第28話 距離が近い幼なじみ
俺、若菜、光希、真昼の4人で室内プールに遊びに行く当日。
俺と若菜はロビーの下で集合し、集合場所である駅まで一緒に行くことに。
駅に着くと先に来ていた真昼を見つけたが、腕を組んで少し機嫌が悪かった。
「真昼さん、おはようございます。何かありましたか?」
「おはよう。別に何もないわよ」
彼女はそう言うが、何もないような表情をしていない。
(そう言えば光希は……)
辺りをキョロキョロと見渡していると光希が向こうから走ってくるのが見えた。
全速で走ってきた光希は、何かを持っていて真昼に渡した。
「真昼様、こちらお好きなイチゴジュースです」
「いらない」
「何で!?」
「いらないから。そんなので機嫌取りしないで」
「まーちゃん、許してよ~」
(あぁ、なるほど……)
真昼の機嫌が悪そうに見えたのは光希が彼女に何か怒らせるようなことをしたからか。
一体、光希が何をやらかしたかわからないが、こんなギスギスした状態でプールに行くのは気まずい。
「園川くん、真昼さんに何をしたのですか?」
このまま真昼と光希が言い争うのを見てられないと思った若菜は間に入って、喧嘩の原因を尋ねた。
すると光希が真昼がなぜ機嫌が悪いのか、心当たりのあることを話してくれた。
昨日、真昼と光希は2人でケーキを食べに行ったらしい。その時、光希が真昼の食べているケーキを1口欲しいとお願いした。真昼は、嫌そうにはしていたがいいと言ってくれたので光希は1口もらうことに。
「で、ケーキの上に乗ってたイチゴ食べたら……こんな感じで怒らせちゃってさ……」
何でケーキ1口もらうって言ってイチゴ食べるんだよとか、真昼もイチゴ食べられたぐらいで怒りすぎじゃないかとかいろいろ言いたくなるが、何も言わないことにした。
「それは園川くんが悪いですね。真昼さん、彼は反省しているようですし許してあげたらどうですか? イチゴなら今度私がイチゴショートケーキを作って差し上げます」
若菜がそう言うと真昼は、小さくため息をついた。
「……昨日謝った時点で許してるわよ。イチゴ食べられたぐらいで怒ってないし」
真昼の言葉を聞いて、光希は、ほっとしていた。
「怒ってない……良かった~」
(仲直り? ん? 何の時間だったんだろうか)
真昼と光希のことは解決したようで電車に乗ることになった。
夏休みだからか電車は混んでいて、座ることはできなかった。
「ところで、先程、昨日は二人でケーキを食べに行ったと仰っておりましたが、もしかしてデートですか?」
「デートじゃないわよ。光希がしつこく誘ってくるから断れなかっただけ」
「そうでしたか。それは失礼しました」
真昼がデートではないと否定したので、デートのつもりで誘っていた光希は、暗い顔をしていた。俺は、優しく光希の背中をさすった。すると、光希が俺の肩に手を回してきた。
「奏太、ありが───」
「園川くん、離れてください」
真昼と話していた若菜だが、俺と光希の距離が近いので間に入ってきた。
「愛されてんね、奏太」
「そうかね……」
***
プールに着くと女子と男子で別れて、更衣室で水着に着替え、終わったら連絡を取って集合することになった。
先に着替え終えた俺と光希は、集合できそうな場所を探し、若菜と真昼にここに集合と連絡した。
「女子とプールに来るのって初めてだよな。去年は、男子何人かで来たっけ」
「あぁ、そうだな。水中バレーとかやったっけ」
去年の出来事を思い出し、懐かしんでいると光希が、先程からずっと持っている袋からビニールバレーボールを取り出した。
「持ってきた! 後でやろうぜ」
「遊ぶ気満々じゃん……てか、ずっと気になってたんだけど、その袋の中に何入ってるんだ?」
光希に袋の中を見せてもらうと、中には浮き輪などプールで遊ぶのに使えそうなものが入っていた。
「何からやろうか?」
「それは若菜と真昼が来てから決めようよ。ここスライダーとかもあるし」
光希と話していると後ろから誰かにトントンと肩を叩かれたので後ろを振り返った。
振り返るとそこには水着を着た若菜と真昼がいた。
「お待たせしました、奏太くん、園川くん」
「お、おう……」
若菜は、ラッシュガードを着ているが、いつもより肌が見えている気がしてドキッとして、彼女からすぐに目線を外した。
(見ていたらダメなやつだ……)
衣替えの時に彼女の足は見たが、今日はまたこの前とは違ってエロいというかなんというか。見ていたらダメなやつだとわかっていても見てしまう。
じっと見ていると若菜が視線に気づき、俺の顔を覗き込んだ。
「じっと見てどうしました?」
「っ! し、室内なのにラッシュガード着るんだなと思っただけだ」
何もないと言うのにも苦しい気がして見とれていたとは言おうとしたが、それを言ったらまたからかわれるので俺は疑問に思っていたことを言った。
「着ていないと周りの目が気になってしまいますからね。だから着ているんです」
確かにスタイルといい若菜が水着でいたら男の人に見られること間違いないだろう。
ナンパされる可能性もあるのでラッシュガードを着るのは正解だろうと思っていると若菜が手招きしてジェスチャーで耳を貸してくださいと俺に言ってきた。
彼女に近づき、少しかがむと若菜が耳元で囁いた。
「水着は後で二人っきりになった時にでも見せますね」
「っ!」
彼女は俺から離れた後、うっすらと微笑み、俺の反応を見て楽しんでいた。
(耳元で囁かれるのはダメだな……)
顔が赤くなり、体まで熱くなっていくのが自分でもわかる。
「ふふっ、顔が真っ赤ですよ」
俺を困らせたいのか若菜は俺の腕にぎゅっと抱きつき、ふにゅと柔らかいものを当ててきた。
「今日は私以外の女性をじっと見るのは禁止ですよ。私を見てくださいね」
「わ、わかったから……少し離れてくれないか?」
最近の若菜は前よりも俺へのスキンシップが多い気がする。これじゃあ、平常心ではいられないな。
「ふふふ、わかりました。困らせてしまったようですみませんね」
彼女はそう謝っているが、反省しているようには全く見えない。
「奏太、ビニールボール膨らませてくれ。この荷物じゃまだからロッカーに置いてくるな」
若菜と話していると光希にビニールボールを託され、3人でビニールボールに空気を入れに行くことにした。
「水中バレーボールですか。楽しそうですね」
「城市さん、中学の時、バレー部だっけ?」
「えぇ……ですが、水中ではやったことがありません。コツなどありました是非教えてください」
「! 今日、いつもより近くないか……?」
また若菜が俺の腕にぎゅっと抱きついてきたが、俺は振り払うのも面倒でそのままでいる。
「ふふっ、そう思うのはもしかしたら私と奏太くんの距離が近くなったからかもしれませんね?」
「……そうな────」
「あっ、わーちゃん!」
少し考えた後に口を開いて話そうとすると明るい声に俺の言葉はかき消された。
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