする男が一人、続けて「これ以上の母国への恥さらしをやめてもらおう!」と声をあら上げる。
その人物はレズサ・リバティと名乗る中流階級の貴族の男で、後に国からも帰ってきて欲しいと懇願されるほどの貿易商の人間となり、銀堂家の支援部門で大口取引相手となる人物この件の重要人物だ。もし、母国側である彼が参加しなければ、その問題点に気付かずに単純な自国とその母国との国際問題になっていた。
陰ながら良い感じに言えば命の恩人だ。
その後「文化だ礼儀だ言っていたが」と相手の揚げ足を取り、小指を骨折させたことに言及。
「小指は母国に取っては女を意味しますが、そちらの国では約束事を意味します。それに小指が使えなくなると力が半分になる」と前置きしてから「私も同じことをされれば、小指を折り相手の弱体化を図りますね。もっとも、情報弱者な上流貴族様にはいらない手段かもしれませんが」と煽り散らかし、そこでナンバー2その煽りに乗ってしまい。
「裏切者がイケシャーシャー」と次の暴言をいう前に「もうやめてくれ!!すまなかった」と、トップが頭を下げ、その行動にナンバー2は驚き「何でですか!!」と喚いていた。
それもそうだ。上流階級でありながら小さな女に負けて、知らない、分からないとガキのように駄々こねるまくったが挙句ことを正そうとする人間を潰しにかかっているんだ。とてもじゃないが、紳士の国の代表としてはあるまじき国への凌辱行為。それに気づかないナンバー2を見て周りの輩も内心ため息ものだ。
意味がわからないと暴走したナンバー2は部下を呼んで、自国側についた連中どもをボコボコにしろと命令したが、ボコボコにされたのは部下の方で結果的に、小さな針による工作で自国の強さを示すことになった。
その後、リバティ氏は「彼の折れた指の代わりに、私の指を持ってあなたと交渉したい」と銀堂家との取引をお願いし、親父は調子の良い奴だなと思いながらも「その指を折らぬようお付き合いを頼む」と了承。老貴族たちの行動は目に余るということで、国外追放され一族は路頭に迷うことなった。
こうして『パンジャガール騒動』は一旦の幕を下ろし、この八役と行動により男性優位の社会に対してメスを入れる結果となり、女性でも勇気を出して前に出れば社会に影響を与えることが出来ると希望と畏敬の念を与え、その行動を称えてパンジャガールはその象徴として神格化されることになった。
母さんはそんな大きなことをした憶えないんだけどと戸惑いつつも、親父から与えられた力は使ってなんぼだと納得させて、多少は自信につながったようで、主要メンバーの一人でも同伴していれば、虚勢を張りながらも喋ることが出来るようになったそう。
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