帰ってきた変態紳士
その後メンバーたちは反省し、三日後キドが返って来たときに謝罪の嵐になった。
「ごめんなさい。無理させて」と志保は頭を下げ。
「やっぱり、いなくなっては困る男だ。これからも頑張ってくれ」と小鞠は生意気に帰ってきたことを喜び。
「悪りぃ。真の無能は俺だった。赦してくれ」と、今までの悪業を許してくれと創英は懇願した。
それらの様子を見てキドは「一体、全体、何の話だ?」と困惑の表情を浮かべ、教室の外にいる自分に目線を向け、この状況を諫めてくれと念を送ってくる。
「自分で何とかしろ」とその念を念で突っぱねて、己で解決するよう促した。
「あたしは事務作業ができるから困ったときは、言ってね」
「何かアイデアがと意見があったら、うちとか部下に相談してあげてくれ。喜んで協力してくれるよ」
「無理な食材でも遠慮なく相談してくれ、可能な限り探してきてやるし調理だってしてやる!」
などなど各々のできる事をあらためて伝え、キドへの忠誠を示してくる様子を見て、本人は耳の後ろを掻き「みんな、さっきから何を当たり前の作業のことを言っている。まさかだが、俺がみんなのできる事を把握してないとでも思っていたのか」と心外だなと言わんばかりを半分、まあ、そう思われても仕方ないかと思う半分の微妙な顔をして皆に問おう。
「それは……」と代表して創英が口を濁す。
「はあ……でも、心配かけた事には間違いなさそうだ。師匠に何を言われたかは知らないが、みんなができると信頼し過信していたことは事実だ。調子に乗って、他分野にもチョッカイだしてしまった部分もあったし、そのせいで余計な齟齬を出したみたいだしそれは済まない」と、キドは頭を下げて謝罪。
「そんな、あたしたちこそ、頼り切って職務怠慢したことは間違いないから気にしないで」と今度は志保が代表して謝った。
「そうか。なら良かった」と頭を上げて、キドは場の空気を一気に変える一言を放った。
「それで、いま進行状況はどうなっている。できれば、分野別の資料が欲しいのだが……」と要請。
その声に「はいはい、用意した甲斐があった」と小鞠はA4用紙を五枚ほどキドに手渡し読ませた。
中身をパラパラめくり三十秒後には「志保。客人の料理リストを作ってくれ。創英は軽くでも良いから調理可能かどうか審査してくれ。小鞠は――」と皆に指示を出し、目標を手に入れた秀才と天才たちは、よっしゃ!と言葉にならないやる気をみなぎらせる。キドが寝込む前、いや、始めたときよりも活気のある状態になった。
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