回らない頭と歯車

「一体どうゆうことだ!誰がこれをやってたんだ!」

「知らない」

「確かそれって、創英が担当していたとこじゃない?食料系なんだから」

「小鞠、食品系だからって全部やっているわけじゃないんだぞ!」


 企画が通って三カ月。教室は言い争う物々しい状況。そこには言い出しっぺであるキドの姿が見当たらない。


 それもそのはずだ。キドはこの一週間前に風邪で寝込んでしまい。この時は療養中。言ってみれば、自分が想定していた最悪の状況だ。


「どうしたんだ。急に歯車が合わなくなったような顔して」と自分は飄々とした口調でその状況に煽りを入れた。


「分かってんならどうにかしてくれよ!」と創英はブチギレていった。


「そうか。じゃあ、いま自分が何を考えているか分かるか」と創英に質問。


「そんなもん分かるわけないだろうが!!トンチだったら聞いている暇はねえぞ!」と胸ぐらを掴み、牙をむきだして威嚇する。


 自分は視線をズラし大きなため息をついた。


「そうか。お前はそれだけ何も考えていなかったってワケだな」


「はあ?何を言って……」と動揺で少し頭が冷えたのか手を解き、自分を下ろす。


 自分は軽く服のシワを整え小鞠に尋ねた。


「おい、コモリ。お前だったらどう答える?」


「それって、あえて下の方を言った方が良い?」

「それで良い」


 小鞠は下唇に人差し指を当て「そうねえ。シンプルに何考えているの?って訊くかな」と淡々と答える。


「じゃあ、訳あり(仮名)。お前だったら?」

「……僕なら、暇しているんだったら手を貸してとかいうかな……」

「ありがとう」


「それじゃあ、シフォ。お前はどう答える?」

 

 ネタを振られた志保は落ち込んだ表情をして三秒後に「あたしはこれができる。だからやるべきことを教えて……だね。あまりにもあたしも迂闊だった」と反省の色を見せる。


「さすがだ。帰ってきたらそうしてくれ」


「おい、いったい何が言いたい⁉」と、創英は迫って訊いてくる。


「本当……ソースケ。お前は汚れ役が好きだな」

「何?」


 ふたたびため息をつきながら説明した。


「良いか。お前たちは皆、キドにおんぶにだっこされながら、何をやれば良い、それやりたくないと駄々こねて、挙句の果てに役立たずだ無能だと騒いでなかったか?」


「…………⁉」


「少しは言語化されて、問題点に気付いたか。キドは一見のほほんとしたただのアホに見えて実際は、縁の下の力持ち。みんなが疲れすぎないように作業を配分し、残ったものは全部引き受けていた。自らが言い出したことだからと、抱え込んでそのままその重圧に耐えきれずに潰れてしまった。その重さも能力が下がっていることも知らずにをうじうじ言うクセに、文句は一丁前。溜まったものじゃない」


「それは……」と、創英を代表として、皆は落ち込む。


「でも、こういった事態は起きるようになっている。なぜかって、相手を信用し過ぎた結果、気付けば中心人物に負担がのしかかるようになるからだ。そうなると、信頼を裏切ってはならないと、頑張りすぎて病気になってしまい。いなくなった途端にこのていたらく。仕方ないとはいえ、反省はして欲しものだ」


「動力源に負担を掛けていたことは分かりました。だがしかし、お互いが同時に回ったら変な軋轢や齟齬が生まれる可能性が出る。指示を待つ方が問題を出さない」と創英は反論。


 言ってみればひとつの動力源で回せばおかしくならないという考えだ。だが、その考えにひとつ喝を入れることにした。


「ソースケ、それは大きな間違いだ。車一台でベルトコンベアを回すやつがどこにいる。ベルトコンベアはベルトコンベアのモーターで回すべきだ。指の間に嵌めて、同じ方向に回してみろ。その手はどうなる」


「どうなるって。あ、動かない」


「この組織で言えば、調理は料理人の仕事だし、システム管理はエンジニアに任せるほうが適切だ。動力源どうして回すと、お前の今の手のように組織は動けなくなる。それにそんなことを続ければいつか」


「機械は壊れる」

「その通り、それが今回起きた事態の本質だ」

「…………」


「一般的タブーを避けずに言えば、全員が同じ方向に向いている組織は外ずらが良いだけのクソ組織だ。もし一人でも動かなくなったら総崩れだ。これ前に見えてよくある話だ」


「それって言ってみれば、優秀な人が多いとそうなるんだよね。動力源クラスが多いと」と小鞠は付け足し。


「その通りだ。その場合幹部クラスの人間がその動力源クラスの人間に指示待ちとか人間とか窓際人を差し向けて仕事を回させるのが有効とされている。もっとも、数パーセントの企業しかそれが解かっていないけどな」


「そうだったんだ。なんて愚かなことをしていたんだ」ソースケは自分の行いを反省をし始めた。


「知っていても確認のつもりで行っておく、トップはトップでいつ歯車を外しいつ嵌めて回すかというシンプルで不自由な要素を持ち、幹部は幹部で外すタイミング回すタイミング、ただの歯車になる自由な対応を求められる。これだけでも識っとけば、上の連中がなぜわざとサボっている奴か理解できる。もちろん中には話にならない無能もいるけどな」


「会社を経営するのってやっぱり難しいですね」とシフォを中心にして落ち込む、メンバー達。


「一日で理解しろとは言わない。次どうするかはあの変態が帰ってきた後でも遅くないその時にどうするか。そこが重要なターニングポイントになる。上手く切り抜けれっることを期待している。以上!俺は外でタピオカミルクティー飲んでくるから、後は好きにしたら良いよ。そんじゃ」


 自分はそういって教室を後にした。


 あの変態が帰ってくるまでメンバーたちは何をやっていたか。それは副社長の著書で確認してもらえるとこっちが色々とラクができる。


 影の動力源とただの歯車の立場として。

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