10 エピローグ
父が亡くなって半年が過ぎた。
僕はソルダンを離れる気にならなくて、そのまま父との最期の日々を暮らした家に住んでいた。
毎朝集合墓地に行った。どれだけ雪が強くても、毎朝だ。膝をつき、父の魂が母と巡り会えていることを祈った。
僕は僕の生を完全に肯定できているわけではない。兄妹の間に生まれたのだ。昔ならともかく、今の倫理では許されない子供だし、そんな僕がこれから幸せな人生を送ってもいいものか、ためらうのだ。
ある日、来客が来た。アルバートという人だった。移民船ナリシスの副船長だったらしい。父との関係については詳しく聞かなかったが察しはついた。間に合わなかったか、と彼は言い、父の墓前で涙を流した。
人は罪を犯すものだ。僕もいつか、父の他に愛する人ができたなら、その人のために手を汚すことをいとわないのかもしれない。
父とは、母とは、何だったのだろうと僕は考える。一生かけても答えは見つからないのかもしれない。けれど、僕は問い続ける。
ソルダンの夜は冷える。僕はタバコに火をつけ、弔いの言葉を囁く。僕が生まれてきたことには何の意味もないかもしれない。この広い宇宙から見ればちっぽけなものだ。
けれど、僕は今、生きている。そして、見つけてほしいと泣いている。僕が僕の生を肯定できるその日まで、心が安らぐことはない。
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