しわ寄せはどこにでも発生するもの
季節は巡り、これもまた気付いたころには入学して一人と半年の時が過ぎていた。前述した時点でも充分色々あったのだが、一年の夏休み以降もイベントフラグが立ちまくりだった。
その夏休みの初日からことに巻き込まれ、海でボランティア活動をすることになった。そこに高校の時に調理科に所属していた祭囃子(あだ名)と出くわし、定番だと言わんばかりに店番をやらされて半日放置。そこで後にキドが運営する魅音座とそこの料理長兼、峰来亭の主人になる陣馬創英と交流することになった。
そして、店を任されたときに一緒に連れてかれたキドたちと地域の暴力団との間で何か事件があったらしく、そのとばっちりで店側も標的にされ、創英と共に輩を制圧するという茶番を繰り広げた。以降、ユガ、ソースケと呼ぶような仲になった。
海での事件が終わって町に戻り、キドと共に市場調査をしている時に見覚えのあるスーツを見つけ、店内に入ってみると昔その店の主人と親父に交流があったらしく、よくスーツを仕立てたり、喧嘩で敗れた服を強化、修繕、などを請け負っていたそう。そこからこの松ツ谷に店を出し、衣類を中心に十五年ほど商売していたとか。だが、その主人が事故で他界してしまい、残された妻と息子で店を回しているという。
せめてもの救いだったのは、店舗兼自宅のため出費の大概を占める家賃と人件費がないため何とかやっていけているそうだった。もっとも、働いているのは息子で、もの作りの腕は元主人と遜色ないがビジネスには疎く、服のレンタル業をやっていたがなかなか思った商売ができてないという、本末転倒な状態だったが。
キドはそのことを聞いて「まだ無計画だが、もし協力してくれと言われたら手を貸してくれるか」と交渉し、現主人は「交渉の場は設けよう」と健全な判断を下した。
これが後に、魅音座の大口取引相手になるピースになるのだが、それはまた後で。
夏が終わり、いつも通り学校(ソラさん)にこき使われる日々が始まった。この時季に訳ありで編入してくる生徒が何人かいるらしく、その生徒の素行調査と留年させないよう管理をしてくれと、相変わらずの無茶ぶり。これも学校全体の信頼獲得の一環だと割り切り調査。
その訳ありの何人かはのちにあのテロ事件を起こすメンバーの一部になるが、それはまたの機会。
調査中、その訳ありの一人であった人間が不良に絡まれて、追跡していた自分にもその火の粉が飛び火して、仕方なくボコすことに。助けられたその人間は、その行動に当てられてか、「僕も君みたいに強くなりたい」と少年みたいなことをいわれ、「とりあえず、話を訊いてからだ」とカオスになり始めている教室に連れて行き、いつの間にか教室の人間達とも馴染んでいた。
その訳ありが誰か名前が出てないようだなと指摘する者がいると思うが、これはそいつの更生することへの配慮であって、名前を忘れているわけではない。
事は一年経ち、その人が集まる教室を見て学校側から「建前でも良いから区分分けしてもらえないか。責任問題が発生したときに色々と困る」とお達しがあり、集団に一線を引くことになった。
大きく分けて三つ。キドを中心とする魅音座、コモリを中心とするフォーカス、訳ありのあの人間が作った香味人と分け、その三つ全体を遊ぶことを原動力(源)に会い集う場所ということで『源遊会』を設立。
これが後にあのテロ事件を起こす『源游会』の誕生であり、魅音座とフォーカスの前身となる組織である。この出来事が事件の時に敵だ味方だの好機や危機をもたらすのだが、そこに触れると長くなるからここでは割愛する。
自分はその組織に対して飽くまで、アドバイザーという立場を取り、最後の確認や余計なちょっかいを入れるなどして、組織の発展を見守った。
成長率は見張るものがあり、通常数年勉強するところを半年でやってしまい実務段階まで昇華していた。
この発展の速さにはさすがの自分もと戸惑いはした。けど、皆の凄さを見ているとそこまで行ってもおかしくないと麻痺してしまい、据え置き機でゲームをするよう気分に落ち着き、大して気負いもせずに自分が為すべきことをやり続けた。
そして、入学して二年後。源遊会の主戦力となる魅音座が動き出す。
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