次の枷となる一報
そんな最中、突然、自分の元に電話が掛かって来た。無意識に電話を取り、通知者画面も確認せずにそのまま応答してしまった。
「はい?もしもし」
「おう、遊学!元気にしているか」
「……で、何の用だ。クソ親父」
「なんだ、そんなに暇してたのか。それなら――」
最初は服をめくって腹を掻きながら応答していたが、この時点で話しているのは確かに親父である『銀堂茂也』ではあるが、喋り方が親父ではなく『銀堂家五代目当主、銀堂茂也』であることに気付き、搔いていた手を後頭部に持ってきて、相手が言い切る前に、
「用事ないなら切るぞ」と、電話の向こうの存在に牽制を取った。
その行動に向こうは慌ててか「待て待て、そう焦るな。本題を急ぐのは遊学の悪い癖だぞ」と、わざとらしく自分の名前を呼び、ブチ切りしようとする行動を止めさせた。
そこから後十分ほど話し込み語られたのは、『今日中に銀堂家の本山のもとに帰って来い』という何とも無茶苦茶な用件だった。もちろん、いつも通りブチギレてそれを断ってやろうとは考えた。
が、上記の状態のこともあって、暇潰しがてら付き合ってあげてもいいだろうと気が向いたから、素直にその用件を呑むことにした。
こういった唐突な連絡はいつも通りだとはいえ、今思い返してみるとこの時の親父はアイツが憑依をしているとはいえ、どこか違和感がある喋り方をしていたと思う。
当時の自分も無意識下では訝しんでいたようだが、運命という名のエゴが優先されたことによって、その不審点を見逃していたのであろう。
電話が切れた後はさっそく、近所のタクシー会社に予約を入れ、部屋にある荷物(ほとんど貴重品だけだが)を持参し、アパートの敷地内を出てその対象を待った。
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