異端児たちの未来構想
お金の立ち位置
「最初に聞くが、お金を何だと思う?」
「お金はお金でしょ。物やサービスに引き換える力を持った」
この回答に間違いはない。けれど、正解の見方というのはひとつだけではない。志保はそう答えたが、小鞠は「人やエネルギーに変化を与えることができるツールでもあると思うわ」と、もうひとつの側面の正解を出す。他にも「金って、ただたんに紙切れや金属片に謎の価値を付けて取引できるようにした理不尽なものだ」と小鞠の友人が言ったり、「物々交換が面倒になったから作られた概念」と様々な意見が出た。
その中でキドは「お金とは、物事を分かりやすく価値付する手段だと思います!」と結構本質の突いた回答をしてきて、他のみんなもそれには納得している様子。
「どれも正解だが、ここに出てきたすべてはとある一点集約される。それは何だと思う?」ふたたび、問い掛けてみんなは唸るばかりで結論が出ない。
見かねて自分はここで気付きを与えることにした。
「ここで学ぶべきことは、案外そのものについてよく分かってなくとも使っているという事と、物事の始まりというものは意外と知らないという事だ。いってみれば、自分たちは携帯の構造が解ってなくとも普通に使っているし、その発明をした人物が誰かも意外と知らないものなんだ。くわえて、その始まりの組織はなくなっていても遺志はどこかの企業で継がれている」
「まさにそれってコンテナ革命の話しと同じね。運搬コストを十分の一以下にしたコンテナ事業の始まりの会社も今となっては跡形もなくなっているけど、確かにその技術は現代社会を支えているしね」と小鞠が補足。
「へえ~コンテナにそいんな歴史があったんだ。あ!そうかだから外国の品が安いんだね、国産のものよりも」と指先を揃えながらパンと叩き感動する志保。
「話を戻すが、そんなこともできるお金がどうやって誕生したか分かるか?」
「そりゃ、さっきもいってたけど、物々交換をするのが面倒だったからそれを引き換える物を仲介にしたんでしょ」と志保は絵に描いたような回答をしてきた。
「それも間違いないが、もっと初歩的なことだ」
「ん?待てよ。そうか!権利書だ!!」とキドはこれだと言わんばかりに指を鳴らし、その回答を叩きつける。
「さすがだ。正解だ。お金とは権利書なんだよ」
「どういう事?」志保は訝しそうにキドと自分を睨む。
「言われてみればそうね!」と小鞠も分かった様子。
「え?」と戸惑っている志保を中心にことの本質を示した。
「教科書にも載る話としてよく野菜と魚を交換する話があるが、いくら魚と同じ重さの大根を持ってきても同じ価値のものにはならない。魚よりかは日持ちするだろうが、百キロ持ってこられても困る。ならば、お金、つまり専門用語で約束手形というのだがそれを発行して取引した方が、必要なときにその手形を利用して必要な分だけ取引ができる。簿記の世界では受取手形は資産、支払手形は負債と現金の貸し借りと同じ構造を持っているから、機能としては間違っていない。したがって、この約束という権利を万能化したのがお金という事だ」
「面白い切り口ねえ。正しいとか間違いはともかく腑に落ちた」と志保は理解。
「いってみれば、権利の取引がお金の起源と師匠は言いたいんだろ。だったら、ご厚意で何かをすることは経済的に見てクズの行為ってことにならないか」と、これまた痛いところを突かれた。
「まったく、お前って奴は物事の悪い本質を突っつくのが上手いな。でも、そこがミソなんだよ。この国は他の国と比べてもサービス精神が旺盛だ。タダで手お経されているものも多い。代表的なのは水だ。場所によってはコップ一杯の水が千円だたりするからな。安くても百から三百円が相場だ。海外のは硬水だし不味いし」と自分は文句をたりながら話を続けた。
「もっとも、お金の真実として分断と統合の間で多くの金が行き交うもので、人類は自然と社会という物差しで切り分けその間にお金を生じさせて、やがて社会と地域と分け、地域と家族、家族と兄弟、個人と分けていくことで多くの資本を作ってきた歴史がある。そして、革命なんかが起きろことで統合しそのときにも多くの資本が生まれた。これを一世紀ほどかけて繰り返し現在も続いている。これが資本主義の社会法則であり、勉強しないと理解できない暗部だ。悪くいえば、お金を稼ぐという競争や戦争をしない奴は、さっきキドの言った通りクズ認定されるという事だ。ここら辺を語たらさすがに長すぎるから一度切るが、資本主義の本質として覚えておいてほしいところだ」と、重要さをアピールした。
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