家督戦争終結後
「いや~一杯食わされましたねぇ。まさか全員の要望を織り込んだ手札を叩きつけて当主の座につくとは」宗谷は完敗だと言わんばかりに叔父以外がいない廊下で歩きながらそう感嘆の声をあげていた。
「そうですね。まるで何かに憑りつかれたようにことを巻き取って聞きましたしね。ずっとそこで話を聞いていたように」と健吾は何げなくそう応えると、湊はハッとしたように「そっか一般的にはその反応だよな……」と、足を止めて「二人もそう思いますよね」と突然、意味の分からない発言をして二人の足取りを止めた。
健吾は「何の話?」と疑問に思い二人が止まってから二歩ほどのところで歩みを止め振り返る。
「そうだな。健吾くんの反応が通常の反応だろうな」
「そうね。ことが分かってないと完璧なムーブにしか見えないよね。くわえて、いくら秘密の能力を使える人間であってもあれは感嘆せざる負えない」
と、二人も納得している様子。
「どういうことですか?」と話の見えない健吾は三人にそのことが何かと訊いた。
その問いに湊は次いでだと言わんばかりに「そうだ。せっかくもう六代目戦争をやらなくて良くなったと思うから、今までの出来事をおさらいするためにもここで語っておこうぜ」と腹を割って話す時の口調で話を促した。
「別に私はいいけど……宗谷は?」
「オレっちも良いぜ。一般的な価値観というものを思い出すためにも」と、外部には分からない身内ネタを明かすように三人は健吾に事の真相を教えたそうだ。
「実はな、俺たちは魂の年齢だけなら、叔父上よりも年上だ」
「はい⁉」
湊を代表とした衝撃の一言に健吾は驚愕の声を通り越して一度勝としたかのように数秒固まった。
「そりゃ驚くだろうな。ちなみに信じなくても良いがオレっちは新事業を成功させようと二十五年分くらい使ったのかなぁ。その結果はこの結末があるんだご察しの通りだ」と宗谷はガックシ肩を落としながら、秘密の力についての一部を語る。
「私も六代目としていろいろ頑張って十二年分を使ったけど、そのくらいの時にとある問題点に気付いて、六代目当主の戦争が行われる一週間前に戻ってきた。それで、五代目に『やはり帰って来たか』と鼻で笑われたわ」と花音は五代目の挑発顔を思い出して苛立っているのか眉間に皺をよせ、殺気を放つ。
「俺は、三十年分ほどいろいろと調整を入れてみたが、どうすることもできなかった。ジリ貧でも耐えようと必死にかじ取りをしてみたのはいいが、結局どのルートでも皆を路頭に迷わす結果になっちまったけどな。それで今日のことが行われ三日前に返ってきて、五代目の叔父には「お前さんでもダメだったか」とちょうど、宗谷さんと同じように肩を落としていたよ」と、共通して未来からやって来たというような趣旨の発言をしてきたからより健吾は混乱したという。
しばらくして健吾は冷静にことを見て「とりあえず、真偽は別としてその話を信じましょう。いちおう、その秘密の力か能力かわかりませんが、それで銀堂家の行く末がある未来を試行錯誤したという認識で良いんですか」と、意外にも察しの良い確認を取った。
「話の理解が速くて助かる。そう!オレっちたちは銀堂家の未来と土地、家名を護るためこう見えても必死に頑張ったんだ」と、宗谷は苦労を認めて欲しそうに見つめて来た。
「その気持ちは分かるが、使い過ぎて返っても来れなくなるよりかはマシだと思うが」と湊はシラーとデフォルメチックな目線で宗谷を見詰める。
「そうよ。女性当主として頑張った立場としてもここにいるのが奇跡だと思うくらい。さっき問題提起したけど、この『時を遡る力、能力』にはデメリットがあって、使い過ぎると魂というかこの世にいられる時間というか、思うに『生命体のコアの寿命が削れて、霧散する』のが敏感であれば気付いてしまうのよ。女だ男だとか言いたくないけど、銀堂家に女性当主がいないのは成れないんじゃなくて、能力の使い過ぎで正規の世界線ではいない存在として消されているんだろうね。体感上、感情が高ぶるとすぐその能力使ってしまうから」
「なるほど、無限に使える力じゃないんですね」と、健吾は簡潔にまとめた。
そこで健吾は「もしかして……」と生唾を呑んで三人に質問した。
「ってことは、遊学はその能力を使って、都合よく自分が当主に成れるよう交錯したということか!」と、当主に成った側の立場としては、一〇〇点の反応をした。
その発言に三人とも吹き出し、
「アハハ、遊学に限ってそんなことするわけないだろ」
「笑っちゃいけないが、当主に成ったことのある経験者の立場からしたら、使わないいことに病気を疑うくらい、遊学くんはその力を行使しないだろうな」
「確かにね。だって、健吾ちゃんも知ってる通り、あの子は当主に成るのを最もイヤがった人間。むしろ愚問というものよ」
と、三人はその能力を使用していないことを示し、先ほどに家督戦争について解説を始めた。
先に回収しておくが戦いの後に、銀堂家の土地神に「過去に戻る力があるが使うか?」と問われて、「イヤだ!」と即答をした。単純に過去に戻ったところで当主をやる時間が延びると感じて拒否したのもあるが、もっとも自分は戻る過去なんてひとつもないと思っていたから、そもそも使う気すらなかった。それに未来の失敗は全部兄貴に押し付けたらいいと考えていたから、就任中何度かイタズラで問われたが「うるさい黙れ」と土地神を一蹴して最後までやり切った。
話を戻して、あの家督戦争の時、当主経験勢は何度か能力を使っていて、それでも自分こと銀堂遊学には勝てないと悟り、質問フェイズで事を確認する方が速いと思ったそうだ。
自分が見ていた世界線はの冒頭は花音が見ていた一部らしく、能力を使い叔父の愛国心、家だから愛家家かな?その心を利用し、訊きたいことを全部語らせていたそうで、私が出しゃばりすぎるのもイヤだったからそうしたとか。
叔父が殴り込んできたところは宗谷のものらしく、銀堂家の神を信じられなくなった叔父にちゃんと存在することを感じ取ってもらうために小細工をしたそうだ。
そして、湊の世界線では冷静にことを淡々と処理する銀堂遊学の姿を見て、変に細工するのをやめて、自らが悪人の振りをしてことを問うことを決心し、あの下手くそな芝居をとり、事をうまく回しにかかったという。
健吾はその話を聞いて「そうなると、神の力ってすごいんですね。遊学を当主にするために憑依して、無理やり当主にするんですから」と無邪気にことを閉じようとしたが、
「それは違う!」と三人に一蹴した
最初に湊が「遊学は自ら当主に成る道を選んだんだ」と言い。
花音が「あの子は確実に自分の立場を分かって我々を責めた」と陰湿な嫌味を含んだ口調で話を繋ぎ。
宗谷が「そう、遊学君は自分の若さ利用し、皆が介入や台頭ができる隙と逃げ道を与え、有力候補だった叔父を制圧し」
続けて湊が「自らの天然的な性格と薄情さを活かして睨みを利かし、俺たちに裏はないことを態度で見せ付け」
「そして、女々しく私たちが考える下位互換を提案し、クズを突き詰めてやるしかない状況に追い込んだ」と、花音が個人パートの最後を締めくくり。
三人は同時に「アイツは自分が持つ素材を全部活かして、候補者全員をギロチンで処刑しやがった。あんなことは、いくら神の加護があったところで『地頭と』『殺る気がなければ』『絶対に』『『『やり切ることなんてできなねぇよ』』』」と、各々の口調を混ぜながら共通して、憎ったらしいことをしやがってと言わんばかりに、口角を上げて完敗の意を表す。
そのとき健吾も同じ気持ちになったという。でも違う点として、知らなかったとはいえ、己は処刑台に立たされていたのにニコニコしていたことに、一般人の目線として身震いし自らを恐怖するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます