正統後継者 4.018

六代目の日常

 六代目当主に成った後は大変だった。銀堂家が背負う負債は一年で先に三分の二は返し終え、あとの三分の一は「担保だ」「先行投資だ」と言い訳を付け次期当主への信頼から、抱える負債はほぼなくなった。


 そこは交渉するだけだから簡単だったが、売掛金や相手側が持つ借金の回収は信頼があって出来ることではない。むしろ、それが邪魔になる。


 恩赦で無利子にしても、払う能力、またその逆の払う能力のない奴らからすれば、火の車のところを突きまわすように、より返されるはずの金額を減らされてしまう。目先の利益しか考えない、次期当主に賭け勇気のない奴らほどそれが顕著に出くる。


 自分の生活資金もヤバいのにパチンコや競馬、骨董品に命を賭けるようなものだ。お財布を管理する奥様目線としては、メンチキレられるのは必須事項といえる。


 人というものは失うよりも奪われる方が辛い生き物だと知っている分、無理強いじはできなかった。


 もしそんなことをすれば、借金を返してもらうどころか恨みを買う羽目になる。その汚点は、巡りに巡って次の世代にまで影響が及んでくる。だから、気に入らなくとも慎重にならざる得ない。そうはいっても、長引けば文字通り身銭を切ることになって、せっかく溜めた資金も半年程度で底につく。


 このジレンマの中庸を取るのは、綱渡りというよりもその無知ムチを裁く縄跳びの方が表現としては合っていると思う。死にはしないが、引っ掛かれば痛い。


 それに自分が当主になってから大学時代に出逢った変態がやってきて、「俺のことを忘れないように定期的に来てやるよ」と偉そうなことをいって、子供たちの世話をやりだす始末だ。


 ――まったく、たまったもんじゃない。


 そんな日々を一年と半年続け、もらえる金額を半分に落としてでも回収し、一族の資産も搔き集め、ほぼゼロベース近くになった頃、あの男が帰って来た。

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