鬼の目にも
昼下がりのころ自分は理事室の中にいた。目の前のデカい椅子でふんぞり返る女性を見て、実家に帰って来たかのようなうざったい気分になった。
「遊学くんにやって欲しい仕事があるんだけど」
机に滑って出てきた何枚もの写真付きの書類を見て、自分はより不愉快な気持ちになると同時に、「ここのセキュリティーはどうなってんだ!一端の生徒に履歴書をばら撒いて!」と立場をど返して叱りつけた。
長は口をへの字に曲げて頭に血管を浮かせ三秒くらいその堅い顔を続けたのだが、次の瞬間、
「だって!!あの子たち『アレ』食らっても動じないもん!むしろ、返り討ちに合って鼻で嗤われて、挙句の果てに三歳差の子に『イヤな役回りを引き受けたものだね』って憐れんだ顔をされて、言い返そうと思ったけど……事実だから……」
泣きたい想いを吐露しようとしていたが、途中で立場を思い出したのか、悔しい想いで食いしばり語意を下げ本心を噛み潰す。常人だったら歯切れの悪い人間だと評価するだろうが、自分には理想と現実のギャップに苛まれていることが、経験上と行為でよく分かる。
「はあ……わかった。その雑用引き受けますよ」
「え?本当!てっきりこの仕事やりたくないって食い下がられると思ってたのに」
「雑用!そんなに仕事にしたいなら金取るぞ」
「あ、そうね。これは雑用兼罰です。言い逃れはできませんよ。逃げようとしても」
「わかってる、それに……その『アレ』が通用しない生徒がどんなヤツか興味が湧いた」
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